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■ミシュランのタイヤDXへの取り組みを一挙に展示
●RFIDを2024年にはミシュランの全生産タイヤへ搭載
スマホでポチッと買い物した商品が明日には届くのが当たり前になった現在、その裏では物流への期待と負担が大きく高まっています。
そのために、トラック輸送が大活躍しているのは明らかでありますが、自宅まで届けてくれるのが自転車やバイク、小型トラックにしろ、それらすべての商品は最終的にはタイヤの上に載っかってくると考えると、いかにタイヤが物流を支えているか、想像するとすごいスケール。ある意味感慨深いですね。
ミシュランは、ジャパントラックショー2022において、それらの負担を軽減し、省力化できる技術や仕組みを展示しています。
まずは、「RFID」内蔵タイヤ。「RFID」とは電波を用いて個別のタグが付けられた商品などを管理する仕組みです。ミシュランでは2024年には生産するすべてのタイヤ、トラックや自動車用はもちろん、2輪も建機用なども含めて全部にこの「RFID」を搭載すると発表しています。
ミシュランで搭載する「RFID」は非常に小さなチップにアンテナが巻き付けられた状態のもので、サイドウォール部分に埋め込まれるそうです。黒いモジュール部分の大きさは1×1×6mm、アンテナを含めた状態で爪楊枝より少しスリムかな、というサイズ感です。
これを埋め込まれるのがサイドウォールのどのへんかと言うと、タイヤの種類、トラック用だとか、超扁平スポーツカー用だとか、用途や構造などによってその位置はそれぞれなのだそうです。使う側が明確な位置を知らなくとも、電波を利用するので問題にはならないわけです。
「RFID」自身は電源を必要とせず、外部からの電波を受けて通信を行います。そのためにコイル状のアンテナが巻き付けられています。ところで、一見すると中も外も真っ黒でタイヤはゴムだけでできているように見えますが、実はその内部にはスチールのワイヤーなどもその構造材として使われるのが普通です。
これらのゴムではない構造物との干渉などを防ぐためRFIDモジュールは村田製作所との技術によって実現できたと言います。
この「RFID」を内蔵するタイヤがあれば瞬時に1本1本の個別にタイヤの管理に応用できます。
そして「MICHELIN Quick Scan(ミシュランクイックスキャン)」が活躍できるわけです。
●瞬時に溝を計る日本初公開のミシュランクイックスキャン
日本初公開となったミシュランクイックスキャンは、路面に埋め込まれた磁気スキャナーによって、タイヤの残り溝を瞬時に計測できます。
このクイックスキャンはちょっと見た目には、団地などにある減速を促すためのハンプ(またはバンプ)の低いようなもので、そこを乗り越えるだけで残溝をミリ単位で計測できます。そのデータを「RFID」によってタイヤ個別に管理することが可能なわけです。
さらに、すでに実用化されている空気圧などの管理ツール「TIRE CARE」と合わせて、ユーザーのタイヤに関する点検、データ入力、レポート作成、分析時間を約98%削減できると言います。これによって省力化して、人手不足やSDGsにも対応していけるというわけです。
今後、ミシュランではこれらをタイヤ単品、システム単体で売るのではなく、サブスク的にタイヤを含んだ包括料金とした定額で提供していく方針だそうです。
なお、ここまで、イメージしやすく普及が早まりそうな物流トラック業界を中心に説明を進めましたが、先にも述べましたように、「RFID」はすべてのタイヤに搭載され、幅広い分野でタイヤ管理に応用が可能となるようです。
タイヤは新品の選択時から使用過程、交換時期など、一見すると大きな差がなくわかりにくい事柄が多いものです。タイヤメーカーのノウハウによる管理が使用開始から使用末期まで、トータルで目が行き届いていて、かつ省力化して運用できるのであれば、安心、安全とコストダウンも実現できる理想的な仕組みだと感じました。
日本ミシュランでは、「ジャパントラックショー2022」に、
●大型トラック向けレスキューサービスのデジタルアプリケーション「MRN GO」
●タイヤ点検の省力化を図るデジタルソリューション「MICHELIN Tire Care」
●4Rを具現化したワイドシングルタイヤ
●バン・ライトトラック用全天候型タイヤ(参考出品)
などを出展しています。
(文・写真/クリッカー編集長 小林和久)