意外と知らない? 契約のハンコを押すまでの新車選びの楽しみと注意点

■クルマ新生活者に捧げたい、新車契約までのいろいろなこと…

この春、新生活が始まった人も多いことでしょう。そんな新生活にあたり、特に地方在住の方には、新たにクルマが必要になった、購入検討中という方も多いのではないしょうか?

販売店各社
販売店各社

春という時期だけに、当然、新車購入が初めてなら、そもそも自動車ディーラーに行くことが初めてという方もいるでしょう。ここでは新車購入に向けての注意点について解説していきます。

●販売店に行く前に考えておきたいこと

まず念頭に置いておきたいのは、クルマは買うときだけではなく、買って以降、所有している間もお金がかかるという点です。

ガソリン代のほか、毎年の自動車税、車検ごとに払うもろもろの税金、小さなものはワイパーゴムから、果てはタイヤ、オイルに至るまでの消耗部品の交換費用。そして乗用車なら新車時3年、以降2年ごとの車検費用、突発的な故障時の修繕費用…。

いざ考え始めると頭が痛くなる要素ばかりです。が、これらを自身の収入のみで購入する場合、その中からどれほどクルマ購入・維持費などを捻出できるかどうかを考えた上で、クルマを選ばなければなりません。好きだから…という理由だけで、いきなりクラウンのような高価格なクルマを選ぶのはちょっと無理…という方は、まずは低価格な軽自動車や、ひとつ上の1000~1500cc級のクルマを選択するという手もあります。

このあたりを考えたら、次はカタログをもらいに販売店に向かいましょう。

●ガソリン車か? それともハイブリッドか? そして2WDか? 4WDか?

たとえば、いま販売中の人気車トヨタ・ヤリス。安いほうから「X」「G」「Z」という3種が基本構成です。当然、高いモデルほど装備が豪華になり、安いものは簡素になります。

といっても、いまのクルマはバリエーション数がひと頃に比べてだいぶ減っており、ひとつのモデルで3~4種のみになっているクルマが多くなりました。自分のクルマの使い方に照らし、要・不要を判断して車種を選択したいところです。一般に、どのクルマも上から2番めか中間のモデルがいちばん多く売れているそうなのでご参考までに。

さて、いまではひとつのモデルでガソリン車とハイブリッド、両方を揃えるクルマが多くなりました。ハイブリッド車とガソリン車、どちらがいいのか? さきのヤリス3種にもそれぞれガソリン車とハイブリッド車があることに加え、さらにそれぞれにFF、4WDがあり、ガソリン車には1.0L、1.5Lがあり、トランスミッションにはメインのCVTのほかに6MTがあったりなかったりといった具合。

見かけ上のヤリスの種類は3種類でも、トランスミッション別にまで分類すれば、ビジネスユース的位置づけの「1.0L X・Bパッケージ」も含めて実に18車種にもなります。

ヤリスGのガソリン車モデル
ヤリスGのガソリン車モデル
ヤリスGのハイブリッドモデル
ヤリスGのハイブリッドモデル

これらから仮にヤリスの「G」を選ぶとして、ではガソリン車とハイブリッド車のどちらを選ぶか? 2WDモデル同士で比べた場合、ヤリス1.5L CVTのガソリン車(WLTC燃費21.4km/L)の車両本体価格は175万6000円なのに対し、そのハイブリッド版「HIBRID G(同35.8km/L)」は213万円で、差額は37万4000円、WLTCの燃費差は14.4km/Lとなります…。

この差をどう考えるかです。いっけん、燃費のいいハイブリッドを選ぶほうが日常の給油回数も減るからガソリン代はかからず、有利のように思えます。

ヤリスとカローラの、ガソリン版、ハイブリッド版の費用、燃費比較
ヤリスとカローラの、ガソリン版、ハイブリッド版の費用、燃費比較

しかし、最初に買う段階で 37万4000円高で払い、しかし燃費が劣るガソリン車の燃料代を価格差の中から充てても同じでは?と考えると、どちらがいいとはいえなくなってきます。

