三菱・eKクロスEVに乗って、軽自動車の価値が激上がりする未来を見た【週刊クルマのミライ】

■普通充電での運用が基本という提案

2022年5月20日に発表、2か月足らずで約4600台の受注を集めたという話題の電気自動車、三菱eKクロスEVに公道で試乗することができました。

今回はeKクロスEVに乗ってわかった、電動化時代の軽自動車像をメインテーマに話を進めていきたいと思います。

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試乗車のボディカラーは、ミストブルーパール/カッパーメタリックの2トーン(8万2500円高)。ルーフレール(2万7500円)もオプションだ。

基本的なメカニズムの話をすると、eKクロスEVはエンジン車のeKクロスと同じプラットフォームによるBEV(バッテリーEV)で、フロントをアウトランダーPHEV由来のモーターで駆動するというプロファイルになっています。

ご存知のように三菱は日産と共同で軽自動車を開発しています。

そのため、バッテリーはリーフ由来のラミネートタイプで、総電力量は20kWhとなります。ただし、リーフのバッテリーが温度管理については成り行きとなっているのに対して、こちらはエアコン冷媒を利用しているのが違い。急速充電での温度上昇を防ぐ設計となっているわけです。

しかし、eKクロスEVは家庭での普通充電を基本とすることを想定しています。

冷却機能を持たせたとはいえ、急速充電はバッテリーに負担をかけるために劣化しやすくなります。また消費電力の点でも普通充電のほうが少なくて済みますし、ランニングコストにおいても家庭での普通充電をメインにしたほうが圧倒的にローコストとなります。

軽自動車という身近なモビリティとしては急速充電はエマージェンシー的に捉え、普通充電で運用することが、これからの常識なのです。

●アイミーブの経験を活かした2020年代の軽EV

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充電は、普通充電(上)と急速充電に対応。急速の上限は30kWと抑えめだ。

eKクロスEVのバッテリー総電力量が20kWhとなっているのは、軽EVとしての価格帯を考慮した結果ですが、軽自動車の使われ方をリサーチした結果ともいえます。

三菱の軽EVといえば、世界初の量産EVとして2009年から販売の始まったアイミーブを思い出しますが、アイミーブが16kWhのバッテリーを積んでいたのは軽自動車ユーザーの多くが1日50km以内の走行距離であり、その範囲においてストレスなく走れる能力を持たせるためでした。

軽自動車ユーザーの多くが日常的には1日50km程度しか走らないというのは今でも変わっていません。そしてアイミーブを販売してきたことで得られたフィードバックや、電費の測定方法が現在はWLTCモードになっている点を鑑みて、eKクロスEVのバッテリー総電力量は20kWhに設定されたということです。

また電気自動車のネックというのはバッテリーの劣化にありますが、前述したように急速充電時に傷む部分が大きいといいます。そこで、eKクロスEVでは急速充電の受け入れ電力を30kW上限とすることでバッテリーの負担を軽減、バッテリーを守ることを優先した設計となっているのです。

●緻密なモーター制御が光る、上質な走りが魅力

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アウトランダーPHEVとeKクロスEVは、どこか似た雰囲気のプラグイン兄弟ともいえる。

とまあ、しつこく軽自動車のEVならではの設計思想について書いてきましたが、乗ってみると軽自動車のレベルを超えた走りなのは、ご想像の通り。

最大トルクが軽ターボの倍近い195Nmというモーターの特性と、多段変速機構を持たないという駆動系の設計もあいまって、シームレスな加速感が味わえます。

10年以上前にアイミーブという軽EVを販売してきたという自負があるのか、いまさらEV的にモーターの低速トルクを強調するようなセッティングになっていないのも好印象ポイントです。逆に、モーターだからこそ可能な緻密な制御をすることで、トータルでのトラクション性能を高めています。

そのため、このクルマはフロント駆動なのですが、ステアリングで駆動の反力を感じることはほとんどなく、どのタイヤが駆動しているのか気にならない不思議なセッティングになっています。車体中央の床下にバッテリーという重量物を積んだことで前後の重量配分もバランスよくなっています。そのため、後輪駆動だったアイミーブと、どこか似た雰囲気も感じられました。

ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツの3モードから選べますが、スポーツを選ぶとアクセルを踏み始めた領域でのレスポンスがシャープになるよう演出されています。発進加速は非常に元気で、このあたりはアウトランダーPHEVとも似た雰囲気を持っています。

アウトランダーPHEVとeKクロスEVを並べてみると、フロントマスクの雰囲気が似ていますが、走り味においても三菱の電動車両としての共通性のようなものが感じられるのはブランディングの統一を感じさせました。

