■新生アウトランダーのオーディオがボーズに代わったことがヒント?
事前予告通り、三菱自動車が新型アウトランダーを北米で発表しました。
アウトランダーとしては4世代目となる新型モデルは、新世代の「ダイナミックシールド」フェイスを与えられ、また20インチのタイヤ&ホイールを履くなど、非常にマッシブなスタイリングへと進化しています。
プラットフォームも新設計、そして新開発の2.5Lエンジンに8速マニュアルモード付CVTを組み合わせたパワートレインには、三菱独自の電子制御技術「S-AWC」の最新版が組み合わされているというのもトピックスのひとつ。
FWDと4WDが用意され、4WDの前後トルク配分ユニットには電気モーター制御の油圧クラッチを採用しているというのも、三菱自動車の4WDらしい部分といえます。三菱自動車が得意としているトルクベクタリング制御においても「ブレーキAYC」を前後に設定するなどレベルアップしています。
4WD制御では6つのドライビングモードを選べるというのもアウトランダーらしいところ。選べるモードは「エコ/ノーマル/ターマック/グラベル/スノー/マッド」となっています。また、FWDでもマッドを除く5つのモードが選べるようになっています。
インテリアではレザー巻きソフトパッドを採用することで高級感を演出。くわえて上級グレードにおいては12.3インチのフル液晶メーター、9インチのセンターディスプレイ、10.8インチのヘッドアップディスプレイと多彩なインフォメーションを伝えるインフォメーションシステムを採用しているのは、いかにも2020年代に生まれた新型車といったところで、従来のアウトランダーから大きく進化したと実感できることでしょう。
ところで、この三菱自動車でいうところの『フルデジタルドライバーディスプレイ』の構成に見覚えがあるという人もいるのではないでしょうか。
そうです、2020年10月より北米市場に投入されている日産の新型SUV「ローグ」のデジタルダッシュボードディスプレイと同じ構成となっています。
それもそのはず、新型アウトランダーと日産ローグとプラットフォームが共通といわれています。
三菱自動車、日産自動車の両社とも明言していないのですが、ルノー日産三菱自アライアンスにおいて、このクラスのSUVは日産が主導となって開発し、他社がそのアーキテクチャを利用するというのは発表済みです。
そうした共通化は開発リソースの効率化という点では有利です。ユーザーにとっては買いやすい価格という点で恩恵が受けられるといえますから、否定する必要はありません。
現在のモデルには必須といえるADAS(先進運転支援システム)についても、新型アウトランダーにはMI-PILOT(マイ・パイロット)と名付けられた高速道路の同一車線運転支援技術が搭載されています。
その内容は、車間距離と車線中央維持を車両がアシストするというもので、ナビゲーションの地図情報を利用した速度調整や速度標識を読み取って、設定速度を自動で切り替える機能もついていると発表されています。
これは、日産ローグが搭載している「プロパイロット・ナビリンク機能付き」そのものといえる機能です。
というわけで、ローグの兄弟車といえる新型アウトランダーですが、見ての通り日産車とは別物として設計されていることがわかります。
エンジンやシャシーといった基本アーキテクチャは共通でも、スタイリングからパワートレインの仕上げまで差別化されていることが、公表されている写真やスペックからうかがえます。
前述した4WDのドライビングモードについても、新型アウトランダーでは6モードが用意されていますが、ローグでは5つのモードしかありません。このあたりの違いからも、しっかりと走り味まで差別化されていることは明らか。
外観だけを変えた兄弟車というよりは、基本的なDNAは共通ながら、違う親に育てられたといったイメージかもしれません。
それでも、端々に共通点が見られるのは血は争えないといったところでしょうか。
たとえば、従来のアウトランダーにはロックフォードのハイクオリティオーディオが設定されていました。これは三菱自動車が好んで設定しているものでしたが、新型アウトランダーではBOSE(ボーズ)製のプレミアムサウンドシステムが採用されると発表されています。そして、ボーズのシステムは日産ローグにも設定があるのです。
通常のクルマではヘッドライトがある位置にシグネチャーを置き、メインのヘッドライトはバンパーに埋め込むというスタイリングの基本は、日産ローグと三菱アウトランダーの共通性を感じさせる部分といえますが、しっかりと異なるスタイリングに仕上げてきたことにひと安心という三菱ファンも少なくないのでは?
というわけで、三菱自動車の新型アウトランダーは2021年4月よりアメリカ、カナダ、プエルトリコで発売されることが公式にアナウンスされました。
日本での発売時期については未公表ですが、ゆったりとしたボディにしっかり使える3列シートがパッケージングされたクロスオーバーSUVというと、日本市場でもニーズの高いカテゴリーだけに、早いタイミングでの上陸に期待が高まります。
(山本 晋也)