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■外気導入時に続き、内気循環時のエアコン水の排出量を調べてみた!
前回は、エアコンから出ている水は、いったいどれほどの量が出ているのかという実験をしました。
結果は10分ごとほぼ均等に約200ccずつ排出し、60分弱で1000cc溜まるというものでした。ただし、このときは、一貫して外気導入で行ったときのもの。
次から次へと入ってくる外気の湿気を取り除くわけですから、単位時間に出る水の量が一定なのは当然のことです。
では、内気循環にするとその量に違いは出てくるのか?
またも猛暑の中、誰の役に立つのか、そして知ったところで何の糧になるのかわからないけど、「誰かがやらなきゃわからないバカ実験」の続編です。
●実験方法
前回は、上半身送風、A/C ON、ファン最強、温度最低、そして外気導入で行いましたが、今回は、初めの4つはそのままに、内外気切り替えを内気循環したことと計測の方法が異なります。
採った方法をあらためて記します。
1. クルマの下のエアコン水の落下場所に1Lの計量カップを置く。
2. エンジン始動、同時にエアコンも入れる(上半身送風、温度最低、ファン最強、内気循環)。
前回、外気導入実験での「方法」での3番めに「水が100cc増えるごとの時間を測る、10分ごとに増えた量を測る、のふたとおり」としましたが、今回はこれを変えました。その理由は後に説明します。
実験車両が前回と同じ旧型ジムニーシエラなら、マニュアルエアコンで「25度」「28度」といった数値的な温度設定ができないのも前回同様です。
クルマのエアコン水ドレーンの先に延長ホースを施します(理由は前回記事参照)。
内気循環は、室内の空気を空調ユニット内に通過&結露させ、水を排出するわけですから、すべての室内気の水分の凝縮が終わった時点で水は出なくなるだろうという推測を立てました。
この推測どおりにいくのかどうか? さあ、はじめましょう!
●冒頭から意外なことが…
エンジンをかけると同時にA/Cをオンにします。コンプレッサーがまわり、冷気が出始めます。
外でしゃがみ、エアコン水のドレーンを観察。前回外気導入時は「待てど暮らせど水が出る気配はなく、出始めたのはオンから8分42秒も経ってから」と書きましたが、今回はその比ではありませんでした。
「A/Cを押し忘れたか?…いや、さっき確かに冷たい風が出ていたから違う」
「まさか追加ホースのバンドを締めすぎて水が室内であふれているのか?」
あわてて確認しても、すべてのセッティングにまちがいはありませんでした。
ミーーーーーン、ミーーーーン、ミーーーン、ミンミンミンミン・・・・・
エンジンやコンプレッサーの音とは別に、炎天下の実験の場をセミの鳴き声が覆い尽くします。
ふとあらためて思う。ん? セミの声を長時間、こんなにじっくり耳にしたのは小学生以来のことではなかったか。身体中から汗がにじみ出る中、あの頃の夏休みの終盤、宿題に追われるという嫌なシーンが頭の中でよみがえります。
「毎年毎年、両親に怒られながらたまった宿題をかたづけていたっけなあ…」そんなつぶやきの自分の声でふとわれに返り、さらにまた観察していると、やっと水が出てきました。開始=エンジン始動&エアコンONから、実に53分51秒後!
実験は、外気導入時とはまた異なる流れになるだろうという予測があったとはいえ、予想外だった外気導入の8分42秒をはるかに凌駕する、53分51秒もの時間がかかるとは思いもよりませんでした。
最初の瞬間は外気導入と同じで、「がまんしていたおしっこがこらえきれなくなり、バシャーッ!」と出た水が、まず25ccほど排出というものです。
このクルマの場合、エバポレーター内のどこかに、ひとまず25cc分の水を溜める受け皿があり、そこからオーバーフローした時点で初めてドレーンに向かう構造になっているものと思われます。だから、外気導入、内気循環、どちらのときでも最初のひと吹きの量(25cc)は同じなのでしょう(あくまでも推測)。
問題はその後でした。
●こんなに遅くて少ないの? 内気循環でのエアコン水
外気導入時は最初に25cc落ちてから12秒ほどで一気に50ccにまで達しましたが、今回の内気循環は、最初に落ちる量が25ccほどなのはそのままに、50ccに到達するまで、その後16分13秒もかかったのです。
開始から実に76分でやっと50cc。その後の様子を見ても、水滴の落ちるスピードがまるで遅い! 外気導入時は、初めのひと吹きを経るや、その後ははずみがついて「ポタッ、ポタッ、ポタッ」と実にリズミカルに、計量カップの水面も常にゆらめきを忘れない落ち方だったのですが、内気循環となると実にゆっくりです。
文字にすると、
「ポタッ・・・・・・・・・・・・・、ポタッ・・・・・・・・・・・・・、ポタッ・・・・・・・・・・・・・、ポタッ・・・・・・・・・・・・・」
ね? 読んでもイライラしてくるでしょ?
