航続距離500kmのためにエアコン以外の暖房を採用するトヨタのBEV「bZ4X」は、RAV4とハリアーの中間くらいのミドルサイズSUV

■SUBARUと共同開発したBEV(バッテリーEV)を初採用し、低重心と高剛性化を実現

2021年10月29日、トヨタは、BEV(バッテリーEV)専用プラットフォームを初めて採用するピュアEVの「bZ4X」の詳細を明らかにしました。「bZ4X」は、「bZ」シリーズの第一弾で、2022年年央より世界各地で発売される見込みです。「bZ4X」を皮切りにフルラインアップでバッテリーEVの展開を推進するとしています。

トヨタ bZ4X
トヨタのバッテリーEV「bZ4X」のエクステリア

ボディサイズは、全長4690×全幅1860×全高1650mm。ホイールベースは2850mm。

トヨタではRAV4が全長4600×全幅1855×全高1686mm。ハリアーが全長4740×全幅1855×全高1660mmですので、全長はRAV4とハリアーの中間くらい、全幅は同じくらい、全高はハリアーに近い高さになっています。

トヨタ bZ4X
トヨタ「bZ4X」のリヤビュー

エクステリアは、「Hi-Tech and Emotion」というデザインテーマを掲げ、EVらしい先進感と美しさを融合させたエクステリアデザインを目指し、先進的なスリークさと、SUVらしい力強さを両立したスタイリングが追求されています。

「bZ4X」には、SUBARUと共同開発されたBEV専用のプラットフォームが初採用されるのもトピックス。EVならではの要件を盛り込みながら、低重心、高剛性化されたプラットフォームにより、スムーズかつドライバーの意図に沿う走り、本格なSUVとしての走破性が追求されているそうです。

トヨタ bZ4X
「bZ4X」は、SUBARUと共同開発したBEV専用プラットフォームを初採用する

搭載されるリチウムイオン電池は、総電力71.4kWh。フロントモーターは、150kW、4WD仕様にはこのフロントモーターに加えて、80kWのリヤモーターも配置されます。トヨタはテスラなどと比較され、EVに出遅れているという指摘をされることがあります。しかし、EV専用プラットフォームを使う同SUVは、「TOYOTA」ブランドの名に恥じない完成度で送り出されるはずです。

トヨタ bZ4X
バッテリーEV「bZ4X」のインテリア

とくに、EVで気になる航続距離です。バッテリーに厳しい冬場の航続距離の確保(一充電あたりの走行距離は500km前後。FWD車・WLTCモード・社内測定値)をはじめ、世界トップレベルの電池容量維持率(10年後90%)が目標として掲げられています。

この10年後の90%は、開発中の目標値。使用期間、走行距離は10年または24万km(15万マイル)のいずれか短い方が想定されています。先述したように、とくに冬場の航続距離を確保するため、走行時の省エネ性能向上と実用上の航続距離の確保が目標として盛り込まれています。

空力性能の追求をはじめ、ボディやユニットの軽量化、走行以外の消費エネルギー、冬場の暖房による消費電力を減らすため、ヒートポンプ式エアコンを採用。

トヨタ bZ4X
Dセグメントセダン並みの広さも「bZ4X」の特徴

さらに、シートヒーターやステアリングヒーター、トヨタ初となる前席乗員足元の輻射(ふくしゃ)ヒーターも備わります。また、充電時間の短縮も図られていて、世界各地域の高出力充電にも対応(DC急速充電では150kWに対応、30分で充電量80%まで充電可能)するそうです。

また、BEV専用プラットフォームによる、ひとクラス上の広いキャビンも見どころです。Dセグメントセダン並みのタンデムディスタンス(前後シート間距離)は、1000mmが確保されます。前席床下への足入れ性などは現時点では不明ですが、これだけ広ければ、かなりリラックスして座れそうです。足元の広さ(レッグルーム)は、前後席ともミドルSUVクラスでトップレベルを実現するとしています。

トヨタ bZ4X
「ワンモーショングリップ」のステアリング

さらに、トヨタらしい高い静粛性が確保された車内では、インパネを低い位置に抑え、大開口パノラマルーフ(装着車を設定)により高い開放感を演出するそう。また、落ち着いたキャビンを演出するファブリック張りのインパネも特徴。

エンジンルームからの音や振動がない分静かなEVは、相対的に車外からの騒音が気になります。そこで、遮音性の高いガラス、風切り音の減少などにより、走行中でも明瞭な会話ができる静粛性も確保されるそうです。

インパネでは、メーターをステアリングホイールの上側を通して見えるように配置されたトップマウントメーターがトヨタで初めて採用され、視線移動を抑制して遠視点化することで、見やすさが確保されているそう。また、ステアリングコラムを含めた運転操作系を操作しやすいようモジュール化され、手元からメーターの視線誘導を促す羽衣のような形状が採用されるなど、従来のトヨタ車と異なる操作系が採用されています。

塚田勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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