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■一時は全車周回遅れにする快走を見せた#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3だった!
●366周目、悪魔襲来…電気系トラブルは想定内!? 原因対処するも追い上げには時間が足りず、最後は表彰台狙いに!
2021年5月23日(土)~24日(日)に行われたS耐名物、『スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC富士SUPER TEC24時間レース』。23日午後3時にスタートし、翌24日午後3時にゴール!という、文字通り「24時間走りっぱなし!」のレースです。
2018年からS耐シリーズの1戦として開催されている富士24時間レース。ちなみに「スーパーテック」は大人気だったセミ耐久ツーリングカーレース「インターテック」の名残?オマージュ?な名称です。
我がクリッカーで試乗ドライバーを務める元F1レーサー・井出有治さんは、昨年2020年はTCRクラス・シビックTCRで参戦。台風襲来の中、クラス2位表彰台でした。
今年のS耐は最高峰クラスST-Xに、チーム・Floral Racing with ABSSA/#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3(マクラーレン720S GT3)で参戦。ということは、総合優勝も狙えるクラスです。ということで、富士24時間でも総合優勝を狙いましたが…。
24時間も走るのですから、そりゃ~ノントラブルなんていうのは奇跡のようなもの。そんな過酷な井出有治選手&マクラーレン720S GT3の24時間を追ってみます。もちろん、ドライバー・井出有治選手の「実はこんなことが…」なコメントもいただきました。
ちなみに井出選手、Rd1もてぎは雨のため乗る前にレース終了、Rd.2 SUGOはレースでは乗る予定が無かったため、今回のRd.3富士がマクラーレンGT3での決勝初走行なんですよ!
●#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3のスーパー耐久・富士24時間レースをざっくりプレイバック!
【予選】5月21日(金)
5月21日(金)に行われる予定だった予選は、雨天により中止。それまでの2戦のポイントランキングによりスタートグリッドが決められました。井出選手の#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3はRd.1もてぎ=2位、Rd.2 SUGO=3位でランキングは3位。が、今回のRd.3富士にはランキング2位のポルシェが不参加のため、決勝は繰り上がって2番手からのスタートです。
●序盤は快調! トップを快走し続けた!!
【START~】22日(土) 15:00 スタート
スタートドライバーは植松忠雄選手。後ろの#9 MP Racing GT-R松田次夫選手が背後に迫り、LAP2では3番手に、LAP4には#999 CARGUY NSX-GT3にも先行され4番手へ。1分43秒~45秒台でラップを重ねる中、#777 D’station Vantage GT3のドライブスルーペナルティからLAP28には3番手へ。
【LAP40】22日 16:12頃
初ピットイン、ドライバーを井出有治選手に交代し…ていたら、FCY(フルコースイエロー)発令! FCYとは『全車追い越し禁止・50km/h制限・ピットイン不可』。
しかし、#290にとってはタイミングよくピットイン中にFCYとなったため、ピットインによるタイムロスは断然有利に! また、FCYは全車が50km/h制限になるので、車間が縮まらない、というのも好ポイントです。FCYはすぐに解除され井出選手コースイン。5番手まで下がったものの、LAP42で4番手、LAP43で3番手、LAP44で2番手まで浮上! 他車続々とピットインする中、LAP46ではついにトップへ! 1分41秒~43秒台をキープし、LAP75には全車ラップ遅れとする快走です!!
