トーヨータイヤの最新SUV/CCV専用スタッドレス「オブザーブGSi-6」は、スノーもドライもウェットも、冬のさまざまな路面で高性能だった【TOYO TIRES OBSERVE GSi-6】

■アイスバーンでもよく止まり、ウェットでも高性能

オブザーブGSi-6
オブザーブGSi-6はマルチパーパスに使えるSUV/CCV専用スタッドレスタイヤだ

筆者が自動車メディア界で仕事を始めたのは35年ほど前のことです。当時はまだスパイクタイヤの使用が可能で、春先に降雪地帯を訪れると冬の間に削られた路面が粉じんとなって市中を覆い、街並みは濁ったカフェオレの中にあるように見えたものです。それが今はすっかりなくなり、春先でも澄んだ空気であふれています。

オブザーブGSi-6走りアップ
さまざまな路面で高い性能を発揮するオブザーブGSi-6

スタッドレスタイヤがもたらした恩恵はじつに素晴らしいもので、人々の暮らしを快適なものに変えてきました。そうしたなかスタッドレスタイヤはつねに進化を続け、より快適で安全なタイヤへとなってきています。

トーヨータイヤは「オブザーブ」「ウインタートランパス」の2ブランドでスタッドレスタイヤを展開していますが、なかでもSUV/CCV(クロス・カントリー・ビークル)に的を絞ったスタッドレスタイヤ「オブザーブGSiシリーズ」は、多くのSUV/CCVユーザーから高い支持を受けています。その「オブザーブGSiシリーズ」の最新モデル「オブザーブGSi-6」を、今年の2月、北海道で先行テスト。その詳細をおとどけしましょう。

オブザーブGSi_6新雪走り
フカフカの新雪でもしっかりグリップするオブザーブGSi-6

地球温暖化の影響もあるのでしょう。ここ数年の冬の様子が少し変わってきています。北海道の札幌と言えば誰もが知っている雪の街、冬季には雪祭りが開催され街中が真っ白になる、まさに雪の大都市です。しかし、2016年~2020年の札幌の最高気温を見てみると0℃を超える日が年々増加。日中は雪が解けてウェット路面、夜にはその解けた雪が再凍結しアイス路面に変化するという過酷な状況です。スタッドレスタイヤは、雪や氷はもちろん、ドライやウェット路面でも高い性能を求められる時代に入ったと言えます。

●内部構造まで新設計のブランニューモデル

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2016年から2020年の札幌市の気温変化。最低気温は零下だが、最高気温が0℃を上まわる日が増えている

「オブザーブGSi-6」はさまざまな路面におけるハンドリング性能の向上はもちろん、従来から定評のあるスノー路面でのブレーキング性能に加えて、ウェット路面でのブレーキング性能の向上も追求して開発されたスタッドレスタイヤです。コンパウンド(トレッドゴム)やパターンはもちろん、内部構造までを新設計としたブランニューモデルです。

コンパウンドは吸水カーボニックパウダーを配合することでミクロの水膜を効率よく吸水、シリカを増量することによってコンパウンドの柔軟性をアップし、密着性を高めて路面とのグリップをより向上。もちろんトーヨータイヤが長きにわたり採用し高いノウハウを得ている鬼クルミの殻の配合も行われています。

鬼クルミの殻は氷よりも硬くアスファルトよりも柔らかい性質があり、微細に加工した鬼クルミの殻をコンパウンドに混入することで、路面を傷めることなくひっかき効果を発揮します。構造面ではホイールとタイヤをかん合させる部分に高硬度ビートフィラーを採用、加えてトレッド部を支える内部構造には高剛性スチールベルトと高強力キャッププライを組み合わせることで操縦安定性の向上をねらっています。

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シリカを増量し、しなやかさをアップしたオブザーブGSi-6のコンパウンド
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タイヤの内部構造も強化されている

円周方向の溝は「GSi-5」と同じ4本主溝の採用により排水性を確保しつつ、ジグザグ要素の増加とセンターに設置されたジグザグリブの効果によりスノートラクションと操縦安定性を向上。また、リブ上に配されたスウィングサイプと呼ばれる波状のサイプはサイプの厚み(すき間の幅)に変化を持たせることでサイプの閉じ込みを防止、除水とエッジ効果を発揮します。従来、360°サイプと呼ばれていた全方向に効くサイプはスパイラルエッジサイプという新しくデザインされたものに変更、さらに高い効果をねらっています。

ショルダー部にはライトニングエッジと呼ばれるギザギザ加工を採用。外周に向かって広くなる連通スリットは高い排水性、排雪性を確保。サイド面にもバットレスエッジと呼ばれる加工を施し、わだち路対策をしているところは、さすがオフロードでのノウハウを蓄積しているトーヨータイヤという印象です。

