■ハイブリッド走行時はつねに4WDとなるこだわり
ジープ・レネゲードはジープのラインアップのなかでも、もっともコンパクトなモデルとなります。
ジープは言わずと知れたアメリカ生まれのヘビーデューティモデルですが、現在はジープブランドを有するクライスラーがFCAの一部となっていることもあり、このレネゲードはフィアット500とプラットフォームを共有、製造工場もアメリカではなくイタリアとブラジルとなっています。そのレネゲードにPHEVモデルである「4xe」が追加されました。
4xeはPHEVモデル。つまり、充電が可能なハイブリッドモデルです。パワートレインは1.3リットルの直列4気筒エンジンを基軸に、フロントに53Nm、リヤに250Nmのモーターを配置しています。正確に表現するなら、フロントはモータージェネレーターで回生ブレーキも担当します。エンジンの出力はグレードによって異なり、ベーシックモデルのリミテッドが131馬力、上級モデルのトレイルホークが179馬力となります。
EVモードでスタートして、まずはEVとしての性能を試します。EVモード時はフロントアクスルはフリー状態となりリヤ駆動です。発進の力強さはEVらしいもので、ビックリするほどの速さを感じます。
どんなPHEV、HEVでも速度を上げていくとエンジンが始動してハイブリッドモードになるものですが、このジープ・レネゲードPHEVはいっこうにエンジンが始動しないのです。
「いったいいつになったらエンジンが掛かるんだ?」とつぶやいたら、同乗していた同業者に「130km/hまでEVで走るよ」と言われてしまいました。そう、ジープ・レネゲードPHEVはなんと130km/hまでEV走行できてしまうPHEVなのです。これには相当にびっくりさせられました。
エンジンの出力はグレードにより異なりますが、モーターの出力は同一なのでEVモードでの加速感は基本的に変わりません。
発進加速の力強さはもちろんですが、60km/hあたりからの追い越し加速もトルクフルで気持ちのいいものでした。首都高インターチェンジの登り坂で加速していっても、1.8トンのボディを感じさせない加速を味わうことができます。ハイブリッドモードに切り替えるとさらに加速感は強くなり、グイグイ押し出されるような感覚となります。
さらにエンジンのパワーがあるトレイルホークだと、これが1.3リットルのジープの加速なのか?と感じるほどのものです。ハイブリッド走行時は、常時リヤのモーターが駆動し4WD状態を保つとのこと。それはバッテリーが減っていても変わらず、バッテリーをゼロにすることなく充電しつつリヤモーターを駆動させるというこだわりを持たせています。
リミテッドとトレイルホークではエンジン出力のほかに足まわりのセッティングなども異なります。第一に車高が異なります。リミテッドの車高は1695mmで、トレイルホークは1725mmとなります。タイヤサイズはどちらも235/55R17で同じなのですが、リミテッドはオールシーズンタイヤのグッドイヤー・ベクター4シーズンズ、トレイルホークはサマータイヤのブリヂストン・トランザT005を履きます。
トレイルホークはパワーもあるので車高を落としてタイヤはハイグリップを……と考えるのが普通なのですが、ここで車高を上げてクロスカントリーモデルを強調するのがジープらしいといえるでしょう。
車高を上げてグリップのいいタイヤを履き、走行用バッテリーを積んで重心が低くなると起き上がりこぼしのように、ロールスピードが速くなりがちなのですが、トレイルホークはそうした動きもしっかり抑えられていて、快適にコーナリングをこなすことができます。
速いモデルが欲しければトレイルホークを選ぶのが正解です。また、クロスカントリー性能を重視する場合もトレイルホークを選ぶのがいいでしょう。トレイルホークの最低地上高は210mmが確保されています。
走行用バッテリーはリチウムイオンで容量は11.4kW。急速充電には対応しておらず、普通充電のみの対応となります。
バッテリーが充電されていない状態で、3kW充電では約3.5時間、6kW充電で約2時間で充電が完了します。EV走行可能距離のカタログデータは48kmとなっています。
試乗前はジープというヘビーデューティなモデルとEVとは接点がないような気がしたものの、実際に乗ってみると電気モーターの持つトルク感とクロスカントリーテイストは意外なほどに親和性が高いことを感じました。
急勾配の上り坂で一度クルマを止めて、そこからグッとトルクをかけて再度登るような、そんな走りを試してみたいと感じたクルマでした。
(文・写真:諸星 陽一)