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■東京オートサロン2021に出品予定だったホンダアクセスの2台がバーチャルオートサロンに登場!
ホンダのアクセサリー部門であるホンダアクセスは、東京オートサロン2021に出品予定だった2台のコンセプトモデルをバーチャルオートサロンに出展中。
しかし、やっぱり実車をチェックしたいということで取材を申請したところ特別に許可がおり、コロナ禍で閉鎖されている東京のHonda ウエルカムプラザ青山にて取材、撮影を行うことができました。
今回取材したコンセプトカーはHonda eをベースとしたドラッグレーサーと、N-ONEベースのヒルクライムマシンです。コンセプトカーそのものの取材を前に開発者に話をお聞きしました。ホンダアクセスがこの2台を選んだ理由がわかるエピソードです。
「ホンダアクセスはこれまでに100台近くのショーカーを展示してきたものの、そのほとんどがショーカーで終わってしまい商品化されたものはほとんどありません。東京オートサロン2021に向けての車両開発はコロナ禍ということもあり、ゆっくり考えて市販できるもの、実際に走るもの、を作ろうということになったのです。従来は東京オートサロンに向けてクルマを開発してきましたが、今回はオートサロンをプロローグとして、その後もしっかり活動して行こうということになりました。
ホンダ本体はF1やGTマシンを展示することになるでしょうから、ホンダアクセスはもっとユーザーに近い草レースっぽいものを展示しようという気持ちもあり、Honda eとN-ONEの2台になったのです。ホンダはマジメ、ホンダアクセスはオモシロい……という感じで見て欲しかったのです。せっかく東京オートサロンに出すのですから、来場者の心に刺さるものをという気持ちもありました」。
●オジさんのクルマ離れを防止したいという気持ちから生まれたN-ONEベースの「K-CLIMB」
「K-CLIMB(ケイ-クライム)」はN-ONEをベースとしたヒルクライムマシンです。出展車のベースを何にするか? という段階で「オートサロンに来るお父さんに同行するファミリー」ではなく、お父さん本人をターゲットにしたとのこと。
あらためて原点に戻り、ドライブする本人が楽しめるクルマ作りをしています。開発陣の「オジさんのクルマ離れを防止したい、ホンダのファンはFANだけど、ホンダアクセスのファンはFUNだ」という言葉は、まさにこの「K-CLIMB」のコンセプトそのものだと言えるでしょう。
「K-CLIMB」の開発にはチューニングパーツメーカーとして有名なHKSが協力しています。ホンダアクセスとHKSのコラボレーションはほとんど初めてのようなものだったとのことですが、目標に向かって何をすればいいのかを考えるHKSとの共同作業はとてもスムーズだったと言います。
「K-CLIMB」のエクステリアデザインは1983年に発売されたシティ・ターボII (通称ブルドッグ)をオマージュとして左右非対称のグリルデザインなどを採用しています。軽量化を図るため、グリル、前後バンパー、エンジンフードをCFRP製に変更。フロント+15mm、リヤ+12mmのオーバーフェンダーを取り付けたうえで、初代N-ONE Modulo X用の15×5.0JのアルミホイールにADVAN FLEVAの165/55R15タイヤを装着しています。
機能パーツで変更されているのはショックアブソーバー&スプリングとマフラーで、エンジン本体には手が入れられていません。ショックアブソーバーは車高調整式でN-BOX用のHKSハイパーマックスIVをベースにしたスペシャルなワンオフ、マフラーもリヤバンパー形状に合わせてセンター出しとしたHKS製のワンオフモデルとなっています。
インテリアはロールケージを装備したうえで、フロント2席用の4点式シートベルトを装着したというシンプルな構成です。
リヤシートを前倒しにした状態で、シートベルトのショルダーベルトをヘッドレストとシートバックの間を通してリヤシート下部のアンカーに連結。ショルダーベルトをバックルから外してラゲッジルーム側に置いて、シートバックを立てればリヤシートにも乗車できます。
