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■3リッターエンジン搭載した最古のレーシングベントレー
イギリスの高級車メーカー「ベントレー」は、1922年に伝統のマン島TTレースでチーム優勝して100周年を迎えたことを記念し、当時のレーシングカーで、現存する世界最古のベントレー「EXP2」などを現地で走らせるイベントを実施。
2022年6月25日(現地)に、クラシック・ベントレーと当時のライバルマシンの計78台が集結し、世界的に有名な公道サーキットで疾走させました。
●悪天候の中でチーム優勝
今回の舞台となったマン島とは、1907年から続くマン島TT(ツーリスト・トロフィー)と呼ばれるレースを行っているイギリス王室属国の島です。
公道を使った1周60kmを超えるコースはかなりエキサイティングで、現在は、2輪車のみのレースとなっていますが、開催当初は4輪車のレースも行われていました。
ベントレーは、1922年6月22日に、そのマン島TTレースに3リッターエンジンを搭載する3台のEXP2で参戦。
かなりの悪天候の中、クリーム色と赤のベントレー製レーシングカーは、302マイル(約486.02km)を走りきり、1台が2位、残り2台が3位を獲得。見事にチームの総合優勝を飾りました。
この優勝で勢いをつけたベントレーのレーシングチームとEXP2は、その後も、フランスのル・マン24時間レースなどで活躍。3リッターベントレーの成功はしばらく続き、1925年にはジョン・ダフ選手が、3リッタークラスの24時間レースで21の世界記録を樹立する偉業も達成しています。
●開発とレースで活躍したマシン
ちなみに、EXP2は、1919年に会社を設立した創立者のW.O.ベントレーが、最初の生産モデルである3リッターモデルを開発するために製作したマシン。EXPはエクスペリメンタルズ(experimentals)の略で、「実験的な」といった意味を持ちます。
初号機のEXP1はベントレーのバッジを付けた最初のクルマで、その次に登場したのがEXP2です。2シーターのプレーンなボディで製造され、当時としては極めて先進的なエンジンとシャーシを採用。後には、ダークレッドのボディとアルミニウム製ボンネットに改造されたそうです。
そして、約2年間、開発テストとレースという二足のわらじを履いて活躍し、開発テストベッドとしての役割を担ったといいます。
なお、EXP1は歴史から姿を消し現存しないため、今回マン島を走ったEXP2が世界最古のベントレーだといわれてます。
また、イベントに登場した貴重なベントレーのコレクションたちは、推定4000万ポンド(65億円以上)を超える価値を持つそうで、これらのクルマがすべて揃うことは二度とないといわれています。
(文:平塚 直樹)