5代目で最後のレガシィツーリングワゴンは、自動運転を見据えたアイサイト2が業界を引っ張る!by清水和夫 BR9編【SYE_X】

■歴代レガシィ・ツーリングワゴンを清水和夫が一気乗り!

●5代目BR9に搭載、アイサイト2の思い切った進化が自動運転への基礎になる!

歴代レガシィツーリングワゴン試乗
歴代レガシィ・ツーリングワゴン試乗を清水和夫が一気乗り!

スバルの元ワークスドライバーで、現在は大学教授も務める国際モータージャーナリスト・清水和夫さんが、今改めて歴代レガシィ・ツーリングワゴンを乗ってみた! 今回は5代目にして最後のレガシィ・ツーリングワゴン、BR9編です。

全車2.5Lとなり、ボディもアメリカンなビッグサイズへ。CVTを初搭載したBR9を清水さんはどう感じたでしょうか?

●CVTを最初に搭載したのは、トヨタではなくスバル!

BR9レガシィツーリングワゴン
5代目で最後のレガシィ・ツーリングワゴン。

さぁ、5代目レガシィ・ツーリングワゴンです。“レガシィ”という名前が付いたモデルでは、このクルマが最後です。2009年登場なので、初代(1989年)からちょうど20年経って登場したのが5代目。今回はかなりアメリカを意識して作られたなという感じで、ワゴンボディはさらにルーミー(広々)になっています。

BR9レガシィツーリングワゴン
EJ25 水平対向4気筒SOHC 16バルブエンジンを試乗しています。

今乗っているクルマは2.5LのNAでCVTです。実は、スバルはCVTの元祖です。世界で初めてCVTを量産したのはスバルなんですヨ!

以前 “トヨタのCVTはパンツのゴムが伸びたみたいだ!”と悪口書いたらトヨタに怒られましたけど、今はヤリスCVTでラリーをやる羽目になっています。ま、今のトヨタのCVTはパンツのゴムが伸びた感じではないです(私が鍛えましたから!)。

スバルはドライバーズカーを目指していますから、パンツのゴムが伸びたようなトランスミッションじゃスバルユーザーは納得しない…ということはスバルもよく知っています。使っているのはドイツのLUK(ルーク)社というサプライヤーの金属ベルト式。これを使っていたのはスバルとアウディだけで、しかしアウディはLUKの金属ベルトをやめてしまったので、今は世界でオンリーワン、金属ベルトを使っているのはスバルだけです。

今ではスバルのトランスミッションは全車リニアトロニック、その最初のモデルがこの5代目レガシィの特徴です。

●アイサイト2が思い切った進化を遂げたからこそ、日本の衝突安全系技術がある!

なんといっても、5代目レガシィが一躍注目されたのは、アイサイト2(EyeSight[Ver.2])です。

試乗中の清水和夫さん
アイサイト2があったからこその、アイサイトXの進化があります。

元々スバルは『ADA』という名前でミリ波レーダーとカメラを使った予防安全技術をずっとやってきたんですけど、なんと価格が20万円超えていたのでほとんど売れませんでした。そこで、思い切って「高価なミリ波レーダーをやめてカメラだけで出来ないか?」ということで、カメラだけの技術を使うことになり、レーンキープディパーチャーのアラーム技術など、いろいろな予防安全技術が進化しました。

アイサイト2の目
アイサイト2の目!

このアイサイト2が有名になったのは、「止まります」と言い切ったこと。これは「クルマは完全に止めてはいけない。でないと、自動ブレーキになって(勘違いされ)ドライバーがブレーキを踏まなくなる恐れがあるから、最後はブレーキつまんで放せ! 5km/hくらいになったら完全に停止するな!」…というような考えのガイドラインが国交省との中にあり、トヨタやホンダなどはそれを守っていました。が、スバルは「も~メンドクサイ! 止めちまえ!!」って。

別にこれは違法ではなく、ボルボやメルセデス・ベンツもやっていたので、スバルも止まります!って言い切ってアイサイト2が一躍大ヒットしました。

レガシィツーリングワゴンのコクピット
BR9レガシィ・ツーリングワゴンのコクピット。広々です。

アイサイト2は確かオプションで10万円くらい。当時、「安全技術は水や空気と同じでお金は払ってもらえない、タダだと思われているんじゃないか?」とメーカーは考えていました。が、日本のお客様は良いものであればお金は払ってくれる…ということが分かったんですね。ですから、このアイサイト2によってどれだけ他のメーカーが助かったか、です。「いいものを作ればお金は払ってもらえる、じゃいい技術を開発しましょう!」って。

日本車の安全技術の底上げをしたひとつの大きな立役者、基礎を作ったのが、この5代目レガシィに搭載されたアイサイト2でした。

今のレヴォーグに搭載されている『アイサイトX』はさらに進化したバージョン。自動運転の方向に見据えたアイサイトの進化というのが、レヴォーグのアイサイトXに見られます。

歴代レガシィ
アイサイト2の思い切った開発が、今の日本の安全運転技術の基礎になっています。

走りと安全性において、スバルは一途にそこを追い求めるのですが、しかし、燃費だけはスバルにとって一番辛い。この水平対向エンジンの非常に厳しいところではありますね。

(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの

BR9レガシィツーリングワゴンの主なスペック
BR9レガシィ・ツーリングワゴンの主なスペック。

■SPECIFICATIONS
●スバル レガシィ・ツーリングワゴン2.5i Sパッケージ(BR9/2009年5月)
全長×全幅×全高mm:4775×1780×1535
ホイールベース mm:2750
トレッド F/R mm:1530/1535
車両重量 kg:1510
エンジン:EJ25 水平対向4気筒SOHC 16バルブ
排気量 cc:2457
圧縮比:10.0
最高出力ps(kW)/rpm:170(125)/5600
最大トルクkgm(Nm)/rpm:23.4(229)/4000
駆動方式:フルタイム4WD
トランスミッション:CVT
サスペンション(F/R):ストラット式独立懸架/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(F/R共):225/45R18
車両本体価格(当時):284万円

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【関連リンク】

StartYourEnginesX
https://www.youtube.com/user/StartYourEnginesX

この記事の著者

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、スーパー耐久やGT選手権など国内外の耐久レースに参加する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。
自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。clicccarでは自身のYouTubeチャンネル『StartYourEnginesX』でも公開している試乗インプレッションや書下ろしブログなどを執筆。
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