日立アステモの試作EVはミステリアスなルックスでインホイールモーターをアピール【人とくるまのテクノロジー展2022】

■どちらが前なの? ユニークなデザインの試作EV

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インテリアにはスパルコのバケットシートが確認できるなど走りに振った演出もされていたが、スタイリングは自動運転のコミューターを思わせる。

公益社団法人 自動車技術会が主催する自動車テクノロジーの一大ショーが「人とくるまのテクノロジー展」です。2022年は3年ぶりにリアル開催となり、会場であるパシフィコ横浜はおおいに盛り上がっていました。

とはいえ、基本的には技術展ですから実車の展示はごく一部で、ましてコンセプトカーなどはほとんど見当たりません。あくまで主役は部品であったり、技術コンセプトというのが、モーターショーとの違いです。

そんな中、実際に走行可能というコンセプトカーを展示、目立っていたのが日立Astemo(以下、アステモ)です。ご存知のように、同社は日立系のサプライヤーである日立オートモティブシステムズとホンダ系サプライヤーの3社(ケーヒン、ショーワ、日信工業)が経営統合して、2021年1月に誕生しました。

電装系、サスペンション、ブレーキ、制御系などなどあらゆる分野に精通しているメガサプライヤーです。

アステモのブースに置かれていたコンセプトカーは、一見するとどちらが前なのかわからないスタイリングがとてもユニークです。インテリアを覗くと、スパルコのバケットシートが設置されているなど走りのパフォーマンスを感じさせる部分もありますが、前後を入れ替え可能なデザイン的なものには完全自動運転のコミューターを思わせる部分もあります。

はたして、人とくるまのテクノロジー展で目立っていたコンセプトカーには、どのような狙いが込められているのでしょうか。

●モーターの最高出力は60kW、最大トルク960Nm

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試作のインホイールを収めるホイールは19インチ、タイヤサイズは235/35R19だった。

結論をいえば、アステモのコンセプトカーは、開発中のインホイールモーターのアピールと走行実験をするために生み出されています。

直系480mm、19インチホイールに収まるサイズのインホイールモーターは、ダイレクトドライブ型で、インバーターとブレーキシステムを一体化しているのが特徴。最高出力は60kW・最大トルクは960Nmと非常にトルクフルになっています。

減速機構のないダイレクトドライブですから大トルクであることは重要なのですが、それにしてもインホイールモーターはタイヤの数だけ搭載することが可能ですから、四輪駆動であればシステム出力240kW、システムトルク3840Nmという、とてつもないスペックが期待できます。

こうしたトルク優先のモータースペックを活かせる電動モビリティとして思い浮かぶのはバスやトラックでしょう。そう思うと、アステモのコンセプトカーはコミューターバスを意識しているようにも思えてきます。

●インバーターと合わせた油冷システムで冷却する

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インホイールモーターは、インバーターやブレーキシステムも一体となったものとして開発されている。

一般論でいえば、インホイールモーターというのはバネ下が重くなってしまうのでスポーツドライビングには向かないレイアウトといえます。しかし、モーターをホイール内に追いやることでキャビンやラゲッジを広くできるというのは通常レイアウトに対するアドバンテージです。

やはりバス・トラックの電動パワートレインとしての可能性を秘めているといえるでしょう。

さらに、アステモのインホイールモーターの特徴としてはモーターとインバーターをダイレクト油冷として温度管理をしている点が挙げられます。インバーターの小型化や冷却に有利なレイアウトを実現したことが、小型で高効率なインホイールモーターを生み出したともいえます。

電動化時代において、インバーター・モーター・トランスミッションを一体化したeアクスルというのはサプライヤーの一大ムーブメントとなっています。

しかし、このコンセプトカーがイメージさせるように自動運転時代まで見据えると、インバーターとブレーキを一体化したインホイールモーターや、それを前提とした電動プラットフォームは、eアクスルを超える可能性を感じさせるのです。

自動車コラムニスト・山本晋也

 

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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