30年前の感動をもう一度!ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシンが登場【オートモビルカウンシル2021】

■日本車初の偉業を達成した優勝マシンを展示

世界三大レースとして有名なフランスのル・マン24時間レース。1923年に開始されたこの歴史ある耐久レースは、主に欧州の有名メーカーが数多く参戦し、24時間という長時間の過酷な状況下で、その実力を競うレースです。

その伝統のル・マンで、1991年に日本車で初めて優勝したのが、マツダのワークスマシン「787B」。マツダが誇るロータリーエンジンを搭載し、初挑戦から22年もの歳月を経て、前人未踏の偉業を達成した記念すべきクルマです。

今年は、その栄光から30年目となる記念すべき年ということで、ヘリテージカーの祭典「オートモビルカウンシル2021(4月9日〜11日・幕張メッセ)では、優勝マシンと歴代のロータリー・レーシングスポーツ車2台を展示。迫力あるフォルムなどを間近で見ることができたので紹介しましょう。

●マツダ・787B(1991年)

まずは1991年の優勝マシンから。当時のグループCというカテゴリーに属した車両で、グリーンとオレンジに塗り分けられた美しいスタイリングが一際目を引く1台です。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・787Bのフロントビュー

このマシンに採用されたロータリーエンジンは、軽量コンパクトで高出力を出すことができるため、当時マツダは市販車のスポーツカーRX-7などにも採用していました。その特徴ともいえるローター(レシプロエンジンのピストンとコネクティングロッドに相当)はRX-7が2つだったのに対し、このマシンは4つのローターを搭載することで、より高出力化が図られていました。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・787Bのリヤビュー

レースでは、当時圧倒的な強さをみせたメルセデス・ベンツのマシンがトラブルで脱落したことで、2位を走っていたマツダ車が、スタートから21時間を経過した時点でようやくトップに浮上。そのまま1位でゴールして優勝を飾りました。

レギュレーションの変更により、ル・マンにロータリーエンジン搭載車が参戦できる最後の年、しかも初参戦の1970年から22年もの歳月を経て、ようやく栄光を手中にしたのです。

現在は、排ガス規制などにより、残念ながら搭載する市販車やレーシングマシンはありませんが、マツダがずっとこわだってきたロータリーエンジンの性能や耐久性などが、一躍花を咲かせた瞬間でした。

●マツダ・RX-7 254(1982年)

マツダは、ル・マンに当初、市販車のRX-7をベースにしたマシンを投入していました。そして、マツダ車で初めて完走を果たしたのが1982年に出場した「RX-7 254」です。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・RX-7 254

エンジンには、1985年に登場した市販車の2代目RX-7(FC型)にも採用された、13B型ロータリーエンジンを搭載していました。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・RX-7 254のリヤビュー

寺田陽次郎/従野孝司/アラン・モファット組のマシンは、ギヤボックスのトラブルや燃料系の不調をかかえながらも、24時間を走りきり14位でフィニッシュを果たします。

なお、この年はグループCカーが初めて登場し、ポルシェ956が圧倒的な速さで表彰台を独占したことでも話題となりました。

●マツダ・737C(1985年)

マツダが、グループCカーをル・マンに初投入したのが1983年、737Cはその進化形です。前年型の727Cからホイールベースの延長やボディワークの変更が行われ、操縦安定性の向上やダウンフォースの改善が図られています。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・737C

レースでは、2台エントリーしたうちの1台が、参加したC2クラスで一時は1番手を走行しますが、ギヤボックスのトラブルでクラス3位(総合19位)に終わります。また、もう1台はオイルリリーフバルブのトラブルを抱え、部品交換に手間取ったためにクラス6位(総合24位)に終わります。

成績的には今一歩だったマシンですが、この時の経験や会得したノウハウなどが、後の787Bの優勝に繫がるのです。

マツダに栄光をもたらしたこれらレーシングマシンたちは、間近で見ると本当にものすごい迫力とスポーティな格好良さを感じます。そして、その培った技術がフィードバックされたのが、今でも人気が高いRX-7などロータリーエンジン搭載のスポーツカーなのです。

ル・マン24時間レースを日本車で初制覇したマツダのロータリーマシン
マツダ・737Cのリヤビュー

ロータリーエンジンを搭載したマツダの市販スポーツカーは、前述の通り排ガス規制の問題などがあり、何度も復活というウワサが出ては消えています。

「クルマの電動化」が進む今では、そのウワサすら出てこない状況です。ですが、これらマシンたちを見ていると、個人的には、またぜひその勇姿を見てみたいと実感した次第です。

(文・写真:平塚 直樹

この記事の著者

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平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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