■3代目シビックタイプRをベースに、限定300台で販売された無限初のコンプリートカー
2021年8月に11代目となるホンダ新型シビックが登場しました。現在のところ、1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載したモデルのみですが、2022年にはハイブリッド車とタイプRが登場予定となっています。
FF最速モデルの称号をルノー・メガーヌR.S.と争っているシビックタイプRですが、現行モデルは2021年7月で販売終了となっており、中古車でしか手に入れることができません。
そのシビックタイプRの中古車相場を見てみると、現行モデルのタイプR以上に高額なモデルとしてMUGEN RRが流通しています。このMUGEN RRとは一体どんなモデルなのでしょうか。
2007年6月に発表されたホンダシビックMUGEN RRは、ホンダのワークスブランドである無限が、3代目シビックタイプRをベースにエンジンおよびシャシーなどにチューニングを施した、無限初のコンプリートカーです。
2007年9月より300台限定で、ボディカラーはミラノレッドのみ、車両本体価格477万7500円で販売されました。現在MUGEN RRの中古車相場は約1000万〜約1358万円なので、倍以上も価格が上昇しています。
MUGEN RRの外観には、カーボンコンポジットやアルミニウムを積極的に投入し、優れた空力性能と軽量化を両立。サーキットで培った技術により、前後マイナスリフトバランスを実現しています。
インテリアでは、レカロと共同開発したセミバケットシートをフロントに採用。このシートは着座ポイントが公道用のノーマルとサーキット用のローという2つのポジションを選べます。
またショートストローク化されたシフトと相まってスポーツ走行時のホールド性と操作ポジションの最適化を実現しています。
搭載するエンジンは、最高出力240ps・最大トルク218Nmを発生するK20A型2L直列4気筒DOHC i-VTEC。
専用のカムプロフィールを採用するだけでなく、ラム圧をかせぐダクトレイアウトと大容量エアボックスを備えたインテークシステム、さらにレイアウト最適化を狙ったエキエキゾーストマニホールドと低背圧を達成したデュアルエキゾーストシステムを採用することで、最高出力は15ps向上しています。組み合わされるトランスミッションは6速MTのみです。
出力が向上したエンジンに合わせて、ブレーキも強化。ブレンボキャリパーの性能をさらに引き出す逆ベンチ構造のフロントローターやスリット構造のリアローター、スポーツブレーキパッドを採用。また、ダイレクトフィールを実現するため低膨張率のブレーキホースを装着するなど余念がありません。
MUGEN RRは減衰力5段調整式ダンパーを採用した専用サスペンションにより、コーナリングパフォーマンスだけでなく、乗り心地など快適性の両立も果たしています。
標準装備されるタイヤはブリヂストンと共同開発した専用タイヤの「ポテンザRE070 RRスペック」。軽量・高剛性の専用鍛造18インチアルミホイールが組み合わされ足元を引き締めています。
このようにメニューを見ると、 MUGEN RRはシビックタイプRの性能に磨きをかけて、究極のFFスポーツパフォーマンスを獲得したモデルです。
公道だけでなく、サーキット走行でもドライビングプレジャーを提供するモデルに仕上げられています。
ガソリンエンジン車の生産終了をアナウンスしたホンダだけに、このようなハイスペックのエンジンを搭載した中古車の高騰は避けられないのでしょう。
(文:萩原 文博/写真:M-TEC)