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■バンコクモーターショーで三菱自動車がラリーアート押しの、その理由とは?
●カスタマイズ好きのタイにハマり切るラリーアート群
日本でも復活した三菱のモータースポーツブランド「RALLIART(ラリーアート)」。パリ・ダカールラリーやWRC(世界ラリー選手権)など、三菱のモータースポーツでの輝かしい実績を作り上げてきたブランドと言っていいでしょう。
そんなラリーアートですが、タイの首都バンコクで開かれた「バンコクモーターショー2022」の三菱ブースには驚きました。なぜかといえば、ラリーアートのアピールが予想を超える濃さだったからです。
もっとも目立つステージ上には、同社のタイにおけるコア商品ともいえるピックアップトラック「トライトン」のラリーレイド競技車両が鎮座。実はこのクルマ、モーターショー開幕に合わせて発表されたアジアクロスラリー参戦のための車両なのでした。
ラリーアートとして超久しぶりとなるモータースポーツの参加は、三菱としてはプライベートチームの支援という位置づけのようですが、総監督に増岡浩さんが着任するなどかなり密接な関係だということが理解できます。
そしてステージ下のフロアには、昨2021年秋から発売されている特別仕様車の「トライトンRALLIART」や「パジェロスポーツRALLIART」に加え、新たに追加した「ミラージュRALLIART」、そしてオプションパーツを追加した「トライトンRALLIART」を展示。
いずれもルーフやドアミラーをブラックでコーディネートし、ボディサイドのデカールのほか、お約束の赤いマッドフラップなどが装着されて“いい感じ”の雰囲気が漂っています。
念のためお伝えしておくと、このイベントは東京オートサロンのようなカスタマイズカーのイベントではなく、あくまでモーターショー。にもかかわらず、ここまでRALLIARTを大胆にアピールしていること、そして日本よりも幅広い展開に驚かずにいられません。
脇の販売スペースでは、マスクやTシャツといったRALLIARTグッズもディスプレイされていました。
●三菱にとって日本に次ぐ重要拠点、それがタイ
それにしても、どうして三菱自動車はタイにおいて日本以上に積極的にRALLIARTを展開しているのでしょうか。
そこにはふたつの理由が考えられます。
ひとつは、タイではドレスアップ文化が盛んで、モータースポーツの注目度も高いこと。街を歩くとまるで90年代の日本のようにカスタマイズカーを多く見かけ、ちょっと懐かしい気分になります。
モーターショー会場でも、トヨタの「GR SPORT」やホンダの「Modulo」など、エアロを中心としたコンプリート販売のカスタマイズモデルがメーカーブースに並び、人気の高さを伺えます。
もうひとつは、三菱自動車にとってタイは重要な地域だということ。
三菱自動車の2021年の国別生産台数を見ると、日本国内の43万9588台に対し、タイは31万3368台と、日本に次ぐ生産拠点であることがわかります。そこから世界各地へ車両を供給するほか、タイ国内においても三菱自動車は根強い人気を得ているのです。
そんな彼の地におけるブランド戦略において、RALLIARTの復活は重要な意味があると三菱自動車は考えているのでしょう。
特別仕様車である「ミラージュRALLIART」のカタログを見ると、表紙にチャンピオンドライバーと思わしき人物がレーシングスーツ姿でガッツポーズを決める写真が使われ、モータースポーツイメージを高めています。
日本では「モータースポーツは販売に結び付かない」という声もあるようですが、タイでのRALLIARTの展開を見ていると、現地では決してそうではないことを実感します。
こういったモデルの展開はブランドをエネルギッシュに感じさせる効果が大きいように思えました。
同時に「ブランドは歴史が作る」のであれば、日本におけるRALLIARTの展開も決して無意味なことではないと思いますが、はたして?
(工藤 貴宏)