■新型CVT「スバルパフォーマンストランスミッション」もパワー感に貢献
スバル(SUBARU)の新型WRX S4は、従来型の2.0Lから2.4Lに排気量の拡大が図られています。
最高出力は275PS/5600rpm、最大トルクは375Nm/2000-4800rpmで、従来型の2.0Lターボは300PS/5600rpm・400Nm/2000-4800rpm。新型はそれぞれ、25PS/25Nmダウンしています。
ボア×ストロークは、86×86mmから94×86mmと、比較するとショートストローク化されています。なお、WLTCモード燃費は、新型は10.8km/L。アイドリングストップを備えたことで、JC08モード燃費では先代よりも約8%の向上となっています。
新型は排気量を拡大したにも関わらず、パワー、トルクともに低くなっているものの、実際の走りにはそれをまったく感じさせないほど力強く感じられます。
ミニサーキットで新旧モデルを乗り比べると、ほぼ全域にわたって加速感に申し分はなく、最高出力、最大トルクは下がっているものの、実用域で高いトルク感が得られるだけでなく、高速域のトルクの落ち込みを抑制されています。
一例として、70km/hからの加速では従来型を上回っているそうで、ウエイストゲートバルブ、エアバイパスバルブの電子制御化により、緻密な過給圧の制御が可能になったのも貢献していそう。さらに、新型CVT「スバルパフォーマンストランスミッション」の採用も大きく利いています。
レシオカバレッジが従来型の6.43から6.91に拡大され、加速性能の向上や静粛性、振動の抑制にも寄与。
先述したように、スペック上では25PS/25Nmダウンとなっているものの、ミニサーキットで走らせている分には、その差を察知することは難しく、むしろ低速域でのトルク感や中間加速の鋭さは、新型の方が上回っているように感じました。
おそらく、街中や郊外路はもちろん、高速道路や山岳路などの一般道でもその差を実感することはあまりなさそう。
また、新型は「SUBARU GLOBAL PLATFORM」の採用に加えて、レヴォーグから引き続き「インナーフレーム構造」や構造用接着剤の採用などにより、ボディ剛性の向上が図られているのも明確に高い剛性感として伝わってきます。ハードなコーナリング時だけでなく、流してゆっくり走行している場合でもしっかり感があり、微振動など気になる音・振動面の抑制も新型が1枚も2枚も上手。
さらに、ハンドリングもフロントロール剛性の約20%向上により素直な回頭性を得ていて、よりスムーズにインを向く印象です。一方で、コーナーの大小や速度域によっては、リヤが逃げるような挙動でオーバーステアを感じさせるシーンもあります。
フロントにリバウンドスプリングを備えた「GT-H」と、ZF製の電子制御ダンパーを備える「STI Sport R」系との乗り味も、思いのほか差があります。前者は、ロールを抑えた乗り心地の良さが特徴的で、後者はその名にふさわしいスポーティな仕立て。
さらに、電子制御ダンパーにより「Comfort」、「Normal」、「Sport」というモード名にふさわしいメリハリのある乗り味になるのと、操舵力可変パワステもこの3モードで変わり、とくにしっかりとした操舵力が得られるようになっています。
プロトタイプの試乗は、路面のいいミニサーキットで行われたため、乗り心地の評価は難しいところがありますが、静粛性の大幅な向上は明らかで、ハンドリング、フットワークの良さも新型を名乗るにふさわしい仕上がりになっています。
(文:塚田 勝弘/写真:SUBARU、塚田勝弘)