■ポルシェカレラカップジャパン 2022年シーズンにフル参戦することが購入条件
ポルシェジャパンは、2021年6月9日、「ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)」の競技車両である「911 GT3 Cup」(タイプ992)の購入申し込みを開始しました。なお「911 GT3 Cup」車両は、「PCCJ 2022年シーズン」にフル参戦することが義務付けられます。
最新世代になるタイプ992の「911 GT3カップ」は、現行型911のタイプ992をベースにした最初のレーシングカー。ワイドなターボ仕様ボディを備えたワンメイクカップ用マシンになります。
先代991から25PS超となる375kW(510PS)の最高出力を発生しながらも合成燃料の使用が可能なため、レース条件下でのCO2排出量を大幅に削減することが可能だそう。ラップタイムは、サーキットのレイアウトに応じて1%まで短縮するとしています。
新型911 GT3カップは、2018年デビューのタイプ992の911カレラをベースに2019年初めに具体的な開発をスタート。
主な開発目標は、時間とメンテナンスの費用を抑えながらパフォーマンスを向上させ、さらにアグレッシブなデザイン、より素直なハンドリング、優れた耐久性を確保することで、これまでと同じくシュトゥットガルトのツッフェンハウゼン工場にて市販仕様の911と同じラインで生産されています。
「911 GT3カップ」の最大のトピックスは、最適化されたエアロダイナミクスと、力強さに満ちたエクステリア。カップカーに初めて採用されたワイドなターボ仕様の軽量ボディも見どころです。全幅は先代を28mm上回る1902mmで、ホイールの前に追加された冷却空気のインレットも目を惹きます。
さらに、フロントアクスルも大幅にワイドになり、フレアフェンダーの追加により、フロントアクスルは1920mmにワイド化。これにより、フロントに12インチ幅のリムとリヤに13インチのホイールとタイヤの組み合わせが可能になっています。
同時に、第7世代のカップカーは、空力ダウンフォースを大幅に増加させています。大型リヤウイングを備えたリヤスポイラーとレースに適合されたフロントエプロンの組み合わせによるものだそう。「スワンネック」マウントを備え、11段階の調整が可能なリヤウイングは、連続したウイング下のエアフローを実現。空力効率の改善は、特に高速コーナーでの安定したハンドリングをもたらすそうです。
取り外し可能なルーフのエスケープハッチは最新のFIA基準に準拠しています。さらに、すべてのウインドウは、軽量ポリカーボネート製で、傷のつきにくいハードコートグレージングが施されています。ドア、エンジンフード、リヤウイングは、カーボンファイバー強化プラスチック製。
一方で、独特のエアアウトレットダクトとセンターエアインテークを備えたフロントフードは、911カレラと同様にアルミニウム製で、アクシデントの際の修理費用を抑制します。
インテリアには、新しいレーシングシートが用意され、角度に加えて2段階の高さ調節が可能。調整可能なステアリングコラムとの組み合わせで、体型を問わず理想的なポジションが得られるそう。
また、さまざまな厚さのパッドにより、シートを各ドライバーのニーズに合わせることもできます。再設計されたオープントップのカーボンファイバー製モータースポーツマルチファンクションステアリングホイールは、「911 GT3 R」から用意されています。
ドライバーからのフィードバックを反映して、イルミネーテッドスイッチも再配置されています。右側に10個の大型スイッチを備えたラバースイッチパネル(RSP)は、ポルシェ919ハイブリッドのコントロールエレメントを連想させます。レース中の暑さの中でも使いやすいこれらのスイッチには、照明や換気、ドライからウェットへのタイヤの設定変更などの機能が割り当てられています。
ブレーキバランスの調整は、ブレーキ圧の増減の必要に応じて、RSPの右外側にあるロータリースイッチを使い、進行方向に対して直感的に制御することが可能。さらに、中央に配置された10.3インチカラーモニターも刷新されています。エンジン回転数の横に、水温と油温、使用中のギア、エラーメッセージ、あるいは雨天時の「ウェット」などの重要なベースライン設定情報が表示されます。ドライバーとレースエンジニアが同じ情報を見ることができるように、データの読み出し後のディスプレイとコンピューターモニターの両方のデザインが一致。各セッション後の分析に役立ちます。
電子機器では、約700の診断オプションを利用することが可能。専用ソフトウェアは、すべての情報を理解しやすく明確に要約され、ABSやトラクションコントロールなどの車両機能もシステムに保存されています。 さらに、モータースポーツコントロールユニットとデータロガーを助手席足元から右側リヤコンパートメントに移動。同乗走行が必要な際などは、助手席に設置することができます。
リヤサスペンションは、市販モデルから基本的に変更されていませんが、フロントは「911 RSR」と同様に、ダブルウィッシュボーンとユニボールベアリングによって制御されます。ダンパーは、横方向の力を受けずに軸方向の力のみを受けるようになり、さらに精確なターンインが可能になり、フロントアクスルの感触が向上するそう。ダンパーも「919ハイブリッド」と「911 RSR」から最先端のバルブテクノロジーが受け継がれています。
さらに、初めて「911 GT3カップ」に完全電気機械式になるパワーステアリングが採用され、油圧ポンプと関連の油圧ラインが不要になっています。
パワートレーンをチェックすると、新型「911 GT3カップ」も初代カップカーと変わらず、NAのレーシングエンジンを搭載。ドライサンプ潤滑方式を備えた高回転ユニットの水冷式4.0L水平対向6気筒エンジンは、先代の7500rpmより高い8400rpmで最高出力375kW(510PS)を発生。レブリミットには850rpmで達し、6150rpmで470Nmの最大トルクを発揮します。
2つのレゾナンスフラップを備えたシングルスロットルバタフライシステムは、よりダイレクトなレスポンスを実現し、触媒コンバーターレーシングエグゾーストシステムとの組み合わせで、荘厳なサウンドを奏でるそう。また、レーシングシリーズ、レギュレーション、サーキットに応じて、3種類のエグゾーストシステムから選択することができます。
Bosch製の「MS 6.6」電子制御エンジンマネジメントシステムも装備されています。 先代と同様、同エンジンは、100時間の走行後にメンテナンスチェックを行うだけで済みます。エンジンは、シングルマスフライホイールと3プレート焼結金属レーシングクラッチを介して、72kgの6速ドグクラッチ式シーケンシャルギアボックスに接続。ステアリングホイールのパドルシフトを介してギヤシフトが行われ、60時間のレース後にギヤボックスの「マイナー点検」が必要になります。
これは、「ポルシェ・モービル1スーパーカップ」の約2年に相当するそう。120時間のレース後に大規模なオーバーホールを予定。さらに、シフトバレルアクチュエーターは、従来の空気圧ユニットに代わって、電動サーボモーターによって作動します。迅速なギヤシフト、ライブ診断のオプション、およびギヤシフトエラー時などの損傷リスクの低減させることができるそうです。
「911 GT3カップ」の価格は、3465万円(左ハンドル)。購入を希望する場合は、6月23日(水)までにポルシェカレラカップジャパン事務局に問い合わせのうえ、所定の車両購入申込書で申し込む必要があります。また、販売台数に限りがあるため、希望に沿えない場合もあるそうです。
(塚田勝弘)