ロングドライブはアウトランダーPHEV、近所の足にはeKクロスEVといった風に電動車両をファーストカーとセカンドカーとして併用したときにも運転感覚が似ているというのはうれしいポイントとなるかもしれません。

●エンジン車と使い勝手は同等なのがうれしい

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フロントはベンチシート。ゆったりとしているので長時間座っていても快適。

驚くのは、エンジン車のeKクロスと電気自動車のeKクロスEVのパッケージングがほとんど違わないことです。

そもそもEVのラインナップを考慮したプラットフォームということで、床下にバッテリーを積んでいるにもかかわらずフロアが盛り上がっているようなことはありません。

後席のスライド機能はエンジン車と同じようにeKクロスEVにも採用されていますし、当然ながらラゲッジスペースについても同等です。

インパネは専用デザインになっているため、若干の違いはありますが、使いやすいドリンクホルダーや助手席側の大きな引き出しといった軽自動車らしい収納スペースは健在です。

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後席はスライドタイプ。パッケージとしてはエンジン車と変わらない。

くわえて、EVはエンジン由来のノイズや振動がありませんから走行中の快適性は数段レベルアップしています。

前述した前後重量配分の最適化もあってか、リヤサスペンションに余裕が感じられます。

FFの軽自動車(エンジン車)で一人乗車をしているとリヤが跳ねてしまい、それが乗り心地を悪化させることもありますが、eKクロスEVはリヤタイヤがしっかりと働いている感触で、段差の乗り越えなどもマイルドになっています。

車線変更のようなシーンでは、低重心ゆえのキビキビとした走りを見せますし、高速道路のインターチェンジにありがちな大きなカーブでは四輪接地感が優れているので、安定しています。トレッドが狭い軽自動車の欠点は、電動化によって解消することができているのです。

●未来的なコクピットに仕上がる

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メインメーターは7インチ液晶ディスプレイタイプだ。

エンジン車のeKクロスは指針式のオーソドックスなメーターを使っていますが、eKクロスEVは7インチ液晶ディスプレイによるフルデジタルメーターとなっているのも大きな違いといえるところでしょう。今回試乗した上級グレードには9インチのスマホ連携ナビゲーションが標準装備、最先端のデジタルコクピットを演出しています。

このあたり、最新の電気自動車らしい満足度が得られそうですが、ひとつ気になったのはメーカーオプションで用意されるデジタルルームミラーの解像度です。単体でみるとけっして見づらいわけではないのですが、メーターやナビの画面がクリアなためデジタルルームミラーの解像度が見劣りするように感じられました。

こうした部分でも未来感をトータルに演出していれば、さらに魅力が高まることでしょう。アップデートを望みたい、数少ない気になるところでした。

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上級グレードには9インチのスマホ連携ナビが標準装備。試乗車はプレミアムインテリアパッケージのオプション装着車。

クルマの電動化というのは避けられないトレンドであり、近距離ユースがメインの軽自動車は車両価格を除けば、もっとも電気自動車に向いているカテゴリーといえます。

今回の試乗では、軽自動車をEVにすると、加速が上質になり、乗り心地が向上、静粛性は格段にレベルアップすることが、あらためて確認できました。

現在、日本の新車販売は4割が軽自動車という状況ですが、ここまで快適性が上がるのであれば、電動化時代には軽自動車のシェアがもっと拡大することでしょう。

本格的に、軽自動車が日本の国民車となる未来は確実にやって来そうです。

●三菱eKクロスEV Pグレード主要スペック

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上級グレード「P」の車両本体価格は293万2600円。

三菱eKクロスEVはエントリーグレード「G」と上級グレード「P」の2グレード構成。メーカー希望小売価格はGが239万8000円、Pが293万2600円の価格差ですが、装備差も少なくありません。

Pグレードにはルーフスポイラー、ステアリングヒーター、9インチのスマホ連携ナビゲーション、前席シートヒーターなどが標準装備となります。

半自動的に駐車できる機能「マイパイロットパーキング」をオプションで選べるのもPグレードだけで、予算が許すならばPグレードを選んだほうが満足度の高いカーライフが送れることでしょう。

車両型式:ZAA-B5AW
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1670mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:1080kg
乗車定員:4名
モーター型式:MM48
モーター形式:交流同期電動機
定格出力:30kW
最高出力:47kW
最大トルク:195Nm
バッテリー総電力量:20kWh
一充電航続距離:180km (WLTCモード)
タイヤサイズ:165/50R15
メーカー希望小売価格(税込):293万2600円

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也

山本晋也 近影
日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。