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センターのしっかりしたリブ構造が安定したハンドリングを実現
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全方向のグリップを獲得しているスパイラルエッジサイプの周囲には新品時からアイスグリップを発揮するファーストエッジ加工が施されている
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横方向に開いている溝が効率よく排水と排雪を担当。サイド部分にもエッジ加工を施し、わだち性能をアップしている


●不安感を感じさせない走り心地

今回の試乗では高速道路から一般道、ワインディング、さらには広い空き地での自由旋回とあらゆるシチュエーションを経験、路面ではドライ、ウェット、スノー、そしてブラックアイスバーンと多彩な路面を経験しました。それぞれの詳細な印象をおとどけしますが、それ以前にどこに行っても不安感がなかったことをまずは報告しておきます。

オブザーブGSi_6イメージ
シャーベット路のグリップも好印象

アイス路面では加速、減速といった縦方向のグリップはもちろん、ステアリングをスッと切っていったときにすぐにクルマが向きを変えていってくれるところに安心感を感じます。さまざまな要素が関連して前後左右の動きをよくしているのでしょうが、全方向に対して効果があるというスパイラルエッジサイプが効いている印象です。アイス路面では希薄になりがちなステアリングインフォメーションもしっかりとしていて運転がしやすい印象でした。雪国のドライバーがもっとも恐れるのがブラックアイスバーンです。昼間に融けた雪が夜に再凍結、さらに多くのクルマが走ることでツルツルに磨かれた路面がブラックアイスバーン。ここでどれだけ止まれるか? はスタッドレスタイヤの評価を分ける重要な項目ですが、「GSi-6」のブレーキングは素晴らしいものでした。ブレーキペダルの踏力を増していくと、まさに「ギュッ」という感じで氷をしっかりとつかんで止まってくれる安心感の高いものでした。

ブラックアイスバーン路面
不気味に黒く光るブラックアイスバーン。このような路面でのブレーキ性能も高い
オブザーブGSi_6 アイス路面
アイス路面でもギュッと力強くブレーキが効く

スノー路面ではタイヤ前後方向の接地長を増やしたことが効いていて、しっかりとした中立感を得ていることを感じられました。一世代前のスタッドレスタイヤは中立感があいまいで「なんか落ち着かないなあ」と感じるブランドもあったのですが、雪の上でもビシッと安定しているのはなかなかのものです。さらに、そこからステアリングを切っていくとしっかりとした手応えをもちながらグッと曲がっていってくれるのはとても安心感があります。スノー路面では走り込んでいってもグリップが失われないのが好印象です。タイヤの溝に入り込んだ雪をしっかりと排出していき、いつでも活きのいいタイヤで走っている感覚。グリップダウンが起きないのは魅力です。トーヨータイヤのテストデータによれば、スノー路面での制動距離はGSi-5に比べて7%の短縮を実現しているといいます。

オブザーブGSi_6 スノー路面
雪のワインディングも軽快に走れるオブザーブGSi-6
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スノー路面での制動距離は先代モデルに比べて7%の短縮を実現しているという

●ドライ路面でもしっかりしたフィーリング

近年、除雪がしっかり進んでいることもあり、冬季といってもドライ路面はよく出現します。関東の都市部などでは当たり前のようにドライ路面がありますし、冬の北海道などでは気温が低いと路肩の雪が解けないもののクルマが走っている部分は雪が解け、さらにそれが進むとドライに近い状態にまでなります。刻々と変化する路面に対応してこそスタッドレスです。

トランパスGSi-6 ドライ路面
ドライ路面でも剛性感のあるフィーリングでしっかりした印象

「GSi-6」はしっかりしたセンターリブと、剛性の高い内部構造によってドライ路面も良好なフィーリング。高速連続走行も快適ですし、レーンチェンジも安心感がありました。スタッドレスタイヤにありがちな腰砕け感がないのも、さすが世界初のミニバン専用タイヤを作ったメーカーだという印象です。

さて、今回とくに力を入れたというウェット路面での性能ですが、スタッドレスタイヤを履いているという印象を感じることなくドライブできます。雪上性能を確保するためにギザギザのデザインが加えられている主溝もしっかりと機能している印象があります。

オブザーブGSi_6ウエット路面
ウェット路面との相性は高速道路であっても高いもので、安定感にあふれていた

ウェットのブレーキも不満はありません、ちょっと強めのブレーキを踏んでも安定感を持った減速が味わえました。トーヨータイヤのテストデータは100km/hからの制動試験で11%もの制動距離の短縮を実現したというのですから、かなりのパフォーマンスアップが行われているのは紛れもない事実です。

(文:諸星 陽一/映像・写真:前田 惠介)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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