■どんどん楽しくなるTTの運転操作
「ちょっと運転しにくいかも」
彼女は自分自身の愛車としてアルファロメオ「MITO」のクオドリフォリオに乗っています。しかも、トランスミッションはマニュアルです。
そんな彼女にとっても、TTの運転には違和感があったらしい。でも言わんとしていることはわかります。今と違い、20年前のドイツ車は「硬さのある操作系」が基本だったのです。
それを強く感じるのがステアリングフィールで、アウディに限らず最新世代のドイツ車はどれも軽快で滑らかなステアフィールとしているのです。
それらに比べると初代TTのハンドルは重く、滑らかではないですからリニアリティに欠けるのです。シフトフィールも同様です。
「でも、運転しているとどんどん楽しくなってくるね。2速とか3速で曲がる峠道のコーナリングは気持ちいい」
●今も輝くとは
ファーストインプレッションよりも、乗るほどに味わい深いクルマ。彼女はそう感じているようでした。
実は初代アウディTTは、スポーツカー作りとしても新しい発想を取り入れました。シャシーは当時のアウディ「A3」やフォルクスワーゲン「ゴルフ」と共通ですが、アッパーボディを変えることでスポーツカーに仕立てたのです。
「スカイライン」のプラットフォームを使ったZ33型日産「フェアレディZ」も同様のスポーツカー作りの手法ですが、登場したのは初代TTよりも遅い2002年でした。さらにいえば、FFベースのスポーツカー(スポーティな乗用車ではなく純粋なスポーツカー)というのも、初代TTが先駆者といえます。
初代TTはデザインだけにとどまらず、その方向性やアイデアも時代の先を見据えたものだったのです。だからこそ、こうして今も輝きを失わずにいるのでしょう。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:あいみ/ヘア&メイク:有本 昌代/写真:ダン・アオキ)