■バイオディーゼルにカーボンニュートラル燃料! 水素だけではないST-Qクラス
2月23日天皇誕生日に、富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久シリーズ2022の公式テスト走行。
富士スピードウェイでのテスト走行は、6月に開催される24時間レースを見越して夜間のテスト走行もあり、24時間レースに参戦するチームはこの2月か5月のテスト走行で夜間走行を走らなくてはなりません。
そのため、全ての年間エントリーチームが参加したということではありませんが、この日に参加したマシンは39台に登ります。
その39台の中で特に注目されているのが、カーボンニュートラルの取り組みから石油由来を使わない燃料によるレーシングマシンたち。これらのマシンは、ST-Qクラスからの参戦となります。
2021シーズンで大注目となった、水素エンジンのカローラ「ORC ROOKIE Corolla H2 Concept」。
水素を発電ではなく燃焼させて動力源とすることで、既存の内燃機関技術を応用でき、EVだけにとどまらないカーボンニュートラルの選択肢の一つとしてトヨタが開発を進めている水素エンジン。
モータースポーツを開発の現場とすることで、その開発の速度が飛躍的に向上したと言われています。そんな水素カローラが今年も参戦します。
2021シーズンの最終戦岡山で突然デビューをした、バイオ燃料を使用したデミオディーゼル「MAZDA SPIRIT RACING DEMIO Bio concept」が、今年の2022シーズンではMAZDA2にスイッチして、「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concept」として参戦します。
MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio conceptで使う燃料は、使用済み食用油やミドリムシなどの微細藻類油脂という原料から製造される次世代バイオディーゼル燃料で、従来の穀物を生成して作っていたバイオディーゼル燃料と比べて、食料との競合のような問題が無い点が優れているとのことです。
●カーボンニュートラル燃料のGR86とBRZが参戦!
これら2台のST-Qクラス参戦マシンの他に、今シーズンでは2台のカーボンニュートラル燃料を使用するマシンが、スーパー耐久のST-Qクラスを走ります。
カーボンニュートラル燃料はe-fuelとも呼ばれ、温室効果ガスの筆頭ともいわれる二酸化炭素と水素を触媒により結び付けて、炭化水素=油を合成するというものです。産業で発生する二酸化炭素を回収して電気分解由来の水素と結び付ければ、化石燃料から新たに発生する二酸化炭素を削減できるということで注目されています。
このカーボンニュートラル燃料を使ったマシンは、スバルからBRZ CNF Concept、トヨタからはORC ROOKIE GR86 CNF Conceptとして参戦。市販車ではコンポーネントを共有するBRZとGR86ですが、エンジンと駆動系が全くの別物となっています。
BRZ CNF Conceptは、市販車ベースでエンジンは水平対向4気筒のボクサーエンジンです。エアロパーツもSTIのものが装着されており、リアウイングは2021年夏の86Style with BRZ 2021 FUJIで発表されたスワンネックタイプ。
対するORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、エンジンが違います。GRヤリスの1.6リッター直列3気筒ターボエンジンを、1.4リッターにサイズダウンして縦置きで搭載!
「何か違うスポーツカーの実験も兼ねているのか?」と疑問に思われるところですが、GR86の水平対向エンジンは、スバルに知見が多くあることでトヨタのアイデアなどを生かしきれない、という観点から、トヨタ製のエンジンで開発をしていこうということになったようです。
なぜ1.4リッターなのかというと、モータースポーツでターボを装着した場合の係数が1.7倍となり、これを掛け算すると2.38リットル相当。つまりBRZと互角の勝負ができる、ということになるのです。
このORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、公式テストの事前にドライバーが発表されることはありませんでしたが、テスト走行では2021年SUPER GTでGT500チャンピオンの関口雄飛選手がドライブを担当していたようです。
対してBRZ CNF Conceptのドライバーは2021年のSUPER GT、GT300クラスのチャンピオン山内英輝選手と井口卓人選手のコンビ。
2022シーズンのスーパー耐久シリーズもこの2名を中心にドライバーラインナップが組まれていくようです。
BRZ CNF Conceptの場合、ゼッケン61番は伊達じゃない!ということなのでしょうか?
スーパー耐久シリーズの開幕戦は、早くも3月19日(土)~20日(日)に鈴鹿サーキットで開催されます。
(写真・文:松永 和浩)