■「ファラオの怪鳥」の血をひく250ccアドベンチャーモデル
今を去ること40余年、スズキのラリーマシンDR-Zは、1988年のファラオラリーで華々しい大勝利を飾り、全世界の注目を集めました。
当時すでにツインエンジンが主流となっていた新鋭ラリーマシンたちを押しのけ、シングルエンジンを積んで栄えある勝利をもぎ取ったこの異形のマシンは「ファラオの怪鳥」の異名とともに広く知られ、同年発売されたレプリカモデルDR750Sとともに各国で人気を博しました。
強烈な印象を放つ斬新なクチバシデザインは、その後のスズキのラリー/アドベンチャーモデルの象徴となっただけでなく、世界のアドベンチャーモデルのデザインをパワフルにけん引。
DR750Sは、今なお語り継がれる伝説の名機となりました。
でも輸出モデルのみの生産だったため、国内販売されないことにがっかりした日本のライダーも、当時はきっとたくさんいたことでしょうね。
●誰もが乗れる小さな怪鳥
Vストロームは、かつてのラリーマシンのイメージを色濃く引き継ぐVストローム1050を筆頭にラインナップされたアドベンチャーモデルのシリーズ。Vストローム250は、シリーズ末弟にあたる最小排気量モデルです。
兄貴分のVストローム1050や650がVツインエンジンを搭載しているのに対して、Vストローム250の心臓はロードモデルGSX250Rと共通のパラレルツイン・エンジン。ただし排気系の取り回しなどを変更し、その特性をVストローム250に最適化しています。
ロードモデルに準じた前後17インチタイヤを履いている点も、アドベンチャーモデルとしてはちょっと特別な部分でしょうか。道なき道をゆく走破性バリバリのハードな冒険バイクというよりは、いつでもどこでも安心して走れる扱いやすさを目指して作られたVストローム250のキャラクターが、このホイールサイズにもよく表れている気がしますね。
小さめホイールを採用しているとはいっても、アドベンチャーモデルである以上、ボディが大柄になるのは宿命ともいえます。でもVストローム250は、身長164cmの私なら両足がべったり接地する安心設計が自慢。迫力満点の見た目に反して取り回しが軽快なこともあって、よほど小柄なライダーでなければ乗りにくさを感じることはないでしょう。
ライダーに優しいサイズ感は、Vストローム250の隠れた魅力のひとつとなっています。
ファラオラリーを勝ち抜いたホンモノの冒険者の血統を受け継ぎつつ、ロングツーリングやフラットダート走行はもちろん、ふだん使いのシティコミューターとしても実力を発揮する万能バイク、Vストローム250。
いつもの平和な日々にちょっと退屈して、小さな冒険に出かけてみたくなったライダーには、まちがいなくおススメできる一級品の休日アドベンチャーマシンです。
【スズキ Vストローム250 主要諸元】
全長×全幅×全高:2150mm×880mm×1295mm
シート高:800mm
エンジン種類:水冷4ストロークSOHC2バルブ二気筒
総排気量:248cc
最高出力/最大トルク:18kW/2.2kgm
燃料タンク容量:17L
タイヤ(前・後):110/80-17・140/70-17
ブレーキ:前後油圧式シングルディスクブレーキ(ABS)
メーカー希望小売価格:61万3800円(税込)
(写真:高橋 克也/文:村上 菜つみ)
【関連リンク】
スズキ Vストローム250 Official Site
https://www1.suzuki.co.jp/motor/lineup/dl250rlzm1/
村上菜つみさんがスズキ・Vストローム250で出かけたツーリング記事は、月刊誌「モトチャンプ」2021年11月号(10月6日発売)に掲載されています。