■F1テクノロジー満載のスペシャルバージョン、812コンペティツィオーネ&812コンペティツィオーネA(アペルタ)が登場!
●これが最後のフェラーリV12となるのか?
2021年5月5日、フェラーリはV12エンジンを搭載したフラッグシップモデル、812スーパーファストをベースとした最新リミテッドエディション・スペシャルシリーズの812コンペティツィオーネ。そして、812コンペティツィオーネA(アペルタ)を発表しました。
両モデルともに限定生産で、999台生産の812コンペティツィオーネの価格が約6545万円。812コンペティツィオーネAが549台の生産で価格は約7580万円となっています。
812コンペティツィオーネに搭載されるV12エンジンは812スーパーファストに搭載されている数々の賞を受賞した6.5L V12エンジンをベースに最高回転数を9500rpmに引き上げ、最高出力を830psまで向上させた世界で最も刺激的なV12エンジンとなっています。
9500rpmというレッドゾーンを樹立するために、吸気システムの流体力学と燃焼を最適化し、内部の摩擦を低減しています。内部の摩擦を低減するために、コンロッドやピストン、クランクシャフト、バルブトレインなどエンジンの主要コンポーネントを細部まで再設計しています。
採用したチタン製コンロッドは機械抵抗こそスチール製と同じですが、40%も軽量です。また、ピストンピンには、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施すことで、摩擦係数の低減に加えてパフォーマンスや燃費の効率、摩擦の低下などを実現しました。
今回V12エンジンで最も大きな改良点は新設計となったバブルトレインとシリンダーヘッドです。カムシャフトの回転でバルブシステムを動かすこの装置に使用されるパーツは、DLCコーティングを施したパーツへと変更されています。
これは、フェラーリがF1での経験で得た技術で、このエンジンのために特別に開発され、バルブリフト特性を向上させています。
吸気システムも再設計されており、中でもトルクカーブをすべての回転域で最適化しているのが、可変ジオメトリー吸気ダクトによるものです。
このシステムは吸気ダクトアッセンブリーの長さを絶え間なく変更し、点火順序に適合させることで、エンジン内部のシリンダーへの動的な充填を最大化します。その結果、レッドゾーンまで気持ち良く吹け上がり、谷が存在しません。
そのほか、オイルポンプ、燃料噴射マネージメント、高水準のエンジンサウンドを守りつつ最新の排気ガス基準に適合させたエグゾーストテールパイプなど、様々な技術が投入されています。
高回転・高出力化したV12エンジンに組み合わされるトランスミッションは、いずれも7速デュアルクラッチミッションです。ギアレシオは812スーパーファストと同じですが、制御戦略のキャリブレーションによって変速時間は5%短縮。さらに最高回転数が500rpm引き上げられたことで、812コンペティツィオーネのシフトチェンジは一段とスポーティとなっています。
エンジンの高出力化に伴い、812コンペティツィオーネはパワーアップがもたらす熱量の増加に対応するため、冷却システムを変更。フェラーリV12モデルで初めてシングル・フロントエアインテークを導入しました。このシステムの導入で、ラジエターに送られる冷却エアの量が増加。そして冷却液の回路もすべて改良された結果、812スーパーファストから10%も向上しています。
エアロダイナミクスでも812スーパーファストでは中央の大型グリルの両サイドにエンジンのエアインテークを配置していました。しかし812コンペティツィオーネでは、シングル・エアダクトによる一体化ソリューションが採用されています。これによりエンジンのラジエター用インテークの横幅をシャシーが許す限り最大限広げることが可能となりました。
また、812コンペティツィオーネは812スーパーファスト同様、フロント・ディフューザーに250km/hを超えると開くパッシブ式可変エアロシステムを搭載。一方812コンペティツィオーネAのボンネット・ブレードの両側にある排気口の形状は、オープントップで走行中の際に、適切に気流をマネージメントできるように設計されています。
最高出力が向上したことで制動力の向上も必要となりました。ブレーキの冷却コンセプトはSF90ストラダーレで採用された新しいフロント「エアロ」キャリパーで鋳造キャリパー内にエアインテークが組み込まれています。
パイプ類や補記類周辺のレイアウトを最適化することで、812スーパーファストと比べて、作動温度は約30度下がり、長時間のサーキット走行でも安定した制動力とブレーキフィールが保証されています。
車両制御システムはでは、812コンペティツィオーネでは独立四輪ステアリングの初採用、サイド・スリップ・コントロール(SSC)システムのバージョン7.9への進化などが行われています。さらに専用の新ミシュラン・カップZRタイヤも装着されています。
フラッグシップモデル812スーパーファストをベースに、エンジンの高出力化と徹底的なエアロダナミクスと軽量化で走りにさらに磨きを掛けた812コンペティツィオーネとカーボンファイバー性のタルガトップを採用した812コンペティツィオーネA。
一般庶民には全く手はとどきませんが、もしかするとフェラーリ最後のピュアV12エンジン車になるかもしれない…と考えると、約6500万円からという価格も決して高くないのかもしれません。
(文:萩原 文博/写真:フェラーリジャパン)