■SUBARUと共同開発によるプラットフォームと「X-MODE」の新機能「Grip-Control」、ステアバイワイヤシステムなどを搭載
一充電あたりの走行距離が500km前後とアナウンスされたトヨタのバッテリーEV(BEV)の「bZ4X」の詳細が、2021年10月29日に公開されました。SUBARUと共同されたBEV専用のプラットフォームが初めて採用され、低重心と高剛性化が図られています。
ボディサイズは、全長4690×全幅1860×全高1650mm。ホイールベースは2850mm。総電力71.4kWhのリチウムイオン電池を床下に搭載。フロントモーターの最大出力は150kW、4WDにはこのフロントモーターに加えて、最大出力80kWのリヤモーターも配置されます。
ここでは、メカニズム面と操作系をチェックします。このBEV専用プラットフォームは、「e-TNGA」の考え方に基づき開発されています。
主な狙いは、低重心化と高剛性化。まず、低重心化を実現するべく、EVで最も嵩む電池を薄型化。大容量の電池パックを床下に平置きで配置されています。
ほかにも、トヨタ初採用になるのがモーター、トランスアクスル、インバーターが一体化されたe-Axleで、充電機能と電力分配機能が集約された「Electricity Supply Unit(ESU)」もトヨタ初採用になっています。
高剛性化では、主要の骨格部位に高強度に寄与するホットスタンプ材、高張力鋼板を使った軽量、高剛性なボディ構造を採用。電池パックとその周辺、バッテリーEVユニットやラジエータ搭載部、前後サスペンションまわりなどの剛性向上も盛り込まれています。走りの面では、モーター駆動の特性が活かされ、素早いレスポンス、リニアな加速感が得られるそう。
また、加減速のコントロールとドライバーのペダル操作の軽減、滑りやすい路面のスリップ抑制制御などの高精度な出力制御も盛り込まれています。さらに、AWD(4WD)車は、前後モーターの独立制御により高い回頭性を実現するとともに、操縦安定性の向上も図られています。
SUBARUとの共同開発の成果であるAWD技術や「X-MODE」の採用(AWD車、トヨタ初)もトピックスです。また、「X-MODE」の新機能として「Grip-Control」が新たに開発され、「bZ4X」に搭載されます。モーター駆動の特性を活かすことで、日常使いからライトオフロード以上の走行までカバーし、EVの期待を超える高い走破性を実現するそう。ドライバーの操作系にも新機軸が盛り込まれています。
トヨタ初となる「ステアバイワイヤシステム」と異形ステアリングホイールを組み合わせたワンモーショングリップがそれで、「ステアバイワイヤシステム」は、中国市場向けに設定された後、そのほかの市場向けに2022年の発売以降、順次装着車を設定する予定だそう。
このステアバイワイヤシステムは、ステアリングホイールとタイヤの間にメカニカルな結合のないシステムで、一部車種に採用されます。
特徴は、ステアリングの回転角度を持ち替え不要な約±150°に設定。これにより、Uターンや車庫入れ、ワインディングでの走行時などでドライバーの負荷が大きく低減するそう。さらに、ドライバーが感じる操舵トルクと、タイヤの転舵角度を独立に制御することにより、操舵感も向上も図られています。
ドライブモードセレクトと連動し、ステアリング特性の変更も可能。ほかにも、タイヤからの不要な振動は遮断しながら、ロードインフォメーションなど必要な振動のみ伝達し、路面の凹凸を乗り越えるような場合や、レーントレーシングアシストの作動時なども、タイヤの動きを制御し、車両の安定性を確保するそうです。
最新のコネクティビティも用意されています。クラウド上の地図情報を活用し、交通情報や駐車場の空き情報をリアルタイムで取得する「コネクティッドナビ」を採用。こちらは、通常のナビ機能に加えて、移動支援や充電施設表示、航続可能エリア表示など、バッテリーEV専用の機能にも対応するのが特徴です。
さらに、音声認識機能の充実化により、ワイパーやエアコンなども動作できるようになるそう。また、「OTA(Over the Air/無線通信)」によるソフトウェアアップデートにも対応します。
先進安全装備の「Toyota Safety Sense」と、マルチメディアシステムは、この「OTA」により販売店へ入庫することなく、性能向上のためのソフトウェアアップデートに対応します。さらに、デジタルキー装着車も設定されてます。スマホを携帯していれば画面操作なしでロック、アンロック、システムスタートがスマホのアプリで可能になります。スマホ間でデジタルキーの受け渡しが可能なため、家族や友人間で離れた場所での車両のシェアも容易になります。
(塚田勝弘)