目次
■21年、400戦以上開催の歴史を受け継ぐヤリスカップ
2020年2月にヴィッツの後継としてデビューしたトヨタのコンパクトカー、ヤリス。
このヤリスの登場により。これまで21年400戦以上という日本のナンバー付きワンメイクレースをけん引した歴史あるシリーズ「Netz Cup Vitz Race」は「TOYOTA GAZOO RACING Yaris Cup」にリニューアルされることとなりました。
その「TOYOTA GAZOO RACING Yaris Cup」に出場できる唯一の市販車が「ヤリスカップカー」です。
そのヤリスカップカーとはいったいどういったクルマなのでしょうか? レース大好きレースクイーンの生田ちむさんとともに見ていきましょう。
●ベース車両は普通のヤリス。
ヤリスでモータースポーツというとGRヤリスを思い浮かびます。しかしヤリスカップカーのベース車両は普通のヤリスの1.5リッターFFモデルとなります。
ベースとなるグレードとしては1.5リッター最廉価バージョンのXのようですが、ディスプレイオーディオは省略されており、販売状態ではホイールキャップ無しのスチールホイール仕様となります。
ヤリスカップカーのエンジンは全くのノーマルです。ただし後述しますがオイルクーラーのみ追加装備となります。
そこに追加として装備されるのが、6点式のロールケージ。車両が横転した際に乗員の安全確保のために必要とされるもので、強固なボルトによる固定がなされます。
さらに、側面からの衝突から乗員を守るために前席のロールケージにはサイドバーも入ります。
助手席側にもサイドバーが入ります。マシンに乗り込む際はこのロールケージを跨いで乗り込むことになるので、公道も走ることが出来るナンバー付きレース車両とは言っても、スカートをはいた女性には不向きであるといわざるを得ません。
デートカーも兼ねようと思うとかなり難易度の高いクルマとなってしまうのではないでしょうか?
●標準装備品はホンキモード
ロールケージ以外にも、ヤリスカップカーの標準装備品はかなりのホンキモードです。
ヤリスカップカー専用装備となるサスペンションは、バネレートとショックアブソーバの減衰力をレース用に設定し、車高も15mmのローダウンとなっています。
さらにリアサスペンションは14段階の減衰力設定が可能なダイヤルが装備されており、減衰力固定式だったVitz Raceカーに比べるとセッティングの自由度は大幅に増大しているといえます。
シートベルトは市街地走行用の3点式シートベルトとは別に、レース用の6点式シートベルトを装備しています。
この6点式シートベルトはSabelt製のロータリーロック式という本格的なもの。ただし公道走行時には使用できませんので注意が必要です。
レース用牽引フックも標準装備となりますが、こちらも公道走行時には外さなくてはいけません。
また、エンジンにはオイルクーラーも装備されます。ヤリスカップカーにはCVT車の設定もあり、油温の上がりやすいCVT車には15段コアの大型のオイルクーラーが装着されます。
これらの標準装備品はレースに出場する場合は変更が許されない、全出場車共通の仕様となっています。
●交換できる部品、できない部品
レースを戦うにあたり、交換できる部品と公道走行をするため等の条件によりに交換できない部品があります。
運転席のシートとシートレールは、レースに適した強度や仕様であるとともに、公道走行のための車検に合格したものであれば交換が可能です。ちなみに標準装着のシートはXグレードに準じたヘッドレスト一体型のため、レースには不向きです。
タイヤはレースにおいてはグッドイヤー「EAGLE RS SPORT S-SPEC 195/55R15」が指定されています。ホイールは7.0J-15インチ インセット48mmであれば、好きなブランドのホイールを選択することができます。
レースに出場する際は、フロントタイヤは必ず新品でマーキングを受けることが必須となります。
交換できないものとしてはステアリングがあります。形状や太さはスポーツ走行などに適しているとは思いますが、材質はウレタンです。しかし、レーシンググローブをして操作することを考えれば特に問題はないように思えます。
ヤリスカップカーのベース車両である普通のヤリスは、安全装備が充実しています。このヤリスカップカーでも横滑り防止機構や運転席と助手席のエアバッグ、サイドエアバッグにカーテンエアバッグなどが装備されますが、レースのためにこれらを取り外すことはできません。
ヤリスカップカーはオーディオレス仕様です。本来ディスプレイオーディオが取り付けられる場所には、トレーが付いています。実はこのトレーの内側には2スピーカーの配線などが来ていますので、工夫すればオーディオが取り付けられると考えてしまいます。しかし、レースに出る場合はトレーを含めてダッシュボード周りの形状変更は出来ないので注意が必要です。
ヤリスカップカーは標準装備品込みの価格が、消費税込みで6MT車が217万1,100円、CVT車が238万100円になります。
ノーマルヤリスの1.5リッターXグレードとの差額は、6MT車が628,100円、CVT車が782,100円ですが、ロールケージやサスペンション、オイルクーラーなどの装備を後から装着するだけで、差額は軽く超えてしまいます。
モータースポーツの入り口として、手軽に始められるナンバー付き車両によるワンメイクレースの新しいスタンダードとなるヤリスカップカー。
6月5日には富士スピードウェイで「TOYOTA GAZOO RACING Yaris Cup」の開幕戦が行われます。ヤリスカップカーが気になる方は、まず開幕戦を観戦してみてはいかがですか?
(写真・文:松永 和浩)
【関連リンク】
TOYOTA GAZOO RACING Yaris Cup
https://toyotagazooracing.com/jp/yariscup/
YARIS CUP CAR
https://www.trd-motorsports.jp/yariscupcar/