クルマの個人売買でも税金がかかる?元ディーラー営業マンが名義変更のチェックポイントを詳しく解説【保険/車検の知識・2022年版】

■不動産登記と同じ?クルマの名義変更はちょっと複雑

名義変更
公的機関への書類提出となる名義変更は、複雑な手続きと、完璧な書類作成を求められます

クルマを他人に譲渡する時に発生するのが「名義変更」手続きです。車検証上の所有者を変更する場合には、少々複雑な手続きが必要となります。ディーラーや中古車ショップでクルマを買った場合は、手続きをお店まかせにすることもできますが、個人間売買の場合は自分でやらなければなりません。

フリマアプリやオークション取引が増え、クルマの個人間売買件数も増えてきました。いざという時に困らないように、元自動車ディーラー営業マンである筆者が、クルマの名義変更方法を解説していきます。

●クルマは「不動産」!?

クルマを購入すると、車検証に所有者として記載されます。この所有者の登録は、不動産の登記行為と同じです。軽自動車は動産として扱われますが、小型乗用車以上のクルマは、土地や住居などの建物と同じように不動産として扱われます。

登記を証明する書類、つまりは土地の権利書などと同じ意味合いをもつのが車検証で、車検証上の所有者の変更は、不動産登記を変更することと同様になります。手続きには様々な書類が必要です。

●必要書類は多岐にわたる

車庫
クルマの所有者になる人は、しっかりと保管場所を確保しなければなりません。保管場所を証明するのが車庫証明です

必要書類は旧所有者と新所有者の双方が準備をします。

旧所有者は印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)、実印の押印と記名をされた委任状、譲渡証、車検証原本を新所有者に提出します。

新所有者は旧所有者が準備した書類に加えて、新所有者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)、実印の押印と記名をされた委任状と、残りの車検期間全体をカバーする自賠責保険証券を準備します。

名義変更
車庫証明の申請書類はネットからダウンロードするか警察署で入手できます

書類を揃えるのと同時に、必ずやっておかなければならないのが車庫証明の取得です。管轄の警察署へ行き、車庫証明の申請を行います。申請から土日祝日を除く5日間が経過すると、車庫証明が発行されます。即日交付とはならない点に留意し、余裕をもって申請しておきましょう。

車庫証明の有効期間は交付日から1か月です。なお、全国の一部地域では、車庫証明が不要の地域もあります。居住地を管轄する警察署に問い合わせると、車庫証明が必要な地域か、不要な地域かがわかります。

希望ナンバー
最近増えてきた図柄入りナンバープレートや、希望の番号を取得する希望ナンバー制度を利用する場合には、事前の予約が必要です

また、新所有者が希望ナンバーを取得したい場合は事前に申請が必要です。こちらも車庫証明と同様、発行までの日数がかかるので注意が必要な部分です。

また、旧所有者側の印鑑証明に記載されている住所が車検証に記載の住所と異なっていると面倒です。引っ越しを繰り返しながら、都度車検証の住所を変更していればいいのですが、住所変更をされていないケースが多いです。

この場合は、車検証に記載されている住所が出てくるまで住民票をさかのぼり、除票を準備する必要がでてきます。同一都道府県の場合なら比較的簡単ですが、遠方の場合や、1つ前の異動ではなく、2つ3つ前の住所となると、車検証に記載されている古い住所から、現在の印鑑証明に記載されている住所までの全ての足取りを示さなければならないため、各都道府県へ郵送での除票請求が必要となります。こちらも日数を要し、費用もかさむため注意が必要な部分です。

●個人間売買でも税金がかかる?

高年式で新車販売価格が高額車両の場合、環境性能割(旧自動車取得税)がかかる可能性があります。月割りで支払う自動車税とは異なり、クルマの残価額によってかかる税金が変わってきます。大きな金額だと40万円~50万円程度かかる場合もあるので事前に確認が必要です。車検証に記載のある型式指定番号と類別区分番号から、環境性能割はインターネットで確認することができます。

●書類とお金がそろったら運輸支局へ

名義変更
陸運事務所で記入する書類

名義変更をするには、新しく自動車を登録する管轄の運輸支局への届け出が必要です。公的機関への申請となるので、軽微なミスも許されません。自分の準備する書類への記載ミスであれば、その場で修正可能ですが、旧所有者の準備した書類への誤記や不備が見つかった場合には、修正ができず、名義変更手続きができません。書類の管理や準備には入念な準備が必要です。年に何十件もこなすディーラー営業マンでも、名義変更にはかなり神経を使います。

申請にはプロの力を借りることもできます。管轄する陸運支局の近くには必ずといっていいほど行政書士事務所がありますので、多少の手数料はかかりますがプロに任せるのもいいでしょう。

まずは、譲渡する側もされる側も書類をしっかりと揃える必要があります。自信がない場合には、行政書士の力を借りて、スムーズに手続きを終えたほうがトラブルも少なくなります。行政機関が相手の続きになるので、プロにお任せするのがミスなくスムーズにいく、ということも覚えておいてください。

●まとめ

不動産登記と同様に、クルマの名義変更は大変です。自動車ディーラーの営業マンでかなりの数を行いましたが、毎回不安になる手続きでした。書類の準備不足や誤記が発生しやすく、慣れた人でもかなりの神経を使います。スムーズに取引が進むように、名義変更手続きをする場合には、十分すぎるほどの確認をするようにしましょう。

ネットオークションやフリマアプリなどの台頭で、クルマの個人間売買も多く行われる昨今では、名義変更を個人で行うケースも多くなります。手順を正しく理解して、慎重かつ丁寧に名義変更の手続きに臨みましょう。

(文:佐々木 亘)

※この記事は2022年4月22日に再編集しました。

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この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
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