豊田社長が明かした「次期クラウン」のモデルチェンジに関する興味深い内容とは?

■次期クラウンは「セダン」にこだわらず新たな路線に

2025年までに国内向けの車種数を兄弟車の統合などで30車種程度にまで半減させる方針を打ち出しているトヨタ自動車。同社は車種を半減させるにあたり、販売で苦戦している「セダン系」を対象に統廃合する方針で、すでに「マークX」を2019年12月に、レクサス「GS」を2020年8月に生産を終了させています。

「トヨタイムズ」で次期クラウンについて語る豊田章男社長

そうしたなか、豊田章男社長が同社の展開する「トヨタイムズ」において、次期クラウンに関する興味深いコメントを発信しています。

具体的には「ユーザーが求めるものは日々刻々と変わっていくもの。それに応えることはいつも我々の優先事項」「今やどこにも聖域なんて無い。私は新型クラウンのデザイナーにこれまでの概念に囚われず新しい視点で考えるようお願いした」としています。

一方、トヨタ自動車のお膝元である中部地方の新聞報道では、同社がクラウンの生産を現行型で終了し、SUVに似た車形の新型車として2022年に投入する方向で最終調整に入ったとしており、「新車市場でのセダン需要の低迷、SUV人気の高まりに対応しつつ、クラウンのブランドイメージも維持する戦略」と説明しています。

メルセデスベンツのスポーティなSUV「GLE」

苦戦するセダンにこだわらず世界市場を見据えて、欧州の高級車ブランドなどが手がける人気のある車形で展開した方が需要増につながると判断した模様で、これにより、1955年から続くトヨタを代表する国内市場向け高級セダンの歴史に終止符が打たれることになる訳ですが、このシナリオは上記の豊田社長のコメントとも符合しています。

消費者の嗜好がこれまでと大きく変化しており、ライフスタイルに合わせて車種を選ぶ傾向が強まっているため、同社では限られた投資資源の中で、市場ニーズに合致した車種に開発を集中させる方針。

2018年に発売された現行「トヨタ クラウン」

ちなみに現行クラウンの販売台数を見ると、先代モデルが末期でも2,500~3,000台/月ペースの販売を維持していたのに対し、大胆に意匠の若返りを図ったにも関わらず、発売から僅か2年で1,500台/月レベルにまで落ち込んでおり、その理由として従来のユーザー層が輸入車に流れたか、もしくは同車のターゲット層が昨今のトレンドであるSUVに移行したかのいずれかが考えられます。

「ユーザーが求めるものは日々刻々と変わっていくもの」とする豊田社長のコメントはこうした状況を鑑みて発言していると推測され、トヨタが次期クラウンの開発にあたり、従来のようにセダンにこだわらず、SUV路線に舵を切ったとしても何ら不思議ではありません。

アウディ「eトロン スポーツバック」のエクステリア

そうした背景から、同社は現行型セダンのモデルチェンジは行なわず、世界の上級SUVの新たなトレンドである「クーペスタイルのSUV」開発を目指していると予想されます。

2022年のデビューが予想される次期クラウンですが、オンライン方式での開催も検討されている東京モーターショー2021で一足先にお披露目される可能性もあり、その車名がどうなるのかも含め、同社の動きが大いに注目されます。

Avanti Yasunori

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【関連リンク】

トヨタイムズ
https://toyotatimes.jp/chief_editor/059.html

トヨタ クラウン
https://toyota.jp/crown/

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Avanti Yasunori

大手自動車会社で人生長きに渡って自動車開発に携わった後、2011年5月から「clicccar」で新車に関する話題や速報を中心に執筆をスタート、現在に至る。幼少の頃から根っからの車好きで、免許取得後10台以上の車を乗り継ぐが、中でもソレックスキャブ搭載のヤマハ製2T‐Gエンジンを積むTA22型「セリカ 1600GTV」は、色々と手を入れていたこともあり、思い出深い一台となっている。
趣味は楽器演奏で、エレキギターやアンプ、エフェクター等の収集癖を持つ。
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