■ラゲッジルームは意外と広くて使いやすい
アウディの中核をなすモデルとして用意されているのが、A4とA5です。
A4はセダンとワゴンで実用系、A5は2ドアクーペ、5ドアクーペハッチバック、カブリオレと、遊び心のあるモデルという展開になっています。
メルセデス・ベンツはCクラスのなかにすべての車型を集約していますが、アウディとBMWは同じクラスでもセダン&ワゴンとクーペ、カブリオレ、5ドアクーペといったように車名を分ける傾向にあります。
さて試乗したRS5クーペはアウディの4&5のなかでもっともスタイリッシュでもっともスポーティなモデルといっていいでしょう。
RS5クーペMLBプラットフォームを用いるモデルのRSシリーズ(アウディは標準がA、スポーティがS、さらにその上にRSというグレードを設定します)で、搭載されるエンジンは2.9リットルのV6ターボ。最高出力は450馬力・最大トルクは600Nmにもなります。
組み合わされるミッションは8速ATで、駆動方式はもちろんクワトロの4WDとなります。
じつはこのRS5に乗る機会を得たのはRS6アバント、RS7スポーツバッグ、そしてe-トロンと同時のタイミングでした。
エクステリアミラーを含むと2mオーバーのe-トロンや、カタログ数値で全幅1960mmのRS6&RS7と同時のタイミングに全幅1860mmのRS5クーペに乗ると、それはそれはコンパクトなモデルに感じます。
前出3台では気をつかって通っていた狭い道も、ほとんど気をつかうことなく余裕でクルマを走らせられます。ノーズ先端が低く設定されるデザインですが、フードのプレスラインなどの効果もあり、ボディサイズは把握しやすいものとなっています。
RS5クーペを満喫できるシチュエーションは、なんと言ってもワインディングロードでしょう。とくに整備が行き届き道路幅が広めのワインディングではついついアクセルを踏み込んでしまいます。
全体としての仕上がりはとにかく安定志向なのですが、そこに運転を楽しむ要素をしっかりと与えているところが「さすが」とうならせる部分です。
とくにステアリングに正確に反応して向きを変えていく動きはじつに気持ちよく、1.7トンを超える車重を感じさせることなく、ヒラリヒラリとワインディングを走っていきます。
この走りを支える大きな要素がリヤスポーツディファレンシャルと呼ばれる装備。左右リヤタイヤのトルク配分を適正に行うことで、ニュートラルなステアリング特性を生み出ています。
アクセルを強く踏み込むとずっしりと重い排気音とともにトルクフルな加速を披露、高回転&高出力エンジンを積むライトウエイトスポーツとは異なり、大トルクを4輪に伝えるいわば力技での加速をするタイプのクルマですが、それでいてハンドリングはヒラリヒラリのフィーリング……。
この2つが同居している部分が、アウディRS5クーペの素晴らしい部分だと言えます。
アウディRS5クーペには、走行モードを「オート」「コンフォート」「ダイナミック」そして「インディビジュアル」の4つに切り替えることができます。
普段はオートやコンフォートで乗るのでしょうが、せっかくのワインディングですからダイナミックを試してみると、これはもはやダイナミックではなく「トラック」、つまりサーキットを走るようなモードなのだなと気付かされます。
フロントセクションにエンジンを搭載するクーペのいいところは、スタイリッシュでありながら実用性も高い部分にあります。
このRS5クーペも独立したトランクルームを備えます。定員乗車時のトランクルームの容量は450リットルで、奥行きは最大1079mm、幅は1000mmになります。レクサスのSUVであるUXはピュアエンジンとEVが310リットル、ハイブリッドだと268リットルです。
もちろんリヤシートを倒した際の容量で比べるとその差はグッと縮まるのでしょうが、RS5クーペのラゲッジルームが意外と広いということは事実です。
(文・写真:諸星 陽一)