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■「ゼッケン634」でおなみの武蔵精密工業が4輪EVレースに参戦中
武蔵精密工業といえば、2輪ロードレースのトップチーム「HARC-PRO.」のメインスポンサーとしておなじみの企業です。
「MUSASHi」のロゴと臙脂(エンジ)色の車体で、2009年から全日本ロードレース、鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦、さらに2012年からはアジアロードレース選手権にも参戦する等、業界でおなじみの会社です。
愛知県に本拠を置く、自動車用のトランスミッションなどのギヤを製造するメーカーですが、残念ながら2021年の活動をもってサポートを終了。MUSASHi RT HARC-PRO.としての活動は終了しています。
ところが、そのゼッケン634のおなじみのMUSASHiカラーのマシンが、全く別の形でサーキットに戻ってきていました。
それが「MUSASHi D-REVシビックEVR」です。
電気自動車のみで行われている全日本電気自動車レース協会(JEVRA)が主催するレースで、昨年10月のシリーズ第6戦「筑波EV60kmレース」から参戦しており、第7戦・袖ケ浦戦、2022年開幕の筑波戦、そして5月に開催となった「富士EV55kmレース」と、すでにこのレースシリーズへ参戦4戦目という戦績を持っています。
●シビック タイプRをベースにEV化
この車両が参戦するのは、EV-C(コンバート)クラスという、市販内燃機関車をベースに、エンジンをモーターとバッテリーに変換させ「EV」に改造したコンバート車両がシノギを削るクラスとなります。
このコンバートのシビック・タイプRを駆る山下将史選手はこのプロジェクトのリーダーで、武蔵精密工業社員ドライバーです。もちろん、チーム員も武蔵精密工業の研究開発部を主体とした社員を中心に構成されています。
車両はホンダ・シビック タイプR(EK9)をベースに、日産リーフのモーター(EM57型)と40kWh容量のバッテリーを搭載しています。
コントロールユニットはSCOTT DRIVE社(ニュージーランド)を搭載。フロントにモーター、ドライバーズシートの後ろにバッテリーを横積みし、充電口はリアラゲッジスペースエンドに。ミッションはタイプRのものをそのまま流用しています。
目標とするのは、2012年から参戦をしているウエルマーの86EV(#39 ウエルマー☆ビルズ☆FT86EV/現在は参戦休止中)です。
テスラがシリーズに参戦する前は、優勝をさらっていた車両です。このシビック タイプRは、ここまでの3戦では熱ダレなどもありましたが、そういった経験を重ね車両は少しずつ改良しているようです。
●予選6番手からテスラを追い、7位でゴール
このシリーズ第2戦の予選はウェット。前夜からの激しい雨がようやく止んだところ…といったタイミングの午前9時50分から20分間で行われました。この予選セッションで634号車は2分28秒610のタイムで6番手のタイムを獲得しました。
タイム的には2分26秒595を出した予選5番手のレーサー鹿島選手(東洋電産・LEAF e+/EV-2クラス)と、新型ミライの飯田 章選手(#88 トーヨーシステムCNRミライアキラR/EV-F クラス/2分32秒410)との争いに割って入る形となりました。決勝でもこの2台とどうバトルしていくか、がポイントとなる展開が予想されます。
その後、一気に天候は回復するかのように思われていましたが、今度は霧が発生するという状況で、なかなか路面状況も改善されないまま。午後3時、12周による決勝レースはスタートしました。
スタートでは上位グリッドを獲得しているテスラ・モデル3の4台が先行。シビックEVRはスタートで一瞬出遅れ、後方からスタートのノートニスモに抜かれたものの、直後に挽回。その後はリーフとミライとの5番手争いを展開。中盤ではその2台をリードしていたものの、最終的には7位でレースを終えました。
レース中のベストラップではテスラ モデル3勢4台に続く5番手のタイム(2分16秒473)を出しました。武蔵精密工業では、このEVレースを通してEV用のギア関係の開発のための知見獲得、さらにはEV用のキャパシタ開発も視野に入っているということです。
「今回はモーターリセッティングで速さも確認できました。ただ、目標としているのは、同じコンバートEVのウエルマーのトヨタ86EVです。どうしたらその86EVに勝てるのか、をこれからも挑戦してきたいと思います」と山下選手はコメントしてくれました。
(青山 義明)