やっぱりエモーショナルじゃないとね。レクサスLFAがエモい理由とヤリスがエモい理由は全然違うけど【私が選んだカー・オブ・ザ・10年】

■和製スーパーカーからまさかの40km/L超えの超低燃費車まで

●いろいろあったこの10年

編集長、今回もさすがです。

オーダーされたお題は「私が選んだカー・オブ・ザ・10年」。そして編集長からのコメントは「ベスト10にしてもいいです。ジャンル別のベストをセダン、スポーツ、SUV…などでもいいし、1台を選んで詳細に理由を説明するなどでも結構です。いずれにしてもご自身らしく選んでやりやすい展開をお願いします」とのこと。

なんとも大雑把すぎるオーダー(笑)。裏話をすると、編集長からの直々のオーダーはいつもだいたいこんな感じです。でも、オーダーが大雑把ということはライターとしての裁量が多いということで、好き勝手に書かせてもらいましょうかね。

そのまえに“10年”という縛りにどんな意味があるのかわからない読者もいると思うので一応説明しておくと、先日、この「クリッカー(clicccar.com)」というメディアが開設から10周年を迎えたから。そこで「10年を振り返ってね」という企画が立ち上がっているというわけです。

皆さんは、10年前って何をしていました? タイミングとしては東日本大震災が起こるちょっと前。2020年の日本も激動でしたが、10年もまた今とはちょっと違う日本でしたね。

そんなわけで、この記事の方向としては「ここ10年で乗って触れて『このクルマはすごいな』と思ったクルマ」をピックアップ。「ここ10年で発売」と「実際に運転したことがある」以外はジャンルも車両価格も問わずの自由形無制限バトルでいきたいと思います。このレギュレーションなら編集長も納得してくれるはず。

ランク付けなし10台のピックアップとしますよ。

●テスラ・モデルS

テスラ・モデルS

電気自動車を専門とする新興メーカーが販売している高級セダン。

なにがエモいかってその加速。初めての体験はたしか「P90D」だったと思うけど、停止状態からアクセル全開したときのことは今でも忘れられない。っていうか衝撃的すぎて忘れようがない。

あまりにもGが凄すぎて脳震盪起こす、もしくはそのまま時空の歪みへ突入してワープするかと思ったよ。

●レクサスLFA

レクサスLFA

レクサスが生み出したスーパーカー。カーボンを使った専用設計のボディに専用開発のV10エンジンを積む贅沢なモデル。市販モデルの生産開始が2010年12月だから、ギリギリ今回のテーマに合致する。

凄さはその音。ヤマハと共同開発したV10エンジンの音はまるで管楽器が奏でる音色のようで、スーパーカーのなかでももっとも美しいと今でも思っている。エンジンの吹け上りもまるでレーシングカーみたいな鋭さで素晴らしい。これぞエモーショナル。

●ルノー・メガーヌR.S.

ルノー・メガーヌR.S.(先代)

ルノーのCセグハッチバックである「メガーヌ」の高性能版。ニュルでの量産FF車トップ争いをするマシンだ。個人的に印象に残っているのは、現行世代のひとつまえの「メガーヌ3」と呼ばれるタイプ。日本発売は2010年12月だ。

凄かったのは旋回性能。単純に旋回能力が高いというよりは「曲がることが楽しい」というのが強く心に刻ま絵れた。峠道なんて、コーナーが終わると「道が真っすぐになってしまうのが残念」なんて思ったくらいのエモさだ。これが日産セレナと同じプラットフォームだというのだから信じられないよ。

●アルピーヌA110

アルピーヌA110

復活したスポーツカーブランド「アルピーヌ」の第1号モデルとしてリリースされたミッドシップのスポーツカー。日本発売は2018年6月。

真骨頂はピュアなハンドリング。まるでドライバーの意図をくみ取るかのように思い通りに曲がるのが素晴らしく、とにかく爽快。ミニサーキットで走らせてみたら、ミッドシップなのにテールスライドをコントロールできる懐の広さがあって驚いた。

この操縦性をエモいといわずして、何をエモいというべきか。「いつかは欲しい」と本気で思っているのはここだけの話。

●トヨタ・ヤリス

トヨタ・ヤリス

2020年のフルモデルチェンジで「ヴィッツ」から改名したトヨタのコンパクトカー。なにが凄いかってそのパワートレインの効率の良さ。

ハイブリッドモデルで自動車専用道路&高速道路を制限速度で約60km走ってみたら、平均燃費が40km/Lを超えてぶったまげた(小田原厚木道路では平均燃費がまさかの50km/L超えを実現!)。自分でも信じられないけど本当。この燃費はエモい。

●三菱ランサーエボリューションX

三菱ランサーエボリューションX

ランサーエボリューションXの「ファイナルエディション」が発売されたのは2015年4月で、クリッカー枠で試乗に出かけたのをよく覚えている。

ランエボの凄さ。それは挙動のコントロール技術。魔法のような4WDシステムは絶対的な速さがあるだけでなく旋回性能を安定性の両立のレベルが高くて、操作をミスって普通のクルマなら「これはアンダーステアになる」という状況でもスッと何事もなかったかのように曲がるのが凄い、いやエモい。

この4WD技術はしっかりと次世代へ生かしてほしいなあ…。

●日産スカイライン400R

日産スカイライン400R

スカイラインに405psの超ハイパワーエンジンを組み合わせて2019年にデビューしたスカイライン400Rは、久々に日産の熱い魂を見た気がする。

そのパワフルさもさすがだけけど、凄いのはフィーリング。とにかく躍動感にあふれていて、レスポンスの良さ、脈を打つような鼓動、そして高回転で炸裂するパンチ力がエモーショナルすぎる。こういうエンジンを堪能するのに残された時間は長くない……。

●ジープ・グランドチェロキー トラックホークジープ

ジープの最高級モデル「グランドチェロキー」はなかなかバカなモデル(褒めてます)。

高性能SUVの最高出力と言えばランボルギーニ・ウルスが650psでポルシェカイエンの最強モデルが680ps。しかし、グラチェロのトラックホークときたら驚異の710ps。文句なしに量産SUV最高出力だ。驚くというか、もはや笑うしかない。

エンジンは6.2LのV8スーパーチャージャーで0-100km/h加速が3.7秒。最高速度は290km/h。「オマエら、パワフルなエンジンを積んどけば喜ぶんだろ!」的なこの強引さ大好き(笑)。

そして、こんな絶叫マシンみたいなSUVを日本で正規販売しようなんて思って実行したFCAジャパンは偉すぎてエモい!

●レクサスRC-F

レクサスRC-F

レクサスと言えばライバルはBMWやメルセデス・ベンツ、そしてアウディ。だけどレクサスにあってそれらドイツ御三家にないのが、自然吸気大排気量エンジンを積んだスポーツセダンやクーペだ。

レクサスRC-Fの魅力は、いまや希少な自然吸気マルチシリンダー大排気量エンジン。その高回転の色気といったら昇天しそうなほど。RC-Fならではの味わいがあるのが凄い、というか素晴らしい。このエモさは今のうちに堪能しておかないと。

●ホンダS660

ホンダS660

ホンダの軽自動車スポーツカーで、凄さはなんといっても孤高の立ち位置。普通に乗れるうえでこんなに小さなナンバー付き本格スポーツカーはS660以外に見当たらないし、すべてが凝縮されているから走りがいいのがなによりの魅力だ。

こんなクルマは、今後は2度と出てこない可能性が高い。そんなわけで個人的に、あまりのエモさにいま本気で買おうか悩んでいる1台だったりもする。

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それにしても、10台を選んでみたらほとんどがスポーツモデルとか高性能車。やっぱりボクはこういうクルマが好きなんだろうなと改めて感じたのでした。そういうところは、10年前から変わってないなぁ……。10年後にこの企画をやったら、いったいどんなモデルが並ぶのだろう。それもちょっと楽しみですね。

あっ、エンジンが超絶気持ちよかったメルセデスAMG「CLA45S 4MATIC+」を入れ忘れたー!

(工藤 貴宏)

この記事の著者

工藤貴宏 近影

工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆している。現在の愛車はルノー・ルーテシアR.S.トロフィーとディーゼルエンジンのマツダCX-5。
AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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