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■高級セダンを厳正テスト! キャデラック CT5 Platinum/トヨタ クラウン RS Advance 2.5HV/アルファロメオ ジュリア ヴェローチェ
●あえてドイツ車を外し、アメ車にイタ車と日本車を比較してみる
「チーム パルクフェルメ」は、利益を優先せず、優良かつ良質な自動車評論を展開することを目指したコンテンツ制作チームです。今回は、サイズ的にはミドルクラス、とはいえ価格は600万円前後という高級セダンの比較試乗をお届けします。
ではアンチドイツセダン比較試乗、まず1台目はイタリア車です。
●アルファロメオのFRセダンが帰ってきた!
アルファロメオ・ジュリアは2015年に本国デビュー、2017年10月に日本で発売されました。156、159の系譜を継ぐミドルクラス・セダンですが、駆動方式はFFからFRへと先祖帰りしています。
マセラティと共用するFRアーキテクチャープラットフォームをベースに、約50:50の前後重量配分、アルミやカーボンといった軽量素材の採用、整流効果を高めるボディ底面のフラッシュサーフェス化、アルミ製サスペンションを全車標準装備し、意のままに操れるドライブフィーリングを実現したとメーカーは主張します。
エクステリアは、フロントオーバーハングを可能な限り切り詰め、操縦安定性と安定感あるフォルムを実現。エンジンフードとフロントフェンダーに加えドアもアルミ製です。
レザーシートの奢られるインテリアには8.8インチタッチディスプレイの車載インフォテインメントシステム「Connectシステム」でナビやオーディオ、クルマのパフォーマンス情報など表示。これらはシフトレバーの手前にあるロータリースイッチでも操作可能です。
ドライブモードは、シャープなスロットルレスポンスやパフォーマンスを重視したDYNAMIC、市街地や高速道路での燃費性能と快適性をバランスさせたNATURAL、燃費性能を重視しグリップの低い路面での走行にも適するADVANCED EFFICIENCYの3モードがあります。
現在の日本でのジュリアのラインナップは、今回の試乗車である2リッター直列4気筒ターボ280馬力のヴェローチェ(598万円)と、2.9リッターV6ツインターボエンジン510馬力のクアドリフォリオ(1174万円)のふたつのグレードです。
トランスミッションはいずれもパドルシフトの可能な8速ATです。直近まで200馬力のスプリント(460万円)と280馬力4WDのQ4ヴェローチェ、190馬力のディーゼルスーパーもラインナップされていましたが、現在は受注終了となっています。
●飛ばすと分かる本性
試乗するべくアイドリング中のジュリアに近づくと、ディーゼル車のような音が聞こえます。もしやと思ってタコメーターを覗き見ると、レッドゾーンは5500rpmから。間違ってディーゼルスーパーを借りてきたかと慌てて給油口を確認してしまいました。ハイオクガソリン指定でした。
走り出すと、ノッキング音は嘘のように消え失せて静かなエンジンになります。これには8段ATも効いています。Dレンジで大人しく走っている限り、100km/hあたりまでは1700rpm程度までしか回りません。人間の耳にエンジン音はほぼ聞こえないと言ってよいでしょう。
低速でも頼り甲斐のあるトルクを発生させ、1500rpmからでもそっとアクセルを踏み込めばスムーズな加速が始まります。極めて操舵力の軽いハンドルと相まって、街中を快適に泳ぎ回ることができます。
エンジン音がしない分、ロードノイズは目立ちます。この辺りはさほど対策されていないようです。過大というほどではないにしても、そのボリュームは路面状況に左右され、音質も高級感を削ぐ類のゴワゴワした感じです。
乗り心地は今回の3者の中では硬めです。しかし角は丸められており、不快というほどのものでもないでしょう。ちょっとした路面の段差などは、剛性感のあるボディがしっかりと受け止めてくれます。ただし不整路面ではフロント40、リア35扁平の薄いタイヤに揺すられる感じがありました。
アルファらしく、少し飛ばしてみます。Dレンジでアクセルを床まで踏み込むと、レッドゾーンの5500rpmを軽々と通り越し、自動シフトは6000rpmまで起こりません。これはいったい、何のためのレッドゾーン表示なのでしょうか。かつての105系時代のタコメータ盤面のオマージュでしょうか。
高回転域のエンジン音は見事に調律されています。アイドリングでディーゼルかと勘違いさせたあのエンジンと同じとは、とても思えません。どこか懐かしさを感じさせる硬質な唸りは、軽快なアクセルレスポンスによってより魅力を増し、EVをどうにも受け入れ難いタイプのクルマ好きの心を揺さぶらずにはおかないでしょう。
ステアリングも強烈にクイックです。156からこのかたアルファ名物となった抜群の回頭性は、FRプラットフォームに切り替わっても健在でした。回頭性が俊敏だと後輪のグリップ力が心配になりますが、ドライ路面の一般道で飛ばすくらいならリアが唐突にブレークするようなそぶりは微塵も見せません。
むろん直進性に難を抱えるわけでもありません。どうしてこの世の自動車は、皆アルファのようなハンドリングにならないのでしょうか? クルマなんぞ全く興味ないこの世のほとんどの人々にとって、このハンドリングで何か困ることでもあるのでしょうか? なんてことに思いを巡らせながら走らせていました。
ジュリアの運転は楽しいです。今回の3車中最古参ですが、アルファに期待する通りのドライブフィールを今もしっかり味わわせてくれます。微低速域ではアクセルとブレーキ操作に対するマナーに若干の洗練不足を感じますが、解決法はあります。
簡単です。飛ばせばいいんです。かっ飛ばせばいいんですよ。ジュリアはそういうクルマです。我らの抱くブランドイメージを、彼らはとても正確に把握しているのです。
(文:チーム パルクフェルメ/写真:J.ハイド)
■SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高:4,655×1,865×1,435mm
ホイールベース:2,820mm
車重:1,630kg
駆動方式:FR
エンジン:直列4気筒ターボ
排気量:1,995cc
トランスミッション:8速AT
最高出力:280PS(206kW)/5,250rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2,250rpm
サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式(後)マルチリンク式
タイヤ:(前)225/40R19(後)255/35R19
燃費:12.1km/リッター(WLTCモード)
価格:598万円