■車体寸法を変えずにどこまでカッコよくできるか?
2021年6月6日(日)に富士スピードウェイで開催された「FUJI 86 STYLE with BRZ 2021」で、新型GR86のエアロパーツ「GRパーツコンセプト」装着車が展示されました。
車体寸法を変えない範囲でより効果的な空力特性を得るために市販を前提で開発されたGR86のエアロパーツ。
フロントスポイラーからサイドスカートの空気の流れは一体で考えられているとのことで、両方を装着することで適度なダウンフォースと整流効果を得ることが出来るとのこと。また、車体寸法を変えない範囲といいながらも、見た目はかなり精悍な印象を与えています。
スポイラー類はバンパーと同じ樹脂素材を使っており、衝突安全性にも配慮した設計がなされています。
リアスポイラーはトランクリッドにつけるダックテールタイプで、ノーマルのテールエンドのラインを拡張した違和感がないながらも大胆な造形となっています。
このダックテールスポイラーやリアエアロバンパー、サイドスカートなどの装着により、「GRパーツコンセプト」装着車はリアからの眺めが格段にカッコよくなっていると感じます。
■コンセプトモデルのためのコンセプトモデル?
「GRパーツコンセプト」装着車の隣にはもう一台、ワイドボディなうえにフロントスポイラー類が延長されたエアロバンパーを持つ、まるでチューニングカーショップが東京オートサロンのために作るような超過激なモデルも展示されていました。
このGR86はエアロパーツを開発する際に、全ての制約を取り払って性能とデザインを追求してみたらどうなるか?というスタディーモデルとして制作されたもので、いわばコンセプトモデルのためのコンセプトモデル、ということになります。
「制約を取り払った」ということでかなり過激な造形となります。特にフロントバンパースポイラーは元々のフロントグリルの位置から大きく前に張り出しています。またルーフもカーボンとなっています。
フロントもリアもワイドフェンダーとなり、そこをつなぐサイドスカートもかなり大型化されています。
ワイドフェンダーとなればリアスポイラーもGTウィングとなるのは必然。ダックテールタイプではボリューム感が足りません。
コンセプトモデルのためのコンセプトモデルということで取付方法や材質も市販前提の設計では見られないような大胆なものとなっているのが印象的。
特にリアデュフューザーの造形はチューニングショップのオリジナルでも見ることが出来ないような奇抜なものです。
これらのパーツのすべてがカーボン製となっており、さすが制約を取り払ったスタディモデルだな、と思っていましたが、実はカーボン素材を使うのには違う理由があります。
市販前提のパーツは大量生産に向いたインジェクション成型という手法で作られるために金型に非常に高いコストがかかります。しかしコンセプトモデルやスタディーモデルでは形状の微調整などが出てくるために金型にコストをかけるわけにはいきません。
カーボン素材は貼り合わせて造形するために型にかかるコストが抑えられるうえに、テスト走行でも耐えうる強度が出せる、ということで採用されている側面もあるとのことです。
理由はどうあれ、やはりカーボンパーツはカッコいいですし、ワイドフェンダーもさすがメーカーデザインだけにきれいにまとまっています。そしてカーボンルーフとGTウィング。
このコンセプトモデルのためのコンセプトモデル、コンプリートカーで発売となれば夢が膨らみますが、今のところは販売の見込みは無い、と断言されてしまいました。
それでも、こんなスタディを作ってから市販前提のエアロを開発するという手の込んだ手法のGRパーツは、GR86が発売されたらまずチェックしたいところです。
(写真・文:松永和浩)