■アダプティブクルーズコントロール、車線維持機能の制御も正確
2021年4月6日にマイナーチェンジを受けたフォルクスワーゲン・パサート。セダンのパサート、ワゴンのヴァリアント、ヴァリアント派生クロスオーバーのオールトラックが改良を受けています。
最大のトピックスは、走りの面ではガソリンエンジンが1.4Lから1.5Lに排気量が拡大された点。さらに、2.0Lディーゼルエンジンのトランスミッション(デュアルクラッチトランスミッション)が6速DSGから7速DSG(湿式)にアップデートされています。
今回、試乗したのはセダン(TDIエレガンス・アドバンス/534万9000円)で、パワートレーンは人気の2.0Lディーゼルモデル。なお、1.5Lガソリン仕様のデリバリー開始はディーゼル仕様の後になるとのこと。
2.0Lディーゼルエンジンは、190PS/3500-4000rpm・400Nm/1900-3300rpmというスペックで、改良前と変わっていません。それでも7速化されたことで、よりスムーズな変速を享受できるようになったのは朗報。
改良前はディーゼルエンジンの割に、少し低速域のトルク感が薄く感じられました。新型パサートは、トルク感の厚みが増したように感じられます。
一方の高速域は、従来同様にディーゼルエンジンでも伸びやかさがあり、もちろん中間加速のパンチ力も申し分ありません。高速道路を楽に巡航するのなら打って付けのパワートレーンといえそうです。
100km/h巡航時のエンジン回転は1500rpm前後と低く抑えられています。アイドリング時や低速時の音、振動は思いのほか大きめではあるものの、走り出せばほとんど気になりません。
また、先進安全装備のアップデートも図られています。同ブランド初採用の同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist(トラベルアシスト)」は、ハンズオフ機能こそないものの、軽く手を添えるだけで車間と車線を維持してくれます。車線維持機能の制御も頼りになる印象で、高速道路を使ったロングドライブでも疲れを誘わなそう。
一方、アダプティブクルーズコントロール(ACC)の減速は、日本車と比べると少し「急」に感じられ、車間距離の設定を一番短くすると少し怖く感じることもありました。
また、乗り心地はかなり引き締まっています。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤが4リンク(マルチリンク)で、足まわりに関してはセッティングも含めてマイナーチェンジ前と変わっていないようです。
試乗車は、ピレリのチンチュラートP7で、235/45R18タイヤを装着。タイヤのサイドウォールの硬さを感じさせる乗り味で、中低速域から高速域まで細かな突き上げと揺すぶられるような乗り味なのは少し惜しいところ。座面が常に上下しているような乗り味になっています。
なお、ドライビングプロファイルを「ノーマル」でも「スポーツ」でも受ける印象はあまり変わりません。パサートではオールトラックに電制ダンパーであるアダプティブシャシーコントロールの「DCC」が上位グレードに設定されていて、懐の深い乗り心地は同モデルでなら味わえそう。
一方で高速域のスタビリティは高く、先述の「Travel Assist(トラベルアシスト)」もあってリラックスして走りを楽しめます。乗り心地に関しては、もう少しフラット感が欲しく感じられたものの、フォルクスワーゲンの最上級シリーズにふさわしいインテリアの質感などを備えていますし、最新のドライバー支援システムも購入動機になりそう。
セダンは落ち着きのあるエクステリアをはじめ、広々したキャビンと586Lの大容量を誇るトランクルームを備えています。
先進安全装備とロングドライブでも疲れ知らず、荷物もたっぷり積めるセダンを探しているのであれば、選択肢に入れたい1台といえるでしょう。
なお、2.0Lディーゼル仕様は、16.4km/L(WLTCモード)というカタログ燃費で、高速道路モード(WLTC-H)は18.9km/Lになりますから、やはり長距離移動の多い方にオススメです。
(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)