カップの水面は、次のひとしずくがやってくるまでの間に静止してしまうほど、1滴と1滴のインターバルが長いのです。
もう水は止まったのではないか。そう誤認しかけたほどのんびりしたもので、約10分ごとに200cc前後ずつ増量していった外気導入のときとはえらい違いです。
1300ccの普通車といえど、もともとは軽自動車、それも1998年時のラダーフレーム付きのオフロード4駆。エンジン縦置き、太いタイヤによるホイールスペースの室内への侵食で、2021現在のスペーシーな軽と違い、キャビンは至って最小限。
準じて室内気も少ないわけですから、空調ユニット内を室内気がたった1回巡ってしまえば、ある時点からほとんど水が出なくなるのは当然の道理なのでした。したがって、実験前の推測は正しかったということになります。
それにしても今回の内気循環、このペースのままでは、実験が終わるのは秋の紅葉の頃という気がしてきたので、急遽方針を変えることにしました。
●方針変更!
この実験の構想段階では、外気導入時と同じく「10分ごとの増量cc」「100ccごとに増量する時間」のふたつを測るつもりでいたのですが、内気循環での実験があまりにスローペースであることから、一定時間ごとの増量計測はやめ、50ccごとの増量時間だけの記録に変更しました。
しかし、そのままでは秋になってしまうので、「空調モードは内気循環のまま、100cc増量するごとに助手席ドアを開閉するとどう変化するか」というやり方に変更です。
外気導入では増量スピードが高いため、時間計測は50cc増ごと、ドア開閉は100cc増ごと…やっているほうもだんだんややこしくなってきました。
内気循環とは文字どおり「室内気を空調ユニットに取り入れること」と書きましたが、その吸込口は助手席の足元にあります。ゆえに開閉するのは助手席ドアにしたわけです。
クルマをお持ちの方は、計器盤助手席側の下をのぞいてみてください。
空調ユニットには内外気切り替えのドアがあるのですが、これは外気導入時は足元から見える側を閉じ、内気循環時はこちら側をオープンにして外気流路側を閉じ、外気をシャットアウトするというもの。
内気循環モードにして助手席ドアを開けて走るなどということは絶対になく、まさしく実験のための実験で、「誰の糧になるのかわからない」ものでありますが、やればやったなりに変化が現れました。
●実験結果と考察
今回の実験の結果を表にしたのがこちらです。
このままではよくわかりにくいので表にしました。前回載せた外気導入実験時のグラフとともにお見せします。
エアコンも外気を入れられると仕事が増えて張り切るようになるのでしょうか。
グラフを見ると、助手席ドアを開けるや、線の傾きは急になり、50ccから次の50cc増しである100ccになるまで6分、150ccになるまで9分と、最初の53分51秒とはうって変わってグングンと増えていくのがわかります。
そりゃそうです。空調パネルは内気循環でも、吸い込んでいるのは助手席ドア開口部を通過した外気なのですから。対して本当の外気導入時はほぼ一貫してグラフの傾きは一定でした。
ここでドアを閉じてみましょう。
グラフ線が少し緩やかになって次の50cc増し200ccに至るまで6分、次の250ccまでに至ってはやる気がなくなったのか、グラフ線の傾きはさらに緩やかになって17分もかかるようになっています。
再度ドアを開けるとまたシャキッとなって急傾斜に…ヤル気を出したり失ったりの様子を見ると、なんだかドアオープンが、除湿活動活性化のためのカンフル剤となっているかのようで、クルマのエアコンというよりは、感情を持つ生き物のように見えてきました。
ただし、10分ごとの水量の増え方が、外気導入時に対して全体的に少ないのは一目瞭然です。やはり本物の外気導入と、ニセ外気導入とでは、空気の取り入れ方が違うのでしょう。
そこから先、写真撮りでクルマの周囲を移動したり、カメラをセッティングしている間に50cc増撮影のタイミングが狂ってしまったのですが、その後のグラフ傾斜は、ドアを開けても閉めても一定になってしまいました。この理由はよくわかりません。気温が下がったゆえのなのか、どうなのか…?
そんなこんなで、内気循環でのエアコン、2時間超えの125分で溜まった水量は500ccがやっと。この時点で終了としました。
初めから終わりまでドアを閉めっぱなしにしていたらさらに少なく、時間もかかったはずです。
以上、60分で約1050cc、80分で約1150ccだった外気導入時とでは、内気循環でのエアコン水量はこーんなにも違っていました! というレポートでした。
最後に。
今回は実験のために長時間、内気循環にしていましたが、クルマの空調は「外気導入」が原則です。
常に車内気を外から中、中から外へを行うことで、室内気を新鮮なものにしておきたいためです。同じ空気を滞留させていると、乗員の吐息や汗で窓ガラスがくもるばかりか、二酸化炭素の濃度が上がり、眠気をもよおし、居眠り運転を招きかねません。
この現象は、乗員数が多くなるほど顕著に現れます。「内気循環」は、まずは急速に冷房・暖房をしたいときのほか、交通量が多い場所、工事現場、トンネル内など、ほこり、粉塵が舞うような場所に限定してください。
あと、いやな臭いのする場所。筆者は工事現場のほこりも去ることながら、アスファルトを掘り起こしているときのあのにおいこそを遮断するときに内気循環に切り替えます。あのにおい、強烈だもんね~。
クルマのエアコン、四季を通じてうまく内外気を切り替えながら使ってください。
もうひとつエアコン関連の実験を行うつもりなのですが、本稿を書いている時点で「災害級の大雨」のニュースが…次に炎天下の日がやってくるまでしばらく間が空きそう。いつになるかなあ?
(文・写真・グラフなど:山口尚志)