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■ネットもない時代を駆け抜けたイタリア製の傑作マシン!
●目の前を駆け抜けるあのマシンたちに大興奮!
11月12日(金)から14日(日)にかけて、愛知と岐阜にまたがるエリアで「フォーラムエイト セントラルラリー2021」が開催されました。
コースは、全日本ラリー選手権など通常の国内ラリーでは避けられがちな人気のある集落などにも設定され、いつもとはひと味違う雰囲気がファンを楽しませてくれました。
エントリーしたラリーカーも賑やか。FIA(国際自動車連盟)およびASN(FIA[国際自動車連盟]に加盟している各国の統括団体[Authority Sport Nationale])公認車両で行われるカテゴリー1には、ラリーへの出場を念頭に置き開発されたというトヨタGRヤリスや、国内ラリーの雄スバルWRX、シュコダ・ファビアR5といったWRCで戦う国際規格のラリーマシンなど、さまざまなマシンがコースを駆け抜けました。
また、2019年に開催された前回のセントラルラリー同様、ヒストリックカークラス(カテゴリー2)も設定されていたので、懐かしいモデルのラリーカーも数多くエントリーされ、こちらも大いに楽しめました。
もちろん、ヒストリックカークラスも競技ですから当然、カテゴリー1同様にタイムを競うのですが、年式も排気量も駆動方式もまちまちですので、タイムや順位よりも、往年の名車が力いっぱい駆け抜ける姿そのものを楽しんだファンが多かったようです。
今回は、そんなヒストリックカークラス出場車の中から印象的だったクルマをピックアップして、ちょっぴり懐かしんでみたいと思います。
その2台とは、かつてWRCで活躍したグループBマシン「ランチア037ラリー」とグループA時代のWRCでもっとも成功したラリーカー「ランチア・デルタ」です。
●ランチアワークス最後の2WDモデル「ランチア037ラリー」
037ラリーは、1982年から1986年までWRCで活躍していたランチアワークス最後の2WDモデルで、今回のセントラルラリーでは星野茂/大石隆俊 組のマシンが出場しています。ちなみに037ラリーがデビューする前年にはすでに4WDのラリーカー、アウディ・クワトロがデビューしており、各メーカーのグループBマシンが4WDへ移行していくきっかけとなっています。
それまで緑×赤のアリタリア(イタリアの国営航空会社)カラーのストライプが印象的だったランチアのワークスマシンが、マルティニ(イタリアの酒造会社)カラーとなったのもここからです。このマルティニカラーはグループBの4WDマシン、デルタS4、グループAのデルタシリーズにも引き継がれます。
ちなみに037ラリーが活躍した80年代はまだインターネットも普及していませんでしたので、筆者自身はモータースポーツ誌の記事を見て、遠い海外で行われるカッコいいWRCマシンに漠然と憧れていただけですけど…。とにかく、沿道の人垣を切り裂くようにかっ飛ぶマシンは、写真を見ているだけでも本当に刺激的でした。
もちろん、当時は日本でWRCが開催されるような時代が来るなどとは夢にも思ってもいませんでしたので、ピニンファリーナの手による流麗なランチア ベータモンテカルロのデザインを踏襲した037の美しいラリーカーが、時代を超えて日本のSSを走る姿を見られるだけで幸せな気分になってしまいました。もうそれだけでセントラルラリーに足を運んだ甲斐があったとすら思えます。
今回エントリーされたマシンは、他のヒルクライムイベントや2019年のセントラルラリーでもその走りを目にしてきましたが、何度見てもその走行シーンにはその都度感動させられてしまいます。
●真っ赤なデルタは最強グループAマシン
さて、そんな037ラリーとともにエントリされたもう一台のランチアが赤いデルタで、こちらは畑山健一郎/鈴木経博 組のエントリーです。
シンプルなデザインの5ドアハッチバックとしてデビューしたデルタでしたが、ラリーでの戦闘力向上のために、ボディの拡幅やエンジンの強化などを繰り返しながら進化させたグループA時代の最強マシンです。ちなみに、赤いボディとマルティニストライプの組み合わせは、長いデルタの歴史の中でも16Vエンジンがデビューした1989年のラリーサンレモ(イタリア)ただ1戦のみというレアなカラーリングです。
この頃はトヨタ・セリカGT-Four、三菱ギャランVR-4、マツダ323(ファミリア)4WDなど、日本メーカーがこぞってWRCへ参戦していた時代なので、日本へもそれなりに情報が入ってきました。TVでの放映もありましたし、WRCを収録したVHSビデオなども販売されていました。
1989年のラリーサンレモでは、フラットダートにテープでコースを作ったステージが設定されていて、そこを走る赤いデルタの姿が筆者の頭にうっすら残っていただけに、セントラルラリーでは岡崎のコースを走る赤いデルタに思わずそのシーンが重なってしましました。
かつて雑誌の写真でしか見る機会のなかった037ラリーや、TVやビデオを通じて知ったミキ・ビアシオンの赤いデルタの走りも、今ではインターネットを通じていつでも気軽に見ることができます。
そんな時代になっても、貴重なマシンを間近に見て感じることができるのはやはり嬉しいものです。セントラルラリーは最新マシンによる熾烈な戦いはもちろん、往年の名車の共演も楽しめる素晴らしいラリーでした。
(文&写真:高橋 学)
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