憧れのチーム・インパル(IMPUL)からフォーミュラニッポン参戦…でも、星野一義さんの愛猫と井出有治の相性は最悪だった!?

■星野一義さんのカバン持ち時代から、チームIMPUL(インパル)でのGT選手権、そしてフォーミュラニッポンへ

●今週末5月21日(土)~22日(日)はスーパー耐久・富士24時間レース!

クリッカー読者の皆さん、こんにちは! 元F1レーサー・井出有治です。前回に続き、今回も尊敬する星野一義さん&チームIMPUL(インパル)時代のお話、そしてスーパー耐久・富士24時間レースへ向けて意気込みのお話を!

新東京サーキット
新東京サーキットで全日本戦が行われる直前のコース整備です。

●憧れの星野一義さんの間近で学んだ、レースのいろいろ

以前クリッカーで、ボクがカートからF3へステップアップしたばかりのとき、1996年~1997年の約2年間、縁あって星野一義さんのカバン持ち(付き人)をやらせていただいていた時代のことをお話しました。

mobilecast IMPUL
フォーミュラニッポン・mobilecast IMPUL

その6年後(その間はGT300や全日本F3、フランスF3などで頑張ってましたー!)、2003年からGT選手権でカルソニックスカイライン(R34)、2004~2005年はカルソニックインパルZ(Z33)のステアリングを握り、また、Zと同じ2004年~2005年の2年間、フォーミュラニッポン(FN)でもチームIMPUL(mobilecast IMPUL)から参戦していました。

このカバン持ちの2年間、GTの3年間、そしてFNの2年間…ボクは星野一義さんの元でレーサー修行です!

●資金が足りなくピーピーだった初フォーミュラニッポン・セルモ時代

COSMO OIL RACING TEAM CERUMO
初めてのフォーミュラニッポンは、COSMO OIL RACING TEAM CERUMOで参戦。

2003年はGT選手権でインパル・カルソニックスカイライン(R34)に乗りながら、初めてのFN、COSMO OIL RACING TEAM CERUMOに乗っていました。

井出有治
2003年のフォーミュラニッポンはCOSMO OIL RACING TEAM CERUMOで参戦。

レースって莫大なお金がかかるので、GTのギャラをほぼFNにつぎ込んでいました。が、シーズン半分くらいで手持ち資金が足りなくなり…。

それでも2003年前半、セルモがチームとして久しぶりに表彰台に上がることができたボクに、メインスポンサーのコスモ石油さんも喜んでくれていました。が、資金は尽き果て、セルモではもう乗れない…というところまできてしまいました(←大ピンチ!)。

しかし、コスモ石油さんの強い押しを頂けて、チームもなんとかやりくりしてくれて、残り2003シーズンも引き続きセルモに乗れることに! セルモさんとコスモ石油さんには感謝しかありません。そして2003年のセルモでのFNはシリーズ5位!

●IMPUL FNマシンに乗るチャンス、キター!

シーズンオフ…2004年のFNは乗れるのか? でも、GTのギャラを全部FNにつぎ込むのはもう、限界…。

そんなとき、星野さんから「ブリヂストンが本山(※本山哲選手/2003年IMPULに乗っていました)と、セパンでFNのタイヤテストをやるから、井出も勉強のため見に行ってこい!」と。テスト中の2~3日、ボクはずっとコースサイドで本山選手の走りを見て勉強していました。

2004年のフォーミュラニッポン
2004年開幕戦。祝ポール! 左から…星野一義監督、ボク井出有治、チームメイトのブノワ・トレルイエ、そしてインパル時代もう一人の恩人、金子豊さん。

テスト最終日、残り1時間ほどになったときに突然、スタッフから「井出、お前も乗れ!」と言われ、慌てて準備し乗らせてもらいました。時間が余ったから乗せてくれたのかな~、なんて思っていたんですよね。

井出有治
mobilecast IMPUL時代のボク、井出有治。

初めて乗ったインパルのFNマシンは、その乗りやすさと速さにビックリ!

「こんなに速いんだ! 本山さんのセッティング力も凄いだろうし、チーム力もあるし…。このマシンには勝てるワケないな」なんて思いながらも、インパルのマシンに乗れたことが嬉しくて! でも、本山さんのコンマ1秒落ちくらいしかタイムが出せなくて、悔しく思いながら走行していました。

走行後、セパンには来ていなかった星野さんに連絡を取り…。

井出:「最後に乗せてもらえました!!  ありがとうございました」

星野:「オレが乗せろって指示したんだよ! 井出が乗ったらどれくらいで走るのか試したんだよ。そのタイムによっては来年(2004年)、オマエをウチのクルマに乗せようかと思ってね」

井出:「そうだったんですか! ありがとうございます!! チャンスを頂きましたけど、でも、本山さんより速いタイムは出せませんでした…」

星野:「当たり前だろ! ウチのクルマに初めて乗って、1時間もしないうちに本山セッティングのままでコンマ1秒落ちなら十分。来年はウチのFN乗れ!」

井出:「でもボク、お金ないです…」

星野:「バカ! ウチは金を持ち込ませて乗せるチームじゃない。速けりゃいいんだよ!」

井出有治
2004年スーパーフォーミュラ・井出有治選手

も~ビックリ! このセパンテストは星野さんからのドッキリ?で、ボクのドライバー・オーディションだったんです! でもドッキリで良かったです。最初からオーディションだと分かっていたらボク、スピンして吐いてたかも!

