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■ドッシャ降りの雨には勝てず(涙)でも予選3位→決勝2位はまずまず、かな!by井出有治
●雨でもまぁまぁ安定した走りができる、ミッドシップのマクラーレン720S GT3
今年2021年、『スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook』の最高峰クラス・ST-Xに、チーム『Floral Racing with ABSSA』から#290『Floral UEMATSU FG 720S GT3』(マクラーレン720S GT3)で参戦している井出有治です!
昨年のS耐はコロナの影響をモロに受け、9月の富士24時間レースが開幕戦となりました。が、今年は感染対策を徹底し、3月20日(土)予選→21日(日)決勝の第1戦がツインリンクもてぎで行われました。
今年ボクはDドライバーとして登録し、ドライバーとしてだけではなく、チームのテクニカルアドバイザーとしての仕事もしています。何をするのか?っていうと主に、マシンのセッティングと他ドライバーがセッティングする際のアドバイス。特にCドライバーの「松本恵二さん最後の弟子」川端伸太朗選手を、ボクも物凄くお世話になった松本恵二さんに代わって、プロのレーシングドライバーとして鍛え上げる…という意味も含めています。
川端選手はS-GT・GT300で『Hitotsuyama Audi R8 LMS』に乗り、2020年はRd.6鈴鹿で優勝もしたほど、今、若手の中でノリノリのドライバーのひとり。が! 甘えなのか自信がないのかナンなのか、すぐに「セッティング、井出さんお願いします~」とか言ってきます。
しっかりセッティングを出す仕事ができなければ、プロのレーシングドライバーにはなれません。公式練習や前日練習では中古タイヤを履き、ガソリンは満タンの重たい状態で、ボクと一緒に決勝へ向けてクルマのバランスチェックをやっていました。その甲斐もあり、今は少しずつ勉強し、応用を効かせているような感じ。2021 S-GT・Rd.1(4/10-11・岡山国際サーキット)では、同じアウディでS-GT GT500元王者・本山哲選手よりも前でゴールできたので、ちょっとは前進しているかな? 松本恵二さんに良い報告をしなければね!
●マクラーレン720S GT3ともてぎとの相性は?
ツインリンクもてぎは、ストップ&ゴーが続くコースなので、ブレーキ性能が試されるサーキット。ブレーキに関しては、まぁ十分ではないけど悪くはないですね。
予選のタイム的には、開幕戦のイコールコンディション、全車ウェイトが全くない状態で予選2番手が普通に見えていたので(0.07秒差で3位/A・Bドライバーのトータルタイム)、マシン全体を見ても、ポルシェ、アストンマーティン、レクサスRC F、メルセデス、GT-RなどのGT3車両で争うST-Xクラスの中でも悪くはないと思います。
●決勝はストレートでスピンしちゃいそうなほどのヘビーウェット…だったって(笑)
3月21日の決勝日は雨の予報…しかも午後遅くなるにつれ雨足は強くなる、と。ドライバー交代はA→C→B→D(ボク)の作戦。ミッドシップは雨で有利とはいえ、え~一番のウェット時に走るの?
初戦、初めてのマシン、初めての雨、未経験のウェットタイヤ…無理!っていうかイヤ!! だって危ないじゃない(笑)! もちろんプロなので「行け!」と言われたら乗りますけど。
予選は3番手。スタートをAドラ・植松忠雄選手に任せた決勝は、最初っからヘビーウェットの中、セーフティカー先導でスタート。3周目でセーフティカーがいなくなってからは一時、5番手まで下がったものの、13周目には3番手へ。そのままキープし32周に川端選手に交代。38周目には2番手へ、レースが1時間40分ほど経過した43周目にはトップへ! 46周目あたりでは2番手の#777 アストンマーティン(D’station Vantage GT3)に47秒以上のアドバンテージを取っていました。57周目に3スティント目の澤圭太選手へ交代したところで2番手へ下がりましたが、Floral Racing with ABSSAの中で唯一、ウエットのマクラーレンドライブ経験者でもある澤選手なので、期待です!
そうこうしているうちに、あまりに雨量が凄かったため71周めにセーフティカーが入り、2番手のまま隊列走行へ。そのままレースは成立し(レース時間の2/3以上を消化)、80周目で終了。#290 Floral UEMATSU FG 720S GT3は初戦、総合&ST-Xクラスで2位に入りました。
そう、ボクは初戦の決勝で一度もステアリングを握ることなく終わったのでした。残念…というかホッとした~。
●ウェット未経験者のボクより川端選手に4スティント目を任せるのが、勝つためのレース!
いやしかし、もしレースがそのまま続行されていたとしても、この場合ボクは乗らないのが正解なんです。
ウェットレースのために、急遽レース前に設けられた15分間のウォームアップ走行でさえも乗っていないボクが、一番のドシャ降りの中を走るっていうことが、まず間違いです。ボクがそこで本当に、あのクルマ、あの雨の中、あの初めてのハンコック・ウェットタイヤで、ボクが4スティント目にコースインしたら、タイヤと路面に慣れるまでに4~5周かかるし、タイムロスにして10~15秒くらい。それをするのであれば、2スティント目を走ってウェットを経験した川端選手が乗ったほうが、1周目からアタックできます。ドライバー目線としてではなく、テクニカルアドバイザーの立場からして、また冷静に考え客観的に見ても、その作戦で行く選択をするのが賢明です。なんたってトップ争いをしていたのですから。
でも結果、赤旗で終わってしまったので、どちらにしろ4スティント目は無かったんですけどね…。
ちょっと残念だったのは、もうちょっと、あと2周くらいセーフティカーランをしていたら、トップの#777 D’station Vantage GT3は走行時間的にドライバー交代をしなければならないタイミングだったので、ボクらはその間にトップに立てたハズだったんですよね~。まぁ「たられば」ですけど!
●次戦は悪魔が宿ると言われるRd.2・SUGO戦(4月17日~18日)!
第2戦は、4月17日~18日のSUGO、3時間耐久です。今回はA、B、Cドライバーのみでボクはセッティング以外は走らず、テクニカルアドバイザーに専念する予定です。
でも~、根っからのレース小僧としては、セッティングだけやって本番走らないのはつまらないデス(笑)。材料を吟味して、一生懸命料理して、お皿に盛りつけてあとは食べるだけってときに「はい召し上がれ!」って渡して自分は料理が食べられない!! コレってつまらないでしょ? マジな話、セッティングだけとはいえレースのためにサーキットを走るって、真剣に準備をいろいろし、神経も使い、頭の中も整理し…想像以上に負担が大きいのです。なので、SUGOはできるだけセッティングも川端選手に任せようかと考えています。
SUGOは昨年のシビックTCRではドシャ降りの中優勝したし、ボクにとってはゲンのいいサーキットでもあるので勝てるといいな~。
●おまけの悲しい話、表彰式にて…(涙)
開幕戦では総合&クラス2位だったので、当然、表彰式があります。が、しかし…。
表彰式の写真にボクは写っていません。なぜなら…サーキットスタッフのミスでボクは置いてけぼりにされてしまったのです。表彰式会場までオフィシャルのアテンドスタッフと一緒に行かないと、コロナウイルス感染予防対策でサーキット内が規制されているために、入賞者のボクでも表彰式会場まで行けなかったのです(涙)。こんなこと、あるんですね…イヤ、ありえないーーー!!(笑)
(文:井出 有治・永光 やすの/画像:折原 弘之・松永 和浩・永光 やすの)
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【関連リンク】
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