「マシンのバランスは良いので、あまり無理をせずに、他のクラスのマシンたちを丁寧にパスして行けば良いカタチで次に繋げられます」(井出)
【LAP77】22日 17:17頃
井出選手から植松選手へドライバー交代のためピットイン。この1周前に#777によるクラッシュが発生、またもFCY発令か?を見越しての戦略的タイミングもあってのピットインです。翌LAP78にやっぱり出されたFCY、その間にピットアウトした#290はトップをキープしたままコースへ! LAP98には3番手以下を周回遅れに。そんなときのLAP110、コース上で場所により雨がパラついてきたとの情報が…LAP111の1周だけ1分50秒台に落ちたのはそのため? が、すぐに雨は止んだ模様です。
【LAP114】22日 18:29頃
澤圭太選手へドライバー交代。#999に抜かれ2番手へ下がるも#999のピットインによりLAP119には再びトップへ。LAP121最高速(メインストレート終わり地点)は276.3km/h、速い! LAP145では4番手以下を2周の周回遅れにするなど、快調にトップをキープし続けています。
【LAP158】22日 19:50頃
4回目のピットイン、川端伸太朗選手へ交代。LAP165で#31 LEXUS RCF GT3のコース上停止などでFCYが発生するなどもありましたが、変わらずトップを快走、最高速は278.4km/hも。LAP201で5度目のピットイン、ドライバーは引き続き川端選手。
「実は、この辺りから電気系にトラブルが出ていたんです。縁石に乗るとシャットダウン! でも2~3秒すると再びエンジンがかかる…という症状が出始め、だましダマシの走行を強いられていたんですよね…」(井出)
【LAP244】22日 22:22頃
スタートから8時間…しか経っていない頃、6度目のピットインで井出選手へ交代。直後のLAP251でFCYから救急車がコースイン、セーフティカーも入ります。LAP257でセーフティカーが離れ、再スタートとなる隊列先頭の#290井出選手の駆け引きスタートはさすが! その後LAP272にFCY、直後に解除。
「この時の再スタートでは、セーフティカーがピットへ入るタイミングと、2位の#999との間に入っている他クラス(10数台)を上手く利用すれば、1周目に大きくマージンを広げられるだろうと思ったけど、それが大成功しました!!」(井出)
【LAP291】23日(日) 0:00頃
ちょうど日付が変わった頃、澤選手へ交代のためピットイン。この辺りでスタートから9時間。淡々とトップをキープしつつ、1分42秒~45秒で周回を重ねていきます。
【LAP331】23日 1:14頃
ここでピットインし、原因不明の電気系トラブルが発生している理由を探りつつ、レギュレーション上の義務であるブレーキローター交換(作業時間10分間以上)へ。そして、また幸運にもこの間にFCYも発令、14分弱のピットイン作業の後、川端選手へドライバー交代、3番手でコースイン後にFCYも解除。1分43秒前後で周回を重ねていきます。
「ここまで内容的には完璧に近いカタチでレースをリードしてきたけれど、ここで試練が来たか…。しかも、原因が見つけにくい電気系のトラブル(涙)。 それになぜか、ボクが乗るときにはその症状が出ない…。『縁石に乗るとシャットダウンする』って川端選手も澤選手も言うんです。でも、ボクも星野一義バリにガンガン縁石乗って(跨いで?)攻めていたんだけど…なんでだったんだろ?」(井出)
【LAP363】23日 2:25頃
9回目のピットイン…やはり電気系に不安が。しかし、コレといった原因がつかめぬまま再度、川端選手でコースインしていきます。
●スタートから11時間半後、最大のピンチ襲来!
【LAP366】23日 2:31頃
あれ……ストレートに戻ってこない!?と思ったら、#290は最終コーナー手前でストップ、エンジンが完全にシャットアウト…という重大な電気系トラブルが発生してしまいます。最終コーナー内側のパークフェルメ(リペアエリア)で原因究明~ピットへ戻っての作業で約2時間ものロスとなり、順位もクラス5番手へとダウンしてしまいます。
「川端選手は爆弾(電気トラブル)を抱えながらも、なんとか誤魔化しながら走ってくれていたけど、ついにストップ…オーマイガッ(涙)! でも、諦めずに最後までレースを続けようと、メカニックたちによる必死の修復作業をする姿を見て『自分も頑張ろう!』と思い、自身を奮い立たせました」(井出)
【LAP367】23日 4:30頃
スペアカーからのパーツ移植後、再スタート!『松本恵二、最後の弟子』川端選手は夜明け前、ハイペースで追うもLAP371で#31の車両炎上によりセーフティカー導入。オイル処理なども行われた後、LAP381でリスタートが切られます。このとき5時17分、トップの#81からは70周差ですが、川端選手はLAP384で#290のベストラップ1分40秒779を出すなどハイペースで追い上げていきます。
クラス&総合優勝を狙うのは難しくなったものの、表彰台へ上ることは不可能ではありません。シリーズチャンピオンを狙うために1ポイントでも多く獲得したいのです!
【LAP397】23日 5:45頃
明け方。10回目のピットインで「起きたら順位が下がっていた(涙)」と語る植松選手へ交代。直後に#999のリヤタイヤが外れるというトラブルでFCY、LAP401で解除。1分43秒~45秒台で周回する植松選手、クラス5番手、トータル25番手です。しかし、電気系トラブルは完全には解消していなかったそうです。だましダマシ走行はまだまだ続く…。
【LAP441】23日 7:00頃
11回目のピットインで井出選手へ交代。この時、トップから71周差、クラス5番手、トータル22番手で井出選手コースイン。1分42秒~45秒ほどで怒涛の走り! LAP482にクラス4番手、トータル19番手まで追い上げます。
で、井出選手。LAP485には黒白旗(マナー違反)で注意を受けます。ピットストップなどのペナルティにはならないものの…井出さん、なにやったの!?(笑)
「いやね、ストレートで前のマシンをパスしようとしたら、さらにその前のマシンを抜こうとしていたらしく、ストレートで4台が並走するカタチになってしまい、ストレートのゼブラゾーンを走行してしまいました。でもペナルティーが出なくて良かった~(汗)」(井出)
【LAP486】23日 8:27頃
澤選手へドライバー交代です。その後LAP495で#225 KTMS GR YARISから出火、セーフティカー導入。#290はSC中のLAP499で13回目のピットイン、コースへ復帰した後、LAP501でSC解除。LAP504でまたFCY発令…残り6時間余り。やはり各車いろいろ起こります。このとき#290はクラス4番手、トータル18番手。
●表彰台まで、あと1台!
【LAP545】23日 10:25頃
植松選手へドライバー交代。クラス4番手…表彰台まであと1台抜きたい!! 残すところ4時間半。さぁ!いくよー!!
【LAP590】23日 11:48頃
川端選手へドライバー交代、ピットインは15回目。トータル13番手から12番手へ、長いピットイン中の#999を抜けばクラス3番手です。そしてついに、LAP608でクラス3番手へ浮上!
【LAP634】23日 13:00頃
16回目のピットインでドライバー交代、井出選手最後の走行です。その後LAP650でトータル11番手、LAP659で10番手と更に追い込んでいきます。
「例の電気系トラブルの関係で、ブレーキ交換のタイミングが早かったツケが、終盤になってブレーキの摩耗をコントロールする必要が出てきたんです。なので、残り2~3時間はチェッカーを目指しながら我慢の走行で繋ぐことに…。
それに、電気系のトラブルはピット作業時、ジャッキダウンするとエンジンが止まるという症状がありました。試しにソ~っと下ろしてみても、ダメ。2021開幕前から『マクラーレンは電気系が弱い…』とは聞いていたけど、今までの2戦では出なかったトラブルなんですよね」(井出)
【LAP671】23日 14:12頃
井出選手から澤選手へ交代。これが最後のピットイン、17回目です。クラス3番手、トータル10番手でゴールを目指し周回を重ねていきます。
●いよいよ24時間経過、#290はクラス3位でゴール!
【LAP698】23日 15:00頃
#81 DAISHIN GT3 GT-R(NISSAN R35 GT3 GT-R)がLAP763で24時間を走り抜き総合&クラス優勝! このマシンは2018、2019、そして2021年と、3回も富士24時間レースを制しました。しかもCドライバーの藤波清斗選手は井出選手が可愛がっている後輩。おめでとうございます(クヤシイけど)!
クラス2位は#777 D’station Vantage GT3(Aston Martin Vantage AMR GT3)、そして井出有治選手も走った#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3は、LAP698でクラス3位とギリ表彰台を掴みました。
4位は#999 CARGUY NSX-GT3(HONDA NSX-GT3)、5位は#33 TSK Audi R8 LMS(Audi R8 LMS)。#9 MP Racing GT-R(NISSAN R35 GT3 GT-R)と#31 LEXUS RCF GT3(LEXUS RC F GT3)の2台は、残念ながらリタイアとなりました。
井出選手の#290は途中、2時間ほどのリペアタイムもありましたが、ST-Xクラス7台中、完走5台、リタイア2台という厳しい中、マクラーレン720S GT3としても世界初の24時間耐久挑戦を走り抜きました。
「ゴール後にブッ倒れた…」という彦田訓昌監督はじめ、不眠不休で24時間を戦ったメカニックさん&スタッフの皆さん、そしてトラブルを抱えながらも確実な走りで24時間を繋いだ植松忠雄選手(166周)、澤圭太選手(170周)、川端伸太朗選手(196周)、井出有治選手(166周)、川原悠生選手(未走)のFloral Racing with ABSSAのチーム力に乾杯!
最後に、「3位でゴールして、みんながやり切った気持ちでチェッカーを受けたけど、身も心もボロボロw」という井出有治選手に、この熱いS耐Rd.3富士24時間レースを締めていただきましょう。
「途中、順調にトップを走行している時には何もないことを祈りながらも、レースはそんなに甘いものじゃない…とは思っていました。けれど、やはり24時間レースは『速いだけでは勝てない』と思い知らされました。
今回も応援してくださったファンの方々、レース関係者、チームスタッフ、みんなのお陰で無事にレースを終えることができました。ありがとうございます。次戦、オートポリスではリベンジ出来るようにしっかりと準備したいです! 応援、ヨロシクお願いいたします!!」(井出)
次戦のスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookは7月31日(土)~8月1日(日)に大分・オートポリスで行われる第4戦・TKUスーパー耐久レースinオートポリス(5h×1レース)です。
(文:井出 有治・永光 やすの/画像:折原 弘之・永光 やすの)
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【関連リンク】
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https://www.yuji-ide.com/
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https://www.youtube.com/channel/UCQqPHs5ia7ehJ2Pg4udHt7Q