井出有治
星野さんからはホント~にいろいろなことを学ばせていただきました!

2004年のFN開幕戦・鈴鹿でコースレコード出してポールポジションを獲って、そのときの記者会見で星野さんが「まぁ錆びたナイフも磨けば光るってことだよ!」って。アレって褒めてくれた…んですよね?(笑)

●尊敬する星野さんのお宅でレースの反省会…でも、ちょい、猫、やめて~!(涙)

インパルで走っていた頃、ボクはしょっちゅう星野さんのご自宅に呼ばれ、レース後の反省会を星野さんとふたりでやっていました。

星野さんのお宅には猫がいました。その猫が…ボクがリビングに入ると、白いグランドピアノの上から「シャーーーーーッ(怒)!」って、全身の毛を逆立て、頭を低く構え、シッポをピーンと立ててボクを睨みつけて怒るんです。

星野猫イラスト
このイラストよりもっと、頭を下げ、シッポはピーンと、毛も逆立っていました(涙)。

星野:「早く座れ!」

ピアノの先にあるソファに座りCABINを吸っている星野さんの頭の中はレースのことでいっぱいで、猫がボクに向かって「シャーーーーーッ(怒)!」って怒っていることなんか目に入っていません。

恐る恐るピアノの横を歩きソファに近づいた、その時。「ストンッ」と、猫が床に着地した音が。「エ?」と思った、その瞬間! 猫が爪剥き出しでボクの足首で「シャーーーーーッ(怒)!」って言いながら爪とぎをするんです。くるぶしまでしかないソックスなんか役には立たず、足首に激痛が走り、しかも流血…。

星野さんはレースモードに入っちゃっているので、猫に襲われているボクにはまったく気付かず。マジで痛いけど星野さんの愛猫なので追っ払うこともできず、一通りの爪とぎが終わるまでウ~~~ッしか言えずに、ガマン(涙)!

その後、星野さんに。

井出:「猫ちゃん、ボクのことが嫌いみたいで血だらけになっちゃうので、猫ちゃん、リビングにいないほうが…」

星野:「何言ってんだよ、ミ~ちゃん(仮名)可愛いだろ?」

井出:「いや~可愛いですけど…(涙)」

星野一義&井出有治
勝って、嬉しくて、星野さんに抱きついて泣いたことも!

その後の星野さん宅ミーティングでは、リビングから猫を出してくれました。しかし、ソファ手前に設けられていたあの猫関所、辛かった~(汗)。

ってことで、星野一義さん&チームIMPUL話の続きは、また次の機会に!

●S耐・富士24時間レースは5月22日~23日! #290マクラーレンGT3の応援ヨロシク!

今週末の5月22日(土)~23日(日)、富士スピードウェイで行われるスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook第3戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』を控え、ワクワクしています。

S耐富士24時間レース
S耐富士24時間レースでは、Floral Racing with ABSSA #290 Floral UEMATSU FG 720S GT3の応援、よろしくお願いいたしまーす!

昨年TCRシビックで参戦した富士24時間レースは、ドシャ降りの嵐を呼んだレースで大変だったけど、今年は…ウ~ン、どーだろ? 天気予報はなんか定まらない感じだし、スポット参戦のライバルも増えたり。

だけど、富士24時間は獲得できるポイント数が多いので、シリーズ優勝へ向けての大事なレースです。

まだまだコロナ禍で大変な時期ですが、Floral Racing with ABSSAの#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3の応援、よろしくお願いいたします!

※S耐 Rd.2 SUGO戦で3位入賞した動画ができました。観てくださいね!

井出 有治/画像:折原 弘之・AUTO SPORT・レーシングオン/アシスト:永光 やすの

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この記事の著者

永光やすの 近影

永光やすの

「ジェミニZZ/Rに乗る女」としてOPTION誌取材を受けたのをきっかけに、1987年より10年ほど編集部に在籍、Dai稲田の世話役となる。1992年式BNR32 GT-Rを購入後、「OPT女帝やすのGT-R日記」と題しステップアップ~ゴマメも含めレポート。
Rのローン終了後、フリーライターに転向。AMKREAD DRAGオフィシャルレポートや、頭文字D・湾岸MidNight・ナニワトモアレ等、講談社系車漫画のガイドブックを執筆。clicccarでは1981年から続くOPTION誌バックナンバーを紹介する「PlayBack the OPTION」、清水和夫・大井貴之・井出有治さんのアシスト等を担当。
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