■縦置き直列6気筒エンジン、PHEV、48Vマイルドハイブリッド、8速ATなどを新開発
マツダはプレス向けに「ラージ商品群技術フォーラム」を開催しました。
以前お伝えしたように、ラージ商品群は、欧州ですでに発表されているMAZDA CX-60をはじめ、CX-50、CX-70、CX-80、CX-90を2022年から2023年にかけて市場投入するとすでにアナウンスされています。
マツダは、具現化されている「SKYACTIV TECHNOLOGY」をベース技術進化と名付け、フェーズ1と位置づけています。
ラージ商品群はフェーズ2にあたり、直列6気筒エンジン(SKYACTIV-G/D/X)、PHEV、48Vマイルドハイブリッド、トルクコンバーターレスの8速AT、SKYACTIVマルチソリューションアーキテクチャによる縦型エンジンが、ラージ商品群を特徴づける技術として採用されます。
エンジンについては、GMのように自社開発を止めたり、ボルボのように4気筒エンジンまでしか作らなかったりするメーカーもある中、一見するとダウンサイジングの流れにも反するように思えます。
ラージ商品群は、EV移行期の内燃機関のさらなる高効率化を掲げていて、排気量と気筒数を増やすことで対応。ライトサイジング(排気量の適正化)の考えに沿うものと考えていいのでしょうか。
大排気量エンジンによりエンジン負荷の低減を図りつつ、効率が落ちる極低負荷域では小さなモーターのアシストにより(48Vマイルドハイブリッド)高効率化を目指すとしています。
BMWなどが直列6気筒エンジン(ガソリンだけでなく、ディーゼルを含む)に48Vマイルドハイブリッドを組み合わせることで、ドライバビリティと環境負荷低減を図っている例もあります。ほかにも、直列6気筒は完全バランスによるスムーズな吹け上がりなどの利点もあります。
直列4気筒とモジュール化しやすいなどのメリットも見逃せません。マツダらしいのは、ラージ商品群でも全モデル一括企画による高効率な開発を実現し、前世代比で開発費を25%減らせるという成果を見通している点です。
「CASE」といわれるキーワードの中でも電動化やADAS関連は、とくに莫大な開発費が掛かることからもEV移行期だからこそ欠かせない利点といえそうです。
また、マツダは新しいプレイヤー(テスラなど?)が、既存の自動車メーカーのようにハードウェアだけに特化するのではなく、ソフトウェア領域での価値の拡大をしている点にも触れています。
クルマに期待される価値の領域が拡大しているとして、ラージ商品群では、ハードウェアを高効率化で生み出しながら、制御による性能進化、「ソフトウェアファースト」の構造を実現したとしています。
ラージ商品群のメカニズムを具体的に見ていくと、エンジン、モーター、トランスミッションが同軸上に搭載されることで、多様なエンジンとモーターの組み合わせが可能になります。バイオ燃料やe-fuel(合成燃料)などと呼ばれ、今後、地域などによってはCO2削減のひとつの策として、使われる燃料などにも対応できる備えをする必要があります。
●新開発8速ATも搭載
エンジンの熱効率向上などが盛り込まれているだけでなく、新開発トランスミッションの8速ATにも注目です。
トルクコンバーター・レスの8速ATで、SKYACTIVテクノロジーから始まったマツダの技術の中で、個人的に物足りなく感じられていた多段化に対応は、朗報といえるでしょう。ATユニットの効率を改善することで、ATエネルギーロスを約22%改善。
8速化によりモーターアシストも含めて燃費のいい領域で運転できるようになるほか、発進時の応答性向上、キレのある変速が可能になり、ドライバビリティの向上にも寄与するとしています。
AWDは、ハイパフォーマンス縦置きAWDとすることで、抵抗低減による燃費向上、ペダルレイアウトの改善により自然な運転姿勢が取れるようになったそう。
モーターアシストは、48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド(PHEV)を開発し、ストロングハイブリッドに関しては、トヨタからのOEM供給も見据えているようです。電動駆動システムをスケーラブルとして、低重心化も追求。これにより、低重心な走りや荷室空間の確保という利点も享受できます。
欧州の流れと逆行するという見方もあるディーゼルエンジンは、その開発もストップせずに、3.3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンを開発。DCPCIと呼ぶ空間制御予混合燃焼、排気量(空気量)の拡大による高効率化とトルクの増大が図られています。
この3.3Lディーゼルエンジンは、48Vマイルドハイブリッドと組み合わされ、プレミアムSUVに匹敵する走り、Bセグメント、Cセグメント級SUV並の高効率化が実現するそう。
ディーゼルエンジンの開発は、先述したように、カーボンニュートラル燃料への備えとしての役割も担っていて、マツダではすでにレース(スーパー耐久)を実験室として取り組んでいます。
この3.3Lディーゼルエンジンは、48Vマイルドハイブリッドと組み合わされ、プラグインハイブリッドは、2.5L直列4気筒エンジンに組み合わされ、日常生活の大半をモーター駆動でカバーするとしています。
そのほか、ラージ商品群ではハンドリングなどの走りの面でも新世代にふさわしいクオリティを実現するとしています。
たとえば、PHEVでは重量物をセンターに集約。剛性では、力が伝わる下流ほど高めたり、バネ上の姿勢安定を目指し、フロントはダブルウイッシュボーン、リヤはフルマルチリンク化されるなど、シャーシの進化も期待できるようです。
すでに生産が開始されたCX-60を皮切りに、日本にもラージ商品群が登場します。走りや環境性能の面で、世界をリードできるのか。目が離せないマツダの新世代モデルが走り出します。
(塚田 勝弘)