圧倒的な販売台数を誇り軽自動車のカタチを変えた初代ホンダN-BOX【私が選んだカー・オブ・ザ・10イヤー】

■初代N-BOXは軽自動車の質感を大きく向上させ、新たな潮流を生み出したエポックメイキングなモデル

2008年9月のリーマンショックをきっかけに、世界に広がった金融危機。この不況から立ち直る過程で2010年を迎えました。そして2010年~2020年までの10年間には2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震をはじめ、台風、豪雨と自然災害の恐ろしさを何度も味わいました。

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初代N-BOXとN-BOXカスタム。

そのような出来事があった10年の間に登場したクルマの中で最も印象に残ったクルマを“カー・オブ・ザ・10イヤー”として選ぶのですが、EV時代の到来を告げた日産リーフと軽自動車のトレンドを変えたホンダN-BOXで非常に悩みました。

しかしモデル末期でもその高い実力で、圧倒的な販売台数を誇った初代N-BOXを“カー・オブ・ザ・10イヤー”として選びました。

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初代N-BOX標準車のフロントスタイル。

1993年に登場したスズキワゴンRの登場により、軽自動車はそれまでのアルトなどのセダン(形はハッチバックですがカタログではセダンとなります)と呼ばれるモデルからハイトワゴンへとトレンドが変わりました。

2011年12月に初代N-BOXが登場する以前の2011年度(2011年~2012年3月)の軽乗用車の新車販売台数を見てみると、1位がスズキワゴンR、2位ダイハツミラ、3位ダイハツムーヴ、4位ダイハツタント、5位スズキアルトと4位に現在軽自動車の主力となっている軽スーパーハイトワゴンのタントがランクインしているものの、ワゴンRやムーヴといったハイトワゴン系、アルトやミラといったセダン系が主力モデルとなっていました。

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初代N-BOX標準車のインパネ。
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初代N-BOX標準車のシート。

しかし、N-BOXの登場により軽乗用車の勢力図が一変。2014年度にダイハツタントに首位を奪われるものの、2012年~2013年度そして2015年~2019年度と初代だけでなく、2代目となる現行型も圧倒的な販売台数を誇っているのです。

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初代N-BOXカスタムのフロントスタイル。

さらにスゴイと言えるのは、このN-BOXが軽スーパーハイトワゴンをけん引し、2018年度からはN-BOXを筆頭に、スズキスペーシア、ダイハツタント、日産デイズルークス(デイズ含む)の軽スーパーハイトワゴンで上位を独占するまでにシェアが拡大しています。これはワゴンR以上の偉業だと思っています。

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初代N-BOXカスタムのインパネ。
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初代N-BOXカスタムのシート。

コンパクトカーのフィットに採用してたセンタータンクレイアウトを採用し、低くフラットな床面による広い室内空間さらに多彩なシートアレンジがN-BOXの魅力です。

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多彩なシートアレンジを可能とした独自のセンタータンクレイアウトを採用。
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両側リアスライドドアは誰でも乗り降りしやすい仕様となっている。

現在、新車販売台数の約4割が軽自動車となっています。現在の軽自動車は100万円以下で購入できるモデルは限られており、その一方で200万円オーバーという高額モデルも登場しています。

しかし、スズキや日産・三菱のようにエンジンとモーター機能付発電機を組み合わせたマイルドハイブリッドシステムの搭載、また運転支援システムは各社充実させており、一部のモデルでは高速道路での追従走行が可能なアダプティブクルーズコントロールも装備するなど、そのポテンシャルは価格に見合うものと言えます。

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初代N-BOXのリアシートの広い足元スペース。

こういった軽自動車の質感の向上そして軽スーパーハイトワゴンという新しいトレンドを生み出し、定着させた初代N-BOXにカー・オブ・ザ・10イヤーは相応しいクルマだと思います。

さらに初代N-BOXは新車販売が好調だったこともあり、中古車も大量に出回っていますのでオススメしたいモデルです。

(文:萩原 文博/写真:Honda)

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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