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■航続距離の他に「買い方」も違う
トヨタbZ4Xとスバル・ソルテラという、両社が共同開発した電気自動車が、2022年5月12日に受注開始となります。
トヨタはKINTO(サブスクリプションサービス)のみで扱う一方、スバルは現金一括での販売にも対応するといった風に、メカニズム的には兄弟車といえる両モデルの取り扱いについてはメーカーごとの温度差を感じます。
「ほぼ同じ内容の兄弟車なのにずいぶん違うのだなあ」と思うかもしれませんが、違いはそれだけではありません。
外観での違いはフロントマスクだけ、インテリアでもブランドエンブレムくらいしか変わらないと思いきや、なんと電気自動車において重要なスペックである一充電航続距離がソルテラとbZ4Xでは異なるのです。
18インチタイヤを履く、エントリーグレードを比較するとFWD仕様の一充電航続距離は、ソルテラが567kmでbZ4Xは559km。4WD仕様ではソルテラが542km、bZ4Xは540kmというカタログスペックになっています。
共同開発で、メカニズム部分は共通といえる両モデルにおいて満充電からの航続距離が異なる理由はどこにあるのでしょうか。
●細かな仕様差により車重が異なる
スバルの広報部に確認したところ、航続距離の違いは『主に仕様装備差により生じる重量差』が理由ということです。
たしかにカタログスペックを確認すると、どちらの駆動方式においても、ソルテラの方が10㎏ほど軽量になっています。もっともカタログスペックの車両重量は10kg単位で四捨五入することになっていますから実際の差はもっと小さい可能性もありますが……。
いずれにしても、ソルテラとbZ4Xは単なる顔違いの同じクルマというわけではなく、重量差につながるような仕様の違いがある、こだわりの仕上がりになっていることがわかります。
そして、そのわずかな重量差が航続距離の違いにつながっているというわけです。
●軽量化がユーザーメリットに直結する
ソルテラとbZ4Xの一充電航続距離の違いが重量差によるというのは非常に深い話といえます。
モーターとバッテリーが共通仕様で、4WDでは2tに届く車重の電気自動車であっても、10kgの差が航続距離という数字に現われるほど、電気自動車において軽量化というのは性能差に直結する要素というわけです。
昔から電気自動車には「バッテリーのジレンマ」を指摘する声があります。バッテリーを多量に積めば航続距離はたしかに伸びますが、バッテリーの重さが増えるために倍の量を積んだからといって航続距離は倍になりません。バッテリー搭載量を増やすとコストも環境負荷も増えてしまいますから、トータルでのエネルギー効率としてはむしろマイナスともいえます。
ユーザーの満足できるバッテリー搭載量(≒航続距離)と環境負荷を軽減するバッテリー搭載量にはギャップがあるというのも事実です。
その対策として、多くのバッテリーを積んでも車重を軽くできるようカーボンやアルミといった軽量パーツを使うことはハイエンドな電気自動車ではトレンドになっています。
ソルテラとbZ4Xのわずかな重量差による航続距離の違いが示すように、とにかく軽量に仕上げることはユーザーメリットにつながるのです。軽い車重はリアルワールドでの電費性能としても違いとして現れてくるでしょう。
電気自動車はエンジン車に比べて重いのだから車重は気にする必要ないと思うのは間違いです。電気自動車だからこそ車両重量や軽量化技術についても注目していく必要がありそうです。
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2022年4月時点で国産・電気自動車で最長距離を走れるのはスバル・ソルテラという事実【週刊クルマのミライ】
https://clicccar.com/2022/04/17/1178146/