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■デジタル化やインフォテインメントの進化がマル!
この数年でSUVのラインナップを増やしているフォルクスワーゲン(VW)。コンパクトな順に日本で販売されているモデルを紹介するとT-CROSSにT-ROC、そして今回紹介するマイナーチェンジを行ったTiguan(ティグアン)の3モデルがあります。
ティグアンは、日本の道路上ではスモール寄りのミドルサイズSUVであり、VWの他の2台のコンパクトSUVと比べても、後席やラゲッジスペースが格段に広く、サイズに見合った実用面の“実力”は◎。ちなみに欧州のライバル勢と比べてもパッケージングではティグアンが優勢です。
その上、確かなことはティグアンが色気(デザイン性)よりも実用や機能をカタチにしていること。
実は他の2台もボディサイズはT-ROCのほうがやや大きめなのに(スタイリッシュではあります)、ラゲッジはT-CROSSの方がやや広めだったりするのも、T-CROSSのほうが実用を重視した“カタチ”をしているからなんですよね。
なんてところにも注目しながら、VWのショールームのなかで新種のT-CROSSやT-ROCはもちろん、ティグアンの魅力も再認識しやすくなったのではないかな、と思うんです。比べて選ぶことができるようになったのですから。
●目力が力強くなったフロントマスク
では本題に入りましょう。ティグアンのマイナーチェンジのポイントは…
・デザインの刷新
・1.4Lターボエンジン→1.5Lターボエンジンに変更、トランスミッションも6速→7速DSGに変更
・最新の運転支援支援システムやコネクティビティ機能の採用
・VWでは初となるハイパフォーマンスモデル「ティグアンR」の設定
エクステリアデザインは、新しいLEDライトの採用によるイメージチェンジが特徴。
力強い目力が与えられ、それと共にラジエターグリル形状にも厚みが増し、キリッとした精悍さに華やかな印象が加わっているように見えます。ちなみに、LEDライトは2種類あり、ベーシックグレードのActiveを除くElegance、R-Line,ティグアンRには“IQ.Light”なるマトリックスヘッドライトが採用されています。
これはフロントカメラで対向車や先行車を検知し、32個のLEDが内蔵されたライトが個別に配光や照射を制御します。
リヤもLEDライトの変更がデザインの特徴ではあるけれど、さらに細かいことを言えば“TIGUAN”の車名がVWロゴの下=中央に配置されるようになったことも新型のポイントです。
さらに、流れるように点灯するダイナミックターンインジケーターも装備。周囲からの視認性も向上し、予防安全に繋がる性能パーツが採用されたことになります。
●車両設定も直感的にOK
インテリアは今回、最新の技術や機能を搭載することで、見映え的にも新しさを抱くことができるのではないでしょうか。
新世代のインフォテインメントシステムや3ゾーンフルオートエアコン、液晶デジタルメーター、タッチセンサー式のマルチファンクションステアリングホイールなど(R-LineとRに標準装備)により、操作性の向上を図るべくスイッチ類も最新のデザインを採用。スクリーン画面も十分なサイズをセンターコンソールやメーターに採用し、カラフルでシンプルです。
今回試乗したR-Lineには格子柄のシック&スポーティなシートが採用されていました。縁にはパイピングが施され、このような細かなディテールにデザイン的な質感の向上ぶりもうかがえます。そして立体的な形状のサポート性も申し分なし!
ちなみに、デジタルコクピットを採用するクルマが最近急増していますが、「細かな車両設定が便利なようで面倒なようで……」、なんて思うことはありませんか? VWでは新インフォテインメントシステム&デジタル化をT-CROSS、T-ROC、マイナーチェンジしたポロやパサート、そしてティグアンと続々と採用を進めているのですが、個人的にはドライバーアシスト(フロントやレーンアシストなど)の設定画面にカラフルなグラフィックを採用している点が◎。
“設定したいこと”をグラフィックにタッチすればできるという、使い易さというか“使い優しさ”に惹かれます。車線中央を維持して走行するACC設定がボタン一つで行える“Travel Assist”機能は、この新型ティグアンから採用されたのだそう。
また、スマートフォンでドアロック&解除や目的地設定、速度制限アラートなどが行える繋がる新サービス“We Connect”のほか、Apple CarPlayやAndroid Autoを使ったコネクティビティ機能も進化しました。少し前のVW車を知る方にとっても、かなり進化した印象を抱くかもしれません。
●走りやすさはますます軽快でスイスイ
最後に、今回新搭載された1.5Lターボエンジン+7DSGの走行フィールをご紹介します。
まずはこのエンジン、これまでの1.4Lターボエンジンの250Nmのトルクは同等としながら、パワーは10psアップの150psとなり、トランスミッションも6速DSGから7速DSGになったことで「適ギヤ適走行」が可能になっています。
しかもVWは2種類の7速DSGを持っていて、今回ティグアンにはより大トルクをサバくタイプが採用されているのだとか。欧州ではトレーラーやボートなどを牽引する方が多いというのが理由だそうです。
R-Lineは専用のバンパーや19インチアルミホイールを装着。乗り心地にも響く印象はなく、静粛性についても加速時、遠くにエンジン音が聞こえる程度。高速道路で一定走行をしている間などは極めて静かでした。
1.5Lターボエンジンと7速DSGを搭載したことで得られた動力フィールは軽快さを伴う走りやすさが印象的です。ティグアンはMQBというプラットフォームを採用して、ボディのしっかり感が特徴。それにサスペンション、タイヤが装着され、ドライバーの加速やブレーキ、ハンドル操作が路面に伝わるわけですが、フリクションやタイムラグのないクルマの動きからカッチリとした走行フィールが得られました。
以前も不満はなかったのですが、走りやすさについてはますます軽快でスイスイ。だからといって、軽薄な印象ではなく、芯はしっかりとある走りに、背の高いSUVであっても安心感を抱くことができるでしょう。
ただ、ステアリングは個人的に少々軽めな印象。そこでドライブモードの個別設定でパワートレインは“ノーマル”、ハンドルは“スポーツ”にするくらいが好みでした。
デジタル化やインフォテインメントの進化、そして新たなエンジン+トランスミッションの搭載によるドライブフィールの向上が、ティグアンの新しさを特に印象づけており、同時に洗練されたインテリアがマイナーチェンジモデルの魅力度をアップさせています。
このような表現が良いかどうか…ではありますが、パッケージングに優れる実用性と走行性能+環境(燃費)性能、を軸に、確かな信頼感とともに無難なSUVを選ぶなら、新型ティグアンは全方位で安心感と頼もしさの抱けるモデルではないでしょうか。デザインもカッコよく洗練度も増したし……ね。
(文:飯田 裕子/写真:井上 誠)