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■2022年3月期の業績は厳しいながら利益は確保
電動化や自動運転など新技術への注目が集まりつつも、コロナ禍や半導体不足によって、直近の自動車業界は全体的にネガティブな状況になっています。
2022年5月12日に発表された、スバルの「2022年3月期 通期業績」を見ても、全世界生産台数は前年同期比10.3%減の72万7千台、海外生産台数は同4.8%減の27万2千台、国内生産台数は同13.3%減の45万5千台と厳しい数字が並んでいます。
そのため、営業利益は前年同期比120億円減少となる905億円、税引前利益は同70億円減少となる1070億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同65億円減少となる700億円となっていますが、台数が減少したわりには利益を確保しているのは、企業体質が強化されていることを感じさせます。
さらに2023年3月期については、グローバル販売において94万台(前年同期比28.1%増)を計画していることが発表されました。
同期における売上収益は3兆5,000億円(同27.5%増)、営業利益は2000億円(同121.1%増)、税引前利益は2000億円(同87.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1400億円(同100.0%増)となることを見通しとしています。
この数字に基準となる為替レートは¥120/US$、¥130/EUROですが、想定以上に円安が進んでいる状況と北米での販売が多いことを考えると、さらに高い利益が期待できる発表となっています。
そうしたポジティブな発表もあって、5月13日の東京市場ではSUBARUの株価は5%近く上昇、市場の期待が高まっていることがわかります。
●EV専用工場の建設を発表。2027年稼働予定
しかし株価上昇の理由は、ポジティブな見通しが高く評価されているだけではないでしょう。
各種メディアにより、スバルがEV専用工場を建設すると報じられたことも株価上昇につながったといえそうです。
国産メーカーでは、日産が電気自動車「アリア」の生産を前提としたインテリジェントファクトリーを栃木工場に導入していますし、スバルとトヨタが共同開発した電気自動車「スバル・ソルテラ/トヨタbZ4X」はトヨタの元町工場で生産されています。
ほかにも三菱、マツダやホンダは自社工場でEVを生産していますが、EV専用工場となると国産メーカーとしては初となるもので、電動化シフトを明確にする発表といえます。
前述したようにソルテラはトヨタが生産していますし、ストロングハイブリッドの開発でもトヨタの技術を利用するなど、ともすれば電動化において遅れをとっているような印象もあるスバルですが、ついに電動化に本気になったということが株式市場において高く評価されていると感じられます。
●トヨタとの関係は強化される? STI独自の動きも注目
報道によれば、スバルのEV専用工場が稼働するのは2027年ということで、逆にいうと当面は自社生産のEVは出てこないともいえます。
もっとも、2022年にソルテラが誕生したことを考えると、タイミング的にはフルモデルチェンジ時に自社生産モデルに変わるというスケジュール感なのかもしれません。
ご存知のように、トヨタと共同開発したGR86/BRZについてはスバルが生産を担当しています。スバルの新設するEV専用工場が、トヨタ・ブランドの兄弟車を生産するという計画もあるのかもしれません。そうであれば、稼働率や調達の部分でプラスに評価できるともいえます。
さらに、2022年の東京オートサロンではスバルのワークスブランド「STI」が独自開発した4モーターEVスポーツクーペを展示していました。こちらのモデルについてはSTI単独でのプロジェクトということですが、こうしたハイパフォーマンスモデルの開発で得た知見はSTIだけでなくスバル全体で共有できる部分もあるでしょう。
専用工場を新設するなどEVシフトを明確にしたことで、トレンドのSUV的なモデルだけでなく、ピュアスポーツEVも期待できるかもしれません。