要は使い方次第。仮に年間1万km走る方なら、かかる年間の燃料代は、ガソリン車は6万0748円、ハイブリッド車なら3万6313円、差額は2万4435円となり(レギュラーガソリン130円/Lで計算)、ざっとの計算で、走行距離が15万kmを超えた頃にやっと元が取れることになります。時間にして約15~16年です。

カローラハイブリッドS
カローラハイブリッドS

これがカローラとなると同じ計算でも10年10万kmほどになるのですが、これはヤリス・ガソリン車のもともとのWLTC燃費値が優れているためで、クルマによっては同じ車種のガソリン版・ハイブリッド版とでWLTC燃費値の差が大きくなると、車両価格差次第では元が取れる年数&距離も大きく変わってきます。

そしてどのクルマも、実際にはカタログ燃費よりも劣るのが普通ですし、税額の優遇有無によっても変わってきますから、この計算はあくまでも目安でしかありませんが、想定されるご自身の年間走行距離と相談しながら、冷静に判断したいところです。

なお、FFか4WDかの判断ですが、お住まいが降雪地域の方なら迷わず4WDを選べばいいいっぽう、年に数回しか降らないような場所に在住の方は特に必須ではないかも?なので、お好みで選べばいいでしょう。ただし、FFに対してメカ構造が複雑になって重量もかさむ分、FFに対して4WDは車両価格が高くなり、燃費が悪くなることも忘れてはいけません。

余談ながら、トヨタのアルファード/ヴェルファイアの4気筒2.5L車は、カタログ上、WLTC燃費の総合値と市街地モードでは4WDのほうが燃費が良いという、一般とは逆の現象が起きています。興味のある方はアルファード/ヴェルファイアのサイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。

●メーカーオプションとディーラーオプションの違いとは?

このふたつの違いを問われることが多いのですが、メーカーオプション(以下、MOP)とは、生産工場でクルマを組み立てる段階でしか取り付けられない装備品を指します。

したがって、顧客が新車注文の段階でオーダーしなければなりません。後から思い出してセールスマンに「あれもつけて!」といったところで、工場が受注、生産に着手した後ならまさに後の祭りになるので注意しましょう。

メーカーオプションの185/60R15タイヤ&アルミホイール
ヤリスのG、ハイブリッドGは175/70R14タイヤと樹脂製ホイルカバーが標準だが、メーカーオプションで185/60R15タイヤ&アルミホイールを選ぶこともできる。

例を挙げると、サンルーフ(いまや壊滅状態ですが)、車両機能と融合して機能するナビゲーションシステムや、最近なら安全デバイス一連などがあります。当然、中古車にも取り付けることはできません。

ヤリスのディーラーオプションカタログ
ヤリスのディーラーオプションカタログ。かなりの点数のディーラーオプション品が用意されている。後からつけることもできるので、要不要をきちんと判断して選ぼう。

いっぽうでディーラーオプション(以下、DOP)とは、これはクルマが完成した後で取り付けられるものを指し、多少の例外はありますが、一般にはクルマが販売店に届いた段階で取り付けられます。こちらは種類が豊富で、ナビゲーションシステム(車両機能とは無関係の)、フロアマット、ドアバイザー、シートカバー、ルーフキャリアなど、こちらは枚挙にいとまがないほど用意されています。

しかも車両専用に設計されているので、カー用品店などで売られている汎用品に対しては値段が高いものの、きちんとフィットするのがメリット。もっともフォグランプのように、車両標準品かMOPと同等のものがDOPでつけられるような例外品もあるので、こちらもカタログ、用品カタログ両睨みで選ぶようにしましょう。

最後は、注文書には希望どおりのことがきっちり間違いなく記載されているかを確認しましょう。

車両本体価格に対してどれほど値引かれているのか、税金や諸費用が合算ではなく、きちんと別項目で記されているか、希望のMOP、DOPがもれなく入っているか、逆に希望していないものが入ってはいないか。ひどいときには、勝手に「JAF入会料」が入れられていることもあったりするそうです。

納車日がいつ頃になるのかも含めて、これらをきっちり確認したらハンコを押して、はい、契約成立! あとは納車日を待つばかり。クルマそのものも去ることながら、クルマを待っている間というのも楽しいものです。

山口 尚志