■まだ使えると思って使っている人がじつに多い
●スリップサインが出る前、5分山での交換が安全で安心!
タイヤの交換時期について多くの人が思っているのが、「スリップサインが出たら」というものです。
しかし、じつはこれはかなり危険で、スリップサインが出ているのはすでに限界を超えた状態だと言えます。カー用品店のバックヤードに積まれている、廃棄予定のタイヤはほとんどが丸坊主状態で、こんな状態までタイヤを使っているのか?と思うと、ちょっと怖くなることもあります。
スリップサインが出ても、路面がドライならば直進での制動距離は変わりません。というか短くなることが多いのです。それは山が減ると接地面積が増えるからです。
しかし、日本は雨が降る日が多いのです。1mm以上の雨が降る日を降水日と呼びますが、1年間の降水日の全国平均は117日で、おおよそ3日に1回は雨が降る計算。さらに10mm以上の雨だと週に1度は降っていることになります。
このような状況のなかで、雨が降らなければ大丈夫…はちょっと通用しません。
JAFではユーザーテストで、新品タイヤとすり減ったタイヤで制動距離を測るテストを行っています。
夏用タイヤは10分山、5分山、2分山の3種類で、参考としてプラットフォームが出現したスタッドレスタイヤもテストしています。
新品タイヤの溝の深さは約8mmなので、2分山は残り溝1.6mm程度で、ちょうどスリップサインが出現する減り具合です。スタッドレスタイヤでプラットフォーム出現というのは5分山になります。
テストデータを見れば一目瞭然で、ドライでは制動距離が短くなっていますが、ウエットでは明らかに制動距離が長くなっています。
とくに100km/hからの制動では、新品タイヤが平均47.6mで停止しているにもかかわらず、2分山の停止距離は22.9mも長くなっています。一方、5分山の制動距離は50.8mで3.2mしか伸びていません。
こうした数値から考えると、安全を担保するには5分山での交換が理想ということになります。
タイヤ価格の値上げが発表され、燃料代も高騰している今、山が半分残っているタイヤを交換しましょう…というのは、なかなかおすすめできる話ではありません。が、理想としては5分山で交換することだということを覚えておいて下さい。
そして新品から5分山まではゆっくりと落ちる性能が、5分山を過ぎると加速度的に落ちていくということも覚えておいて下さい。とくに、5分山を過ぎてからのウエット路面では、細心の注意を払って運転するようにしましょう。
(文・写真:諸星 陽一)
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