レース用タイヤとは?特定条件下で高性能を発揮するように設計【バイク用語辞典:ホイール・タイヤ編】

■ロードレースにはスリック、オフロードにはブロックタイヤ

●レースの条件に合わせてトレッドパターンや材質を選定

レースでは、タイヤのグリップの強さが勝負を分けます。ロードレース用は摩擦熱によって強いグリップ力を発揮する溝のないスリックタイヤ、オフロードレースではブロックを路面に食い込ませるブロックパターンのタイヤが使用されます。

レース用タイヤと一般の公道用タイヤの違いについて、解説していきます。

●タイヤのグリップ性能を高めるには

バイクの駆動力や制動力を路面に伝えるのはタイヤのグリップ力ですが、グリップ力はタイヤ表面の材質や路面との接地面積、トレッドパターンによって変化し、コントロールすることができます。

ロードレース用タイヤは、グリップ力を高めるため、材質を最適化した溝のないスリックタイヤが使用されます。レース用で溝付タイヤが規定されているプロダクションクラスでも、溝が非常に浅く少ないタイヤが使われます。

一方、オフロードレース用タイヤは、ダートでのグリップ力が必要なため、深い溝のブロックパターンのタイヤが使われます。砂地や泥濘地にトレッド部の溝がくい込んだときに地面を柱状に固め、その柱をブロックで潰すときの抵抗によって駆動力や制動力を得ています。

●ロードレース用タイヤの特徴

ロードレース用タイヤは、通常サーキットでの特定条件(路面温度や舗装状態など)で高いグリップ力を発揮できるスリックタイヤを使用します。

・レース中(例えば4~5時間)もてばよいので耐摩耗性は軽視してグリップ力を最優先させます。

・路面とタイヤ表面の摩擦熱によってタイヤを溶かしてグリップさせるので、タイヤの温度が上がらないとグリップ力は発揮できません。

・溝がなく、タイヤと路面の間の水を排水できないので、雨天時には使用できません。

●オフロードレース用タイヤの特徴

オフロードレース用タイヤは、ブロックパターンのトレッド溝を使ってブロックを路面に食い込ませてグリップ力を発揮します。

・舗装路での使用を前提としていないので、舗装路ではタイヤの接地面積が極端に小さくなり、グリップ力を発揮できません。

・タイヤの空気圧を100kPa(1.0kg/cm2)程度まで落とすことで、タイヤのたわみ量を増やしてグリップ力を高めています。一方、空気圧を下げ過ぎるとタイヤとホイールの位置がずれてチューブが傷むため、空気圧を80kPa以下にする場合はビートストッパーが必要です。

●レース用タイヤと市販車用タイヤの違い

タイヤの種類
タイヤの種類

特定条件下で性能を発揮するレース用タイヤと異なり、公道用タイヤはあらゆる天候や気温、路面状況などの変化に対応できるように設計され、特に耐摩耗性を重視しています。

最近は公道走行も可能なレース用タイヤもありますが、路面温度が低い場合や雨天の走行では適正なグリップ力が発揮できないことがあります。また、車体とのセッティングが十分でないと、走行中に車体ブレや振動が発生することがあるので、注意が必要です。


一般的なロード用タイヤは接地面積と表面の材質が、オフロード用の場合はトレッドの溝の形状が、グリップ力に大きな影響を与えます。一方、レース用タイヤはロード、オフロードを問わず、レースという特殊な限られた条件下で酷使されるので特別の性能が求められます。

(Mr.ソラン)

この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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