タイヤはかなりデリケートな製品!知っていて損は無い寿命の伸ばし方

■タイヤの“賞味期限”は約4年

日頃から愛車のボディをピカピカにしているのに、タイヤには無関心…なんてことはありませんか?

経年変化でタイヤのトレッド部に細かいヒビ割れが発生している

タイヤは走行時に路面からの衝撃を吸収してくれる、正に「縁の下の力持ち」ですが、ともすると点検を怠りがちなパーツでもあります。

各種情報によると、タイヤの賞味期限は製造後、約4年程度とされており、倉庫で保管しているだけでも経年劣化が進むそうです。

走行による磨耗に加え、経年でゴムの中に練り込まれている油分が抜けたり、再架橋と呼ばれるゴムの劣化が起きるためで、使用環境によっては製造3年目頃からタイヤブロックの付け根やタイヤ側面のサイドウォールなどに細かなひび割れが見られるようになります(画像参照)。

中でも深いヒビが発生している場合は、ゴムの劣化に加え、内部のワイヤーが切れていたりする可能性があり、バーストの発生要因になるため危険です。

●タイヤ溝が半分以下になったら要交換。“スリップサイン”が出たら使用禁止!

乗用車のタイヤには道交法により、摩耗限界が示されており、残溝量が1.6mmになるとタイヤ溝の一部に「スリップサイン」が表れる構造になっています。タイヤ側面に数箇所設けられた「▽マーク」の延長線上にスリップサインが設けられており、1ヵ所でも出現すると車検に通らなくなります。

同サインは文字通り、雨天時などに「スリップ」する危険性が高まるために設けられており、一般的にはタイヤの残溝量が新品時(通常8mm)の半分(4mm)以下になったらタイヤ交換を考えた方が良さそうです。

というのも、タイヤ溝は、排水機能を持っており、残溝量が半分以下になると、排水性能が低下して、高速道路走行中に路面の水膜上を滑空する「ハイドロプレーニング現象」が起き易くなるためです。

ノギス後部の「デプスバー」でタイヤ溝の残量を測定

こうなると、ハンドルが全く効かなくなるほか、ブレーキング時の制動距離が大幅に伸びて非常に危険です。

日常点検でタイヤ溝の深さをチェックするには、ノギス後部の「デプスバー」を利用すると容易に測定できます。数値が表示されるデジタルノギスなら、より正確に溝深さを測定することができます。

●タイヤのココを見れば製造日がわかる

タイヤ側面に製造時期やスリップサインの位置を示す▽マークが表示されている

2000年以降のタイヤにはタイヤ側面(サイドウォール)に製造番号が記載されており、下4桁の数字が製造年・週を示しています。画像の場合、最初の2桁の数字「24」が製造週(24週)を、後半の2桁の数字「17」が製造年(2017年)をそれぞれ表しています。

●日頃の空気圧点検がタイヤの寿命大きくを左右する

タイヤは適正な空気圧を維持することで、本来の乗り心地や走行性能を発揮します。その構造上、自然に空気圧が低下するため、少なくとも1回/月を目安にクルマに合った最適空気圧に調整する必要があります。

タイヤは暖まると熱膨張で空気圧が高くなるため、冷えている時に測定します。運転席ドア開口部や給油口などの目立つところにメーカーが車両ごとに指定している「車両指定空気圧」が記載されているので確認しましょう。

タイヤの空気圧が高過ぎても低過ぎても偏磨耗発生の要因に

また、指定空気圧に対して高過ぎたり、低過ぎたりすると、偏摩耗を起こしたり損傷を受け易くなるので危険です。

空気圧が高い場合の不具合としては、乗り心地の悪化やセンター磨耗、キャッツアイや縁石へのヒットなどによるカーカスコード切れ、バースト発生の可能性があり、逆に低い場合は、タイヤショルダー部の片減りや発熱による損傷、ハイドロプレーニング現象の発生、燃費の低下などが考えられます。

極端に空気圧が低い場合、走行時にタイヤが波打つ「スタンディングウエーブ現象」が発生してバーストにつながる危険性もあるため、指定空気圧を維持するためにも、日頃の空気圧チェックがかかせません。

●「ローテーション」で磨耗を均一に

偏磨耗を防ぎ、タイヤ溝を少しでも長持ちさせるには、5,000km走行毎を目安に前後タイヤの位置を入替える定期的なタイヤの「ローテーション」が重要になります。

FFやFRなど駆動方式の違いや、タイヤ自体に回転方向の指定がある場合は注意が必要です。

●タイヤの保管にも配慮が必要

タイヤは保管方法でも寿命が大きく変わる特性があります。車両から外したタイヤを雨の降りかかる湿度が高い場所に放置すると、ゴムの変質が早まるとともに、内部のスチールコードが劣化します。

また陽の当たる高温下や紫外線の強い場所に長期間置くと、ヒビ割れなどの劣化が起きるため、カバーをかけて涼しい場所に保管する必要があります。タイヤワックスなどの油分を嫌うため、保管時は拭きとっておくようにしましょう。

ホイール付きの場合はタイヤを横にして置くことで、接地部の変形や劣化を抑えられます。

●安全運転でタイヤも長持ち

急ブレーキや急ハンドルに加え、ハンドルの据え切りは、タイヤを摩耗させる原因になります。余裕を持ったブレーキやハンドル操作は安全運転につながると同時に、タイヤ寿命も延ばします。

以上のように、タイヤは想像以上にデリケートな性質を持った製品であり、特に炎天下への長時間駐車が伴う場合などには、安全面の観点からも日頃の点検が重要になるので注意が必要です。

Avanti Yasunori

【関連リンク】

DUNLOP(タイヤの点検)
https://tyre.dunlop.co.jp/tyre/products/tyrecheck/

GoodYear(タイヤの点検・保管)
https://www.goodyear.co.jp/knowledge/

この記事の著者

Avanti Yasunori 近影

Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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