このあたりのフレキシビリティのある作りは、まさにストリートマシンといった雰囲気にあふれています。
●Honda eをベースに、取り外せるものは徹底的に取り外して軽量化したドラッグレーサー「e-DRAG」
「エコやクリーンだけがEVじゃない」のかけ声のもと、モータードライブマシンの特性をもっとも活かせるモータースポーツとは?の答えとしてホンダアクセスの開発陣がはじき出したのが、ドラッグレーサーという選択肢でした。
モーターの最大の特徴は、起動時から最大トルクを発生するということ。つまり発進加速は非常に鋭く、ドラッグレース向きなパワーユニットといえます。
加えて、従来は1/4マイル(約400m)の距離で競技を行っていましたが、マシンの性能向上に伴ってトップエンドスピードが速くなりすぎ、最近は1/8(約200m)の競技も増えてきたとのことなので、ますますEV向きの競技になってきているともいえます。
「e-DRAG(イー-ドラッグ)」の開発では、まず徹底した軽量化が行われました。
この手法、本場アメリカのドラッグレーサーでは超が付くほどの当たり前のこと。ファニーカーと呼ばれる競技車のボディパネルは、ビックリするくらいに薄くて軽量なのです。
「e-DRAG」では、ボンネット一体化のフロントバンパー、ルーフ、ドア、リヤフェンダー、リヤハッチなど置き換え可能なボディパーツはCFRP製に変更。ウインドウはアクリル化しています。
足まわり関連はショックアブソーバー&スプリングをHKSが担当。アーム類などはすべてピロボールジョイント化されています。
徹底した軽量化を図ったため、パワーステアリングユニットも取り外され、いわゆる「重ステ」となっています。ホイールは初代NSXのフロント用がピッタリだったのでそれを4輪に履かせ、タイヤはアメリカンドラッグが装着されています。
インテリア関連も外せるパーツはすべて外してあります。
シートはドラッグレース用のアルミ製の軽量なもの。同乗試乗もできるようにということで助手席シートも取り付けてありますが、競技の際は当然取り外すことになります。ロールケージは競技での車検も通るサイドバー付きの6点式が装着されます。コロナのドタバタで正確に計測はしていないものの200〜300kg程度は軽くなっているといいます。
出力系はすべてノーマルです。0→400mのタイムは、ノーマル状態のアドバンスグレードで15秒前半とのこと。それを軽量化して、足まわりを変更して、どこまでタイムが縮まるかを検証し把握し、その先の作業として出力系のチューンになります。
ドラッグレースでは発進時にサスペンションがどう動くか? がとても大切で、それを綿密にチューニングできるようにピロボールジョイント化を行ったというわけです。
●ホンダアクセス・K-CLIMB
ベース車両メーカー(ホンダN-ONE RS)/装着パーツなど:HKS製ワンオフマフラー、HKS製ワンオフショックアブソーバー&スプリング(ハイパーマックスIV改)、初代N-ONE Modulo X用15×5.0Jのアルミホイール、ADVAN FLEVAの165/55R15タイヤ、オリジナルボディパーツ(フロントグリル、フロントリアバンパー、 フェンダー、テールゲートスポイラー、ボンネットフード)、ロールケージ、シンプソン4点式シートベルト
●ホンダアクセス・e-DRAG
ベース車両メーカー(ホンダ Honda e)/装着パーツなど:ボディパーツCFRP化(ボンネット一体化のフロントバンパー、ルーフ、ドア、リヤフェンダー、リヤハッチ)、HKS製ワンオフショックアブソーバー、サスペンション各アームピロボールジョイント化、KIRKEY製アルミバケットシート、シンプソン4点式シートベルト、アクリル製ウインドウ(フロント、サイド、リヤ)、MY2002NSXフロントホイール、M&H Racemaster Sport/Street Front Runner P185/55R17タイヤ(フロント)、M&H Racemaster Drag Slick 8.5/26.0-17タイヤ(リヤ)
(文・写真:諸星 陽一)