トヨタbZ4XとSUBARUソルテラの違いは搭載オーディオの異なるブランドの音からもわかる

■トヨタとスバルの電気自動車は細部まで違いにこだわっている

bZ4X_solterra
トヨタとスバルが共同開発した電気自動車。兄弟車というイメージに反して純正オーディオのブランドまで異なるほど差別化している。

トヨタとスバルが共同開発した電気自動車「bZ4X(トヨタ)」と「ソルテラ(スバル)」を公道で試乗する機会に恵まれました。

FWDと4WD(AWD)という2種類の駆動系を持つbZ4X/ソルテラは、いずれも71.4kWhという大きな電力量のバッテリーを積み、WLTCモードで500kmを超える一充電航続距離を誇る電気自動車です。

基本的には同じボディですが、外観ではフロントグリル、前後灯火類、ガーニッシュなどを各車専用の意匠として差別化。メカニズム面でもサスペンションセッティング、回生ブレーキを調整するパドルスイッチの有無、ドライブモードなどで異なる味つけとしています。

その走りは、想像以上にトヨタらしい、スバルらしいものでした。bZ4Xが標準仕様だとすると、ソルテラはRSやSTI SPORTといいたくなるほどスポーティに仕上げられていたといえば、明確に違うことが伝わるでしょうか。

そして、意外なところでもbZ4X/ソルテラは差別化されていました。それが純正オーディオです。bZ4XはJBLサウンドシステム、ソルテラはハーマンカードンのサウンドシステムが奢られています。

●bZ4Xに標準装備のJBLサウンドはコンサートのような生々しさ

bZ4X_jbl
bZ4XはJBLの9スピーカー、プレミアムサウンドシステムを標準装備。

JBLのサウンドシステムは9スピーカー+専用アンプの構成で、次のようなスピーカーシステムになっています。

9cmワイドディスパージョンスピーカー(ダッシュボード)
2.5cmホーンツイーター(Aピラー根本)
20cm×23cmミッドウーハー(フロントドア)
15cmフルレンジスピーカー(リヤドア)
22.4cmエンクロージャー・サブウーハー(ラゲッジ壁面)

JBLといえばホームオーディオやコンサート会場のPA機器などで知られるアメリカンサウンドが印象的なオーディオブランドで、bZ4XのシステムでもAピラーに専用設計のホーンツイーターが備わっていることが特徴といえます。ホーンツイーターというと指向性の強い高音域を適度に拡散してくれるサウンドを期待します。たしかにミッドウーハーとバランスがとれた中高音域が奏でられていました。

さらにJBLという名前に期待する低音も充実しています。しかも車種専用にセッティングしたことで、ドラムの音がこもってしまうようなこともなく、はじけるような低音がドライバーの耳に届きます。

パワートレイン由来のノイズや振動が圧倒的に少ない電気自動車だからこそ、そのサウンドは際立ってきます。まさにライブ会場のような生々しいライブ感のあるサウンドに仕上がっていたのです。

●ソルテラのハーマンカードンはスタジオライブのような息遣い感

solterra_harman
ソルテラの最上級グレード(AWDのみ)にはハーマンカードンのサウンドシステムが標準装備される。

一方で、ソルテラに搭載されるハーマンカードンのシステムは7スピーカー+アンプで、スピーカーの構成は次の通りです。

80mm+16mmユニティーミッドレンジスピーカー(ダッシュボード)
203mm×229mmミッドウーファー(フロントドア)
170mm+25mmワイドディスパーション・コアキシャルスピーカー(リヤドア)
224mmサブウーファー+エンクロージャー(ラゲッジ壁面)
※メーカー表記に準じているため、こちらはウーファーとなります。

ダッシュボードとリヤドアのスピーカー表記を見ればわかるように、いずれもミッドレンジとツイーターを同軸に配したコアキシャルタイプとなっています。つまり、同じ位置から中高音を発生させるレイアウトになっています。

そのサウンドはピュアな印象で、全体にクリアでフラットな印象です。だからといって人工的な感じはなく、ボーカルの息遣いやギタリストが弦を触る指使いまで耳に届くほどのピュアサウンドです。JBLがコンサート会場だとすれば、まるでスタジオライブを聞いているかのようなリアリティが感じられました。

●じつはJBLとハーマンカードンは同じ会社が開発するブランド

solterra_audio
12.3インチのディスプレイナビ&オーディオは両モデルとも全車に標準装備。

いずれも、車両コンセプトに合わせて音作りが進められたということですが、それにしても兄弟車において異なるブランドのサウンドシステムが搭載されるというのは普通に考えると不思議なものです。

その秘密は、ハーマンインターナショナル社にありました。同社は、車載インフォテイメントシステムからホームオーディオ、業務用システムまでカバーするオーディオ業界の巨人といえるメーカーです。そして、傘下にはJBLやハーマンカードン、インフィニティ、マークレビンソン、dbx、バング&オルフセンなど様々な一流ブランドを擁しています。

そうしたハーマンインターナショナルがサプライヤーを担ったからこそ、bZ4Xとソルテラでそれぞれの個性を引き出す最適なサウンドシステムが構築できたということなのでした。

ただし、冒頭で書いたようにbZ4Xは電気自動車らしいスムースでマイルドな乗り味で、ソルテラは操作系に重さを感じるようなスポーティな味つけとなっていました。個人的には、bZ4Xのスッキリとした走りとハーマンカードンの組み合わせ、ソルテラのホットな走りとアグレッシブなJBLサウンドの組み合わせも味わってみたいと感じました。もし、オプションでbZ4Xとソルテラのサウンドシステムを入れ替えることができたら面白いかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
続きを見る
閉じる