■アウディのスイッチ役、それが初代「TT」だった

「古き良き温かみ……それがネオクラシックの良さだと思うの」
ボクが新しく手に入れた愛車は、初代アウディ「TT」。1998年にデビューし、世界に衝撃を与えたスポーツカーです。

このモデルには“生まれ変わるアウディ”という裏テーマも与えられていました。
当時、アウディはブランド再構築を進めていたのです。初代TTをきっかけに、アウディはデザインの方向性を“都会的”へと大きく舵を切り、同時にブランドの方向性を“メカオタク”からデザインコンシャスなブランドへとシフトしました。
そのスイッチ役が、TTという凝ったデザインの小型スポーツカーだったのです。
●濃ゆい個性

エクステリアだけでなく、インテリアも“円”をモチーフとしたTTのデザインは、どのクルマにも似ていません。オリジナリティにあふれるものでした。
TTはその後、フルモデルチェンジを2回して今に至りますが、個性という意味ではもっとも濃いのが初代であることはだれの目にも明らかでしょう。

インテリアのこだわりも常識外れです。たとえば、エアコン吹き出し口の周囲やオーディオを隠すリッドはシルバーでアクセントになっているだけでなく、本物のアルミを使って質感を追求しています。
アウディはいま、プレミアムオーディオとして「Bang&Olufsen」を用意していますが、同ブランドとのコラボのきっかけはそもそもオーディオではなく「初代TTのインテリアに使うアルミの加工技術」だったという逸話があるほどです。同ブランドは、アルミの加工処理技術に長けていたのです。

「『カッコいい』ではないね。『カワイイ』だと思う」
それが初代TTのデザインに対する彼女の印象です。そして「私にとって新しい世界」と楽しそうな表情になってました。
(文:工藤 貴宏/今回の“彼女”:あいみ/ヘア&メイク:有本 昌代/写真:ダン・アオキ)