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■スズキ アドレスファミリーの血脈
アドレスは、1987年発売のアドレス50から、1991年発売の100cc、1998年発売の110cc、2005年発売の125ccまで、多彩な排気量と車種バリエーションを展開した、スズキ伝統のスクーターシリーズです。
アドレス110は、自他ともに認める大ヒット作となったアドレス100の後継機として、満を持して発売されたマシン。「アドレスを超えるのは、アドレスだけ」という当時の広告コピーにも、並々ならぬスズキの意気込みとプライドが感じられます。
でも残念ながら初期のアドレス110の販売はそこまでふるいませんでした。時代を先取りしたド迫力のボディ・デザインや、高めの価格設定がその一因だったともいわれています。
●新時代に生まれ変わったアドレス110
2ストロークエンジンを積んで街中を走り回っていたスクーターのブームは、やがて花盛りを過ぎ、2000年代に入ると、社会の環境性能要求の高まりとともに次々に生産を終えていきます。
2003年、2ストロークモデルのアドレス110も市場から静かに姿を消しました。
その12年後の2015年、アドレス110は新しい4ストロークエンジンをその胸にいだき、堂々と再デビューを果たします。生産拠点をインドネシアに移し、P.T.インドモービル・モーター社が送り出すスズキの世界戦略モデルの1台として、母国日本に舞い戻ってきたのです。
ところで「アドレス」の名は、「住所」や「挨拶」「演説」などを意味する英単語「address」のことだと思いがちですが、じつは「加える」という意味の英語「add」と、「衣装」を意味する英語「dress」をくっつけた造語なのだとか。
スズキが初のメットイン・スクーターを世に送り出すにあたり、「ほら、シート下の箱にかわいい衣装も入れられますよ、ぜひお出かけ先で着てくださいね」と、当時のおしゃれな女性たちに呼びかけているような、どこかほほえましい名前ですよね。
●今を走り続けるアドレス110
アドレス110をはじめとする原付二種スクーターは、2020年から日本でも大きな問題となっている新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大とともに、街の移動手段として熱い注目を集めています。
二輪車特有の転倒などのリスクを踏まえても、それ以上に電車などの公共交通機関利用による感染リスクを避けたいというユーザーの、切実な思いの表れだといえるでしょう。
水冷化が進んだ日本のスクーター市場では、いまや希少となったシンプルな空冷エンジンを積み、装備重量わずか100kgの軽量コンパクトなボディに、安定感のある前後14インチホイールを履いた実用的な街乗りスペシャリスト。
今まさに多くの人に望まれているシティ・コミューターが、現代のアドレス110の姿です。
でもアドレス110は、ただの簡単・便利なバイクではありません。そのライドフィールには、ささやかながらも捨てがたい、じわりと深い味わいがあります。走りを愛するライダーには、ぜひそこを見逃さないでほしいなと思います。
【スズキ アドレス110 主要諸元】
全長×全幅×全高:1845mm×665mm×1095mm
シート高:755mm
エンジン種類:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量:112cc
最高出力/最大トルク:6.5kW/0.88kgm
燃料タンク容量:5.2L
タイヤ(前・後):80/90-14・90/90-14
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ
メーカー希望小売価格:22万5500円(税込)
(写真・イラストレーション:高橋 克也/文:村上 菜つみ)
【関連リンク】
スズキ アドレス110 Official Site
https://www1.suzuki.co.jp/motor/lineup/uk110nmm2/?page=top
村上菜つみさんがスズキ・アドレス110で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2022年2月号(1月6日発売)に掲載されています。