目次
■年々増え続けるゲリラ豪雨と洪水、水没したときの対処法は大丈夫?
梅雨が明け、夏から秋へと季節は変わっていきます。特に大気の状態が不安定になりやすいこの時期、突然の大雨が降ることも。大雨で道路が冠水、さらには駐車しているクルマが洪水で水没という被害が少なくない季節です。今回は、クルマが水没した際に、自動車保険はどのように利用できるのか、解説していきます。
●水没で使える自動車保険の補償は?
自動車保険には大きく3つの補償があります。相手の人やモノに対する「対人対物保険」、自分自身や家族の身を守る「人身傷害保険」、そして愛車を守る「車両保険」です。このうち、水没被害に対して使用できるのは、車両保険となります。
車両保険には一般型(フルカバータイプ)と限定型(エコノミータイプ)がありますが、ゲリラ豪雨や線状降水帯の発生による大雨が原因でクルマが水没した場合は、どちらのタイプの車両保険でも、補償対象となることがほとんどです。
自動車保険で車両保険を契約する際に、免責金額(保険会社が責任を負わない金額)を設定することができますが、洪水による損害では免責金額が引かれることはありません。被害額に応じて、設定保険金額が支払われます。
また、洪水被害で自動車保険を利用すると、等級が1つ下がり、事故あり係数適用期間は1年となります。この期間は、保険料が割り増しされる仕組みです。
●水没したクルマは直せるのか
水没したクルマは、程度によって半損から全損という判定が下されます。一つの目安としては、車両保険の設定金額を水没修理金額が上回った場合は、全損という判断になるでしょう。これらの判断は、修理工場ではなく、保険会社が行います。
修理工場(自動車ディーラー)は、全損という判断はできないので、修理依頼があれば、水没車が走れるように、懸命に直してくれるでしょう。ただし、水没の度合いにもよりますが、エンジンや電気系統が水につかってしまった場合には、完全に元通りとはいかないことがほとんどです。
自動車ディーラーで勤務経験がある筆者。何度か、担当していたオーナーさんのクルマが水没被害を受けた経験があります。水没車を修理して、元通りに修理できる目安としては、座席のシートが水を被ったかどうかが、一つの判断材料となるでしょう。
フロアを超えて、シートの座面近くまで水につかってしまうと、エンジンルームや電気系統への被害も大きいことが予想され、修理後も予期せぬ不具合が発生しやすくなります。また、修理金額が大きくなり、修理期間も長期化することが予想されるでしょう。修理を担当するお店からも、水没車である旨の覚書などを交わしたうえで、修理後の不具合が起こることを了承して、ようやく修理着工となることもあります。
実際には、シート座面を超えて水没するケースでは保険会社が全損という判断を下し、修理着工するケースが少ないのが現状です。水没の程度を見極めて、修繕の可否をしっかりと相談する体制づくりも重要になります。
●水没後に保険が支払われるまでの流れ
ゲリラ豪雨や台風などで洪水が発生し、不幸にもクルマが水没してしまった場合、まずはレッカーサービスなどを利用して、安全にクルマを移動します。水没の程度を知るために、早急にクルマの修理を担当するディーラーや工場へ運ぶべきです。
クルマが水没したことを保険会社へ連絡し、保険会社にクルマの損害状況を確認してもらいます。また、同時に修理工場へは修理見積を出してもらいましょう。その後修理するのか、全損扱いで保険金を受け取るのかという判断になります。
入庫から修理可否の判断、そして修理着工し、完了まで待つとなると、スムーズにいっても約1ヵ月程度、場合によっては、工期がさらに長くなります。その間、愛車を使用することはできません。このような状況で役に立つのが、自動車保険の代車特約です。損害発生から修理期間、もしくは買い替えた場合は、次のクルマの納車までの間、レンタカーを手配してもらい使用することができます。もちろん利用費も、自動車保険の補償内です。車両保険を付ける際には、同時に加入しておきたい特約です。
●まとめ 自己防衛も大事
ゲリラ豪雨や台風などにより、近年は水害の発生数が増えています。低地や河川の近くで水害が多く発生するイメージもありますが、クルマの水没は低地でなくても発生します。地下駐車場や、出かけた先など、自宅以外の場所でも発生する可能性があるのが水没被害です。自動車保険で、しっかりとカバーし、万が一の水没被害にも対応できるような備えをしておきましょう。
(文:佐々木 亘)