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●目の前真っ白! 視界がゼロになったら、何よりも自分の存在アピールが大切です。
2021年1月19日に発生した東北自動車道下り線での多重事故は、当時現場で発生していたホワイトアウトが原因とされています。実際にホワイトアウトに遭遇し、その中に入ってしまったらどうすればいいのか、事故を起こさない、そして巻き込まれないための、ドライバーができることを考えていきます。
・降雪による吹雪だけではなく、地吹雪にも警戒
事故が発生した東北自動車道の該当区間は、宮城県に在住する筆者もよく利用します。現場は宮城県の北部に位置する大崎市古川です。今回の事故は、50台以上が衝突、接触し、合計130台以上のクルマの身動きが取れなくなりました。今回の事故が発生した区間はカーブもほとんどない、長い直線が続くエリアです。
該当区間を走行するとわかりますが、道路の周りには建物がほとんどなく、一面に田んぼが広がっています。横風に対して注意を促す標識が並び、風雪に対する防雪柵が各所に設置される区間です。筆者も該当区間で風の強い日には、横風にクルマがあおられる経験を何度もしています。
当時、事故現場付近では降雪があり、事故とほぼ同時刻には1月としては観測史上最も強い27.8mの強い風を観測しました。暴風雪警報が発令されていましたが、今回のホワイトアウトは、降雪による直接的な影響は少なく、周辺の水田に積もっていた雪が強風によって高速道路上に流れ込んで発生したと考えられています。
いわゆる「地吹雪」によって前方が見えなくなる状況になったということです。
ホワイトアウト=大雪の時というイメージが強いです。しかし、今回の現場のように、高速道路周囲に風を遮るものが無い場合は、雪が降っていなくても地吹雪によってホワイトアウト現象が発生する可能性があるということを頭に入れておく必要があるでしょう。
・ホワイトアウトに遭遇してしまったら2つの事をやるべき
風の吹き方によって、突然発生するホワイトアウトに遭遇した場合にやるべきことは2つです。
1つ目は、ゆっくりと速度を落とし停車すること。前方視界がほとんどゼロの状態で走行することは非常に危険です。視界が悪くなってきたなと感じたら、走行速度を徐々に落としていきましょう。
一般道を走行中であれば、ハザードランプを点灯し、路肩に寄って停車する、あるいはすぐ近くの施設の駐車場へ避難し、一時的なホワイトアウト状態を安全にやり過ごす必要があります。わずか50㎝~1m先の視界が奪われる状況では、走らないということが最も重要な選択となります。
では、簡単に停車ができない高速道路上ではどうすればいいのでしょうか。この場合でも、ゆっくりと路肩に寄せて停車することが大切になります。通常、高速道路上は次の場合を除き駐停車が禁止されています。
危険防止のため一時停止する場合
故障などのため十分に幅のある路肩や路側帯に停車する場合
料金の支払いのために停車する場合
ホワイトアウト時は、1つ目の危険防止のための一時停止と考えられるので、路肩に寄せての停車は、やむを得ないものと判断できるでしょう。
安全に停車する行動をとりながら2つ目のやるべきことを行います。それは「ここに自分がいますよ」というアピールです。ホワイトアウトの際に危険なのは、自分が追突することと、後続車に追突されることの2点です。
視界の利かない中ではありますが、できる限りの方法で自車位置を後続車に知らせる必要があります。
ハザードランプの点灯、もちろんヘッドランプおよびテールランプを点灯させることを忘れずに行います。さらに寒冷地仕様のクルマなどで、装備があれば「リアフォグランプ」の点灯も忘れずに行ってください。
リアフォグランプはブレーキランプと同程度、またはそれ以上の明るさを持ち(リアフォグランプの明るさ規定が保安基準の改定前後で異なっており、リヤフォグランプの明るさはその車両の製造時期によって異なる)、豪雨や霧などの際に、自車位置を後続車に知らせる役目を持ちます。つまり後続車からの被視認性を高める装備です。
こういったランプ類の点灯はもちろんですが、何も見えない真っ白な状況ではホーンを鳴らすことも、自車位置を知らせるための手段になります。視覚だけでなく、聴覚へも訴えかけることで、後続車に追突されるリスクを減らします。
ホワイトアウト時には、自分が安全に止まること、そして自分がここにいますよという猛アピールをすることは、多重事故発生リスクを減らすための、ドライバーがとるべき2つの行動です。
豪雪地帯ではもちろんですが、雪の少ない地域、または晴天の時でも地吹雪によってホワイトアウトは発生します。
冬の運転中には風の状況を常に把握しておき、吹雪や地吹雪が起きそうな強風の際にはそもそもクルマの運転を控える、高速道路の利用を控えるといういち早い判断が、事故を未然に防ぐ方法になるのではないでしょうか。
(文・写真:佐々木 亘)