「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を公道で体験。2.0では運転者異常時に赤信号や歩行者も検知し、安全な路肩を探して自動停止。1.0は2022年搭載車発売へ

■居眠りやわき見、急病など、ドライバーの異常を見守り、安全な場所で自動停止するシステム

日本での交通事故による死者数は、年々減少していて、2020年は2839人でした。なお、1970年には1万6765人に達し、交通戦争と呼ばれる時期が長く続いていました。その後、車両の衝突安全性能、予防安全性能などの進化により徐々に減っています。

各自動車メーカーは、交通死亡事故ゼロを目標に掲げているものの、現状では「ゼロ」はまだまだ難しい課題になっています。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」の公道走行の様子

マツダが発表した「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を公道で体験(同乗走行)する機会がありました。「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」は、国土交通省による「ドライバー異常時対応システム」のガイドラインに基づいて開発されている技術。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
自動停止、路肩退避の様子

自動運転の分野では各メーカーや大手IT企業などが、機械(車両)が自動運転を担う考えを基本としているのとは異なり、ドライバー(人間)中心を掲げているのがマツダの特徴です。

ただし、「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」は、自動運転技術ではなく、まさにドライバー異常時対応システムそのもので、「CO-PILOT」は副操縦士のこと。ドライバーの居眠りや注意散漫、発作や急病などを見守り、ドライバーの様子に応じて作動し、停止して安全を確保するとともに、SOSコールを自動的(手動も可能)に行うシステムです。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」作動中は、メーターとセンターディスプレイで表示され、警告音も鳴る

コア技術となるのは「ドライバー状態検知技術」「MAZDA CO-PILOT HMI仮想運転技術」「ドライバー異常時退避技術」の3つ。ドライバーの異常を検知するのは、ドライバーモニタリングシステム(赤外線カメラ/赤外線LED)で、テスト車両には、車内にメインカメラとサブカメラ2つ、赤外線LEDが搭載されていました。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
MAZDA3の「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」のテスト車両

また、車外のクルマやオートバイ、自転車、歩行者などを検知するのは、12のカメラ、77GHz帯域ミリ波レーダーが1つ、24GHzミリ波レーダーが4つ、ソナーが4つ。さらに、マウスのようなGPS受信機もルーフにありました。

こうしたセンサーは、市販化される車両に必ず搭載されるのではなく、コストや性能などを鑑みて必要に応じて(ライダーなど)検討していくとしています。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」作動中のディスプレイ

まず、描かれているロードマップは2段階。2022年の「MAZDA CO-PILOT 1.0」の「ドライバー状態検知技術」では、異常自動検知、居眠り検知に対応。こうしたドライバーの異常を検知すると、CO-PILOT HMI仮想運転技術とドライバー異常時退避技術による車両停止などが行われます。

高速道路では、異常自動検知、居眠り検知により、減速停止/車線維持/路肩停止まで対応。一般道では、異常自動検知により、減速停止/車線維持を目指しています。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
今回のテストでは、SOSコールを押して「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」を作動させた

ドライバー異常時自動緊急通報(SOSコール)では、ハザード・ストップランプ/ホーンによる車外通知が行われます。2025年の「MAZDA CO-PILOT 2.0」では、ドライバー状態検知技術で、体調不良などドライバーの予兆検知も加わります。さらに、高速道路では、車線変更/路肩・非常停止退避、退避技術の進化が目標として盛り込まれています。

今回、お台場(臨海部)での公道走行を含めた同技術の同乗走行などがプレス向けに行われました。内閣府お墨付きのコースで、試作車のMAZDA3と後方にCX-8が控えていて、万一に備える態勢でした。

警察の指導により、運転中にドライバーに質問など話しかけるのはNGとのことで、後席に担当者の方が乗り込み、疑問点を質問しながら、次の状態を説明してもらう流れ。

公道走行ですので、ドライバーが居眠りするフリなどもできず、シチュエーション別に前席の天井にあるSOSコールスイッチを押して、減速し路肩に安全に停止するというもの。

シーンは「基本動作(車線変更を含む路肩退避)」「路肩駐車車両の側方通過(他車の外乱)」「より安全な場所への駐車(幹線道路を避けた路肩退避)」の3つを用意。

トラックなどが路肩に停まっている公道で、安全な場所で停止したほか、前方の信号が赤であることを検知して路肩に停止したり、筆者の場合は、偶然通りかかった横断歩道歩行中の歩行者を検知して自動停止するというシーンもありました。自動停止する際は、前方、後方、左右の車両やオートバイ、自転車、歩行者などを検知。さらに、歩道(路肩)ギリギリに停止するのではなく、人の乗降が可能になる程度にスペースを空けて停車していました。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
停止車両でのドライバー状態検知技術(デモ)の様子

また、ドライバーの異常を検知する体験として、停止車両を使って居眠り検知を体験するメニューも用意されていました。

こうした異常検知をする際は、初めてのドライバーだと10分くらい通常の運転を見守り、学習する必要があるそう。車両のメモリー機能と紐付かせて、登録しているドライバーであれば運転直後から異常を検知してくれると、より安心感が高まりそうです。

「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」のようなドライバー異常時対応システムは、ドライバーを守るのはもちろん、さらなる交通事故を抑制するはず。居眠りしたり、急病になったりしたドライバーの運転を自動停止させ、暴走などから他者(他車)を守る役割も期待されます。

MAZDA CO-PILOT CONCEPT
「MAZDA CO-PILOT CONCEPT」のテスト車両

塚田 勝弘

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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