日本向けボルボ初のBEV「C40 リチャージ」は、ガソリン車のボルボと通じる走りもアリ

■最初にデビューしたツインモーター(AWD)仕様に加えて、シングルモーター(FWD)も追加

日本向けでボルボ初となるバッテリーEVのC40 Recharge(リチャージ)は、導入を記念して100台限定のサブスクリプションを展開したところ、大反響で約6倍もの申し込みがあったそうです。C40 Rechargeのプラットフォームは、XC40から導入された「CMA」がベースで、洗練された新しい顔つきや低いルーフに合わせてデザインされたリヤエンドが採用されています。

ボルボC40リチャージ
クーペ風味のクロスオーバーモデル、バッテリーEVとして登場したC40リチャージ

専用デザインのルーフスポイラーもスポーティな印象です。ルーフスポイラー両端が後方に突き出たような形状で、奇しくもトヨタbZ4X、SUBARUソルテラというバッテリーEVも似たような印象のルーフスポイラーを備えていて、トレンドになりつつあるのかもしれません。

ボルボC40リチャージ
ボルボC40リチャージのリヤビュー

試乗したのは、ツインモーターの「C40 Recharge Twin(C40 リチャージ ツイン)」。なお、2022年3月には、エントリーモデルでシングルモーターのFWD仕様「C40 Recharge Plus Single Motor」も設定されています。

ボルボC40リヤビュー
ボルボC40リヤビューのインパネ

シングルモーター仕様の追加に伴い、ツインモーター仕様は、「C40 Recharge Ultimate Twin Motor」に車名変更されています。この2モーター仕様は、前輪と後輪に1つずつ搭載される4WD。最高出力300kW(408PS)、最大トルク660Nmを発揮します。駆動用リチウムイオンバッテリーの総電力量は78kWh。WLTCモードの航続距離は、一充電あたり約485km。

ボルボC40リチャージ
充電口は助手席側の前と後ろに配置する。前が普通充電用、後ろが急速充電用

充電は普通充電(AC200V/11kW)の場合で、約8時間、急速充電はCHAdeMOに対応し、150kWの急速充電器を使うと、約40分で0%から80%まで充電が完了します。

先述したように、シングルモーター仕様(FWD)の追加に加えて、ツインモーター仕様の車名変更など少々ややこしい状態になっていますが、コストパフォーマンスに優れたFWD、ハイパフォーマンスのAWDから選択できるようになっています。試乗したのは、先述したように、改名される前の初期導入モデルの「C40 リチャージ ツイン」です。

ボルボC40リチャージ
リサイクル素材が使用されたマイクロファイバーシートを使う

乗り込むと驚くのが、スタータスイッチがないことで、キーを持って(携行)して運転席に収まり、ブレーキペダルを踏みながらDレンジに入れ、アクセルを踏むと発進します。クルマを停める時は、「P」に入れればOKで、エンジンスターターのオン、オフという操作が省かれています。最初はなんだか不安でも慣れれば便利かもしれません。

C40 リチャージには、いわゆる「ワンペダル」モードを備えていて、オン/オフで走りのテイストが大きく変わります。オンにすると、EVらしく強い回生ブレーキが作動し、まさにアクセルペダルひとつで、加速、減速感をコントロールできます。なお、回生レベルセレクターなどは用意されず、「ワンペダル」のオン/オフのみとなっています。さらに、3km/h以下ではメカブレーキに切り替わるそうですが、回生ブレーキとメカニカルなブレーキの切り替わり時の違和感などは感じられませんでした。

ボルボC40リチャージ
C40リチャージの走行シーン

ワンペダルをオフにすると、今度はスーと前に出る感覚のコースティング(滑走)モードに切り替わります。ワンペダルをオンにした状態で、アクセルペダルから足を離すと想像以上の強い減速感が出ますので、内燃機関のフィーリングに近いのは、ワンペダルのオフモード時でしょう。オフにすると、クリープするため(オンにするとクリープしない)、駐車時などはより扱いやすく感じられました。ワンペダルをオフにした状態では、コースティングもあり、滑らかな走りが可能です。

ワンペダルのオン、オフを問わず、408PS/660Nmというハイパワー、分厚いトルクを発揮するため、非常に鋭い加速も容易に引き出せます。イザという時は、背中を蹴飛ばされたような強烈な加速が瞬時に味わえるのもEVらしい特徴といえるでしょう。もちろん、普通に走らせる分にはジェントルな走りも容易にできます。

ボルボC40リチャージ
セレクターレバーまわり

また、高い静粛性も魅力で、街中を走っている分には、多少ロードノイズは伝わってきますが、前席も後席も十分に静かといえる仕上がりでした。乗り心地は、電動化車両らしく、路面によっては少し突き上げや揺すぶられるシーンもあったものの、2160kgというかなり重めの重量によりどっしり感があり、安定した姿勢に終始します。

こうした重さがあるのにどことなくボルボらしい軽快感も抱かせるのは、バッテリーEV化されても「ボルボはボルボ」と思わせてくれました。

ボルボC40リチャージ
多少上げ底感はあるが、シートサイズ、足まわりは広く、頭上も外から想像するよりも余裕がある

そのほか、ボルボが社是とする安全性は、最新の先進安全装備、運転支援装備が用意されているのはもちろん、Googleの各種機能が搭載されたインフォテイメントシステム、緊急通報などに対応するテレマティクスサービスなども採用されています。

日本でも取り回ししやすいサイズ(全幅はかなりワイド)のバッテリーEVは、まだまだ数が少なく、自宅で充電して買い物などの日常使い、オフタイムには急速充電も活用すればロングドライブにも十分に対応できるボルボC40 Recharge。キャビンやラゲッジスペースも実用的で、ファーストカーとして活躍してくれるはずです。

●ボディサイズ:全長4440×全幅1875×全高1595mm

●価格:
・C40 Recharge Twin:719万円
・C40 Recharge Ultimate Twin Motor:699万円
・C40 Recharge Plus Single Motor